#514 2008.12.1

富山市 市内環状線の認可と埋蔵文化物調査開始


国交省は、富山市が来年12月の運行を目指し地鉄市内線環状化申請をしていた丸の内〜西町間(940m)の軌道新設工事を認可した。市はこれを受け、今年度内に丸の内から大手モールを経て越前町までの約500mの区間で、軌道路盤やレール工事に着手する。

市は既に今年4月から、丸の内〜越前町間の水道管など地下埋設物の移設工事を進めている。今回の認可を受け、更に消雪装置、架線柱、保安施設などの工事に取りかかる。

富山市埋蔵文化財センターは軌道が新設される大手モールの通りにて、埋蔵物の本格的な発掘調査を開始する。この場所は富山城三の丸に位置し、家老屋敷や内堀があったところ。陶磁器や石垣の一部などの出土品が期待される。


埋蔵文化財の発掘調査が実施される大手モール (Photo:富山新聞)

  関連ニュース:路面電車環状化計画を国交省認定提出 (08/3/19)  



#513 2008.11.27

北京市 前門大街 路面電車再運行開始


天安門広場から南に延びる大路前門大街に路面電車が復活したことは本年6月に報じました。その後8月北京オリンピックの最後の日のマラソンでは、この大街が走路となり、路面電車の運行は一時中止し線路に目張りをしていることをTV発見しました。各国の選手がこの走路を懸命に競い走るのを皆さんとともに食い入るように観ました。日本選手の成績はちょっと残念でしたが・・・。(^^;)

その後の線路の様子を気にしていましたが、当然ながらまた路面電車の走行道路として再運行を開始している様子が先日報道されました。

北京市天安門付近から前門大街付近地図
8月のオリンピックマラソンコースのため線路は一時封印された
その後路面電車は復活し前門大街の観光に一役

  関連ニュース: 北京市 前門大街にて路面電車を復元 (08/6/19)  



#512
2008.11.21

宇都宮市 知事・市長ダブル選挙結果は市長再選


宇都宮市にLRT建設を標榜して当選した宇都宮市長佐藤栄一氏と、建設を良しとする県知事福田富一氏両名の再選を求むるダブル選挙が11/16行われた。注目すべきは市長選。対立候補は3人ともLRT建設に反対すると名乗り出た人達である。結果は現市長が対立候補のいずれにも大差で勝利した。しかし対立候補3人の得票総数と当選した佐藤氏超の票数を比べると僅差の勝利ということになる。

投票率が33%と悪く、LRTが争点の選挙では市民の関心度も低かったのかも知れない。

佐藤市長は当選日夜 「100年先を見据えたまちづくりの礎をこの10年で築いていきたい」と抱負を述べた

20日の初登庁の記者会見で佐藤市長は、2期目の優先事項として 1)行財政改革 2)教育改革 3)環境問題 4)農業改革 5)公共交通 を挙げた。 公共交通の整備については「弱者・・・特に高齢者の足として、地域内交通の整備を『3年を目標』にして市内全地区に進めたい」と表明

また、選挙戦で争点となったLRT建設については「LRTの計画案を示す時期は『来年度中が理想的だが、市民の意見を充分に汲み取り、時間をかける』と説明した。

館主感想(気になる選挙を終えて)
日本でLRT建設に熱心な≒実現可能性のある有力都市として宇都宮市が挙げられています。それは強力な推進者として佐藤市長の存在があるからでしょう。しかし近年に至って、バス会社や市民の一部が建設反対運動を始めたのでどうなることかと気を揉んでいましたが、今回の選挙ではどうやら推進派の現2首長が当選しました。結局今回の選挙の結果、市長としては建設には民意を計りながら慎重に進めるというという発言になり、実現速度は若干スロウダウンするかも知れません。が、100年先を見越してがんばって欲しいです。



#511 2008.11.14

東京都 研究会 「架線レスLRVの走行試験
            および急速充電試験の結果」


ライトレール社の企画行事交通ビジネス塾の11月講演会の案内です。
講演者小笠正道氏は鉄道技術総研にて制御技術の専門家です。数日前には川崎重工で開発された電池式LRVをご紹介しましたように、最近のLRV開発の流れとして蓄電技術を利用した開発各種が実行されています。

その流れになりますが、今回の講師は架線を援用しながらの蓄電走行技術の考え方と、それを具現化したLRV試験電車「Hi-tram (ハイ!トラム)」および試験の結果等についてのご紹介です。この技術は鉄軌道システムに大きな変化をもたらすいろいろな可能性と多様な適用先があると考えられます。

  

 「架線レスLRVの走行試験および急速充電試験の結果」


●日 時:2008年11月21日(金) 18:40〜20:30 (後で希望者とは懇親会あり)

●場 所:豊島区立勤労福祉会館 4階 第3会議室    池袋駅西口徒歩7分

●講 師:小笠正道(おがさ・まさみち)氏
       (財)鉄道総合技術研究所 車両制御技術研究部 駆動制御研究室長
       1966(昭和41)年、徳島県生まれ。
       1990年 東京大学工学部電気工学科卒、(財)鉄道総合技術研究所入所
       1991年 電気車研究室 研究員
       1994〜96年 ドイツWuppertal大学 留学
       2005年車両制御技術研究部 駆動制御研究室長、現在に至る
         
●プログラム:
  • 講師による講義 
  • 参加者の自己紹介
  • 講義のまとめ+フリーディスカッション
  • 懇親会 (同会場にて希望者のみ)
●参加対象者:職業として交通に関わっているまたはそれを希望している方
           
●参加費: 社会人3,000円、学生1,000円

●申込先:info@LRT.co.jp に @氏名 A所属・役職 B質問など  (先着20名)

●主催者ホームページ: (株)ライトレール
          (代表者:阿部 等 『満員電車がなくなる日』角川SSC新書 著者)

   (11/16追記)  関連ホームページ:Hi−Tram 画像・三面図・諸元 



#510 2008.11.10
11/12(写真追加)

川崎重工 LRV・SWIMO工場見学記


(11/12追加) 播磨工場における試験線見学 軌道は標準軌と狭軌へ対応
                  (Photo:宝塚市 東元正臣さん)
これまでSWIMOの開発と試運転等の情報を3回掲載してきましたが、このほど念願かない兵庫県明石市西に隣接する播磨工場を見学する機会を得ました。見学会はトロリーバス研究会による設定で、館主も同行させて頂いた訳です。できるだけSWIMOの情報に絞り、館主が関心をもったことを要約掲載します。
  • 本年1月札幌市電を利用して耐寒走行試験の成果は概ね期待通りで、改良に役立っている
  • 解説と論議の多くは08/5「人とクルマのテクノロジー展」公開データを基に制作された移動体二次電池比較表やその他資料にて行われた。比較表内容は三菱、日立、東芝、ユアサ製のリチウムイオン電池とパナソニック、川崎製のニッケル水素電池との特徴比較が主。
  • 川崎製のニッケル水素電池ギガセルは電池容量当たりの出力が大ききく、大容量の電池がコンパクトに製造できるのが特徴。これならLRVへの車載式という大容量の要求にも充分耐えられ、未来があると考えている
  • 館主も気になっていることだが、ニッケルとかリチュウムの電池材料は生産国が偏在しており、一方クルマという無尽蔵の需要に対し、将来の生産能力、価格の予測、国家戦略として出荷制限の可能性について質問が出た。が、明確な見通しは難しいようであった。確かにレアメタル問題は予測しがたい分、今後の世界の開発競争に不安をもたらす要因ではなかろうか。
  • 播磨工場には標準軌、狭軌兼用のループ状の鉄道試験線が設置されている。そういうことで車体は川崎重工の兵庫工場にて、電池は同じく兵庫工場と明石工場にてそれぞれ作り、こちらに搬入組立を行って試験をしているそうである
  • SWIMOの実車の搭乗があった。LRVは狭軌用1067mm3車体3台車で、現物を見ると工夫された興味深い設計で、改めて賛嘆しました。うまく説明できないので、今後展示チャンスがあれば実物をご覧になることをお勧めします。参考としては下記の三面図・台車写真等を参考にしてください。 狭軌の故で客室内は狭いが、加速はけっこう速いという印象です。それとギガセルが座席下にムダ無くすっぽりうまく収容されています。
  • 前から気にしていたSWIMOの語源も「Smoothな乗降、Smoothな非電化区間への直通運転を達成する(WIn)移動手段(MOver)」というコンセプトからと教えられました。複雑なんですね。(^^;)
  • 今回得たSWIMOのギガセル現物と構造図解とを既掲の三面図に加え掲載しました。下記の関連ページをアクセスして見てください。

  関連画像・三面図・諸元: 川崎重工業 SWIMO-X (08.11.10)   



#509 2008.11.5

豊橋鉄道 LRV新車 完成・搬入と公開 


豊橋鉄道では2005年に豊橋市と豊橋市電を愛する会との協力を得てLRTプロジェクト推進協議会を設置し、5年計画にてLRT運行システムの設置、電停のバリヤフリー化などの総合計画を推進してきた。

先年の電停改良に引き続き、所定のLRV導入準備も順調に進み、このほど狭軌LRVとしてはわが国初の新車がアルナ工機で完成し、10/27豊橋鉄道赤岩口車庫に搬入され、10/30公開された。

車体は3車体連接2台車方式で、白色の車体にはブルーとグリーンを混ぜたラインで巻かれている。 座席数は29、定員74名。

製造費は2億4500万円で、とよはし市電を愛する会など市民から3400万円の寄付が寄せられた。

営業運転は12月19日よりの予定。

大阪府摂津市アルナ車両で完成した豊橋鉄道向け狭軌LRV
車番:T1000型 (愛称:ほっとラム)
                       (Photo:中日新聞)

トレーラに載せられて夜間豊橋鉄道赤岩口
車庫に運ばれる新車 (Photo:読売新聞)
豊橋鉄道水野社長は30日、安全祈願祭を行い公開した
     (Photo:東日新聞)

  関連ニュース: 超低床LRV導入とネット総合整備へ (05/10)
     〃      競輪場前電停のホームを大改造   (07/4)



#508 2008.10.28

浜松市 天浜線にてDMVを走行試験


JR北海道がレールと道路の両モードで走れるDMVを開発したのは、04年4月。北海道釧網線にて試運転を行ったのは07年6月〜11月にかけて。これが他の鉄道会社の関心を呼び、06年11月には静岡県富士市の岳南鉄道が走行試験を行った。このたび同じ静岡県の天竜浜名湖鉄道(通称・天浜線・旧国鉄二俣線)にて走行試験が行われた。

今回は、天浜線の再生事業に取り組む「天竜浜名湖線市町会議」の発案にて10/21夜から22日未明にかけ同線三ヶ日駅から西気
賀駅を走行して離脱し、引き続き国道を走行するという試験を実施した。

試験は天浜線終電後の11時半から始まった。DMV第1回の試験にはJR北海道の社員のほか、浜松市長や天浜線の社長も乗り込み、三ヶ日駅からレイル走行し、約8km先の西気賀駅手前の踏切から線路を離脱。帰りは並行する国道362号線道路上を折り返し三ヶ日駅まで戻った。その後試験は繰り返し行われた。

線路走行は事前研修を受けた天浜線の運転手が鉄道の運転を担当し、1回目は25km/h、回毎に速度を上げてゆき時速50km/hまで試験を繰り返し安全性を確認した。

市長は「思った以上に乗り心地が良い」 社長は「利便性の向上と観光振興にもつながる」との感想を発表。

但し、改良課題もあるようで「定員が限りがある」「乗降ホーム高さのずれ」「運転手が現行法規では鉄道・バスの2名必要」などがあげられていた。

天浜線の試験は更に来年1月下旬に市民モニターを乗車させ実証試験を行う予定。

天浜線DMV実験関連図
天浜線のレールより離脱し道路に移るDMVの様子 (Photo:静岡新聞)

  関連ニュース: JR北海道のDMV開発情報 (04/4)
     〃      富士市 DMV実験       (06/11)
           JR北海道 釧網線DMV実験 (07/10)  



#507  08.10.21

全国路面電車サミット福井大会 速報版


10月17・18.19日の3日間に渡り行われた第9回全国路面電車サミット福井大会の様子の速報です。本日はスナップによる大会の雰囲気と館主が体験し静聴して心に留まったポイントのみをご報告します。後日正確な情報を得次第に詳しい報告を掲載します。
           会議内容のページ福井大会の行事内容公表

数多くの演目がありお勉強になりましたが、中でも東村福井市長森富山市長お二人のLRT対談は生々しくて、たいへん興味深いものでした。 出席者は日によって差はありますが、2日目は300名くらいとのことです。 9回に及ぶサミットが開催されたなかでは最大級ではないでしょうか。

福井鉄道といえば福井大学荻原先生によるリチウムイオン電池とインバーター技術を組み合わせたハイブリッドメカによるLRTの走行実験公開でした。西武生駅構内で大勢の参加者に混じって実物を見れたし、100mほどですが荻原先生自身の説明を受けながら乗車走行の体験ができ、念願を達しました。

演目には「LRV導入に向けて」の標題で豊橋鉄道田中鉄道部長による待望のLRV選定の経緯が紹介された。ネーミングはほっとラムだそうです。 福井市は楽器製造の町だそうです。中でもハープの製造は当市しかなく、休憩時に本大会に寄せて作詞作曲されたふるさと電車に乗ってが演奏紹介されました。

JR福井駅前から路線は市役所前へ、更に南下し武生新駅に至る福武線(ふくぶせん)が主要路線である。繁華街は福井駅周辺から市役所前への通りあたりで、使用電車も2005年2006年に名鉄より受け入れた部分低床車20両が主体となって運行されている。明るい塗装の軽快な車体である。

福井駅を中心に会場は3箇所に移動しながら行われた
JR福井駅東側は目下新幹線受入を前提とした再開発最中である

サミットに参加してみての発見や発言をメモの中から: 
(2日間に渡り参加してみて、館主の心を捉えたものを紹介します)
  • この路面電車専用のリチウムイオン電池は出力15KWh、重量150kgである。運用時は30kwh程度になり、システム全体で500kg以下を予想している。電池のコストは2両でも500万円が目標だそうで案外安い。
  • バッテリーの大きさはこれで最小でしょう。
  • 最高速度は50kmは大丈夫。テストでは70kmまで出している。
  • 館主の疑問:今やクルマもリチウム電池式が世界的に開発されている情勢だ。この勢いでリチウムの需要が伸びたとき、資源の確保と入手コストの見通しはどうなのだろう? どなたかご意見を願います。
    荻原隆先生からのご意見:リチウムの資源は特に問題ないと思います。リチウムイオン電池はリサイクル率が80%以上ですし、海水からも採取できますので。しかし、今よりは高価にはなると思いますが。問題はマンガン、コバルト、ニッケルの遷移金属の資源の方が問題でしょう。こちらは元々資源が少ないですし、採取地域も限定されていますから。今世紀ぐらいは供給に問題ないでしょう。(以下略)
  • 福部線は一時廃線の声も上がったが、工夫して平成16年に乗車数が下げ止まった。
  • JR北陸線に比べ運行本数が2倍は優れているが、実は所要時間が2倍で運賃が1.3倍の点は負けている。
  • 将来の福部線には電車優先信号と車の軌道乗入れ防止を期待している
  • 館主は福部線終点田原町に行ってみた。福部線とえちぜん鉄道の線路が並行して敷かれているのを見て「何故接続をしないのだろう?」と深く疑問をもった。
  • フランスはいつも世界最先端技術を勇敢に実行している。
    2000年には ゴムタイヤトラム (ナンシー)
    2003年には 地上集電システム (ボルドー)
    2007年には バッテリー駆動 (ニース)
  • 日本の路面電車の乗客数は全体的には下げ止まりになっている
  • 日本では車両のLRV化、低床化が進んでいる
  • 日本の今までの低床車は全部標準軌である。豊橋ではこのたび初の狭軌LRVを導入することになった。アルナ製。今年中に入庫を予定。床の通路巾は82cmを確保。
  • 新車は市長がほっとラムと命名したばかり。穂の風。ほっとできる。
  • 今までは公共交通は会社が作るのが当たり前だったが、今は自治体が作る時代だ。補助金政策が大事だし効果的な補助制度も生まれてきた。
  • 福井市では駅から4方向に都心部だけのコミュニティーバスを作った。「だめだったら止める」と最初に決めておいた。乗客は5年間で徐々に増えてきた。利用者の49%は他のクルマと自転車からの移転である。
  • 企画は「欲しいと思う人が集まって作る」こと。 路線網作りは市・公がやる。
  • 福井市は「都市政策部」を「都市戦略部」とネーミングを変更した。意欲の現れです。
  • 公共交通企画はビジネスモデルとして考えるが、利用されるものでなければ存在意義は無い
  • 福井市は新LRTプランを5年くらいで実現したい
  • 富山ライトレールはLRT化して運行頻度を3.5倍にした。これは効果があった
  • 〃 関連デザインを統一思想にして実行したら、7つも受賞をした
  • 〃 結果は市民の8割がLRT化を評価している
  • 富山市では高齢者の免許証返納運動をしたら50人/年から800人/年に増えた。やったことは、返納者にはJRにも電車、バスにも乗れる2万円1年間有効のキップを与えたこと。
  • 今富山駅はJR富山駅の高架化をしている最中で、これに合わせて都心路面電車の環状化を進める
  • 富山市では市民に市長自身が3年間に100回以上タウンミーティングをしてきた。その故か、LRT工事中に大雪があったがクレーム電話は1本もかかってこなかった。
  • 都心に環状線案を提案したときは「やるやらない提案」ではなく、「新規線路A案」と「新規路線B案」という2案提示という方式にしたら、論議はABを巡って論議になって路線建設是非の議論は起きなかった。提案方式も工夫すべし。
  • Q:「富山駅の立体交差案があっという間にできたのは?」
    A:「先に長期を見つめて成案を作り、説得に努力し、後は自信があったら必ず反対があってもどんと実行していくことです」
館主が感服したのは富山市長森雅志氏です。話が明解で説得力があり、これなら市民もなるほどだったのでしょう。LRT導入成功後には各市からの富山市参りがはやったのも頷けます。日本各都市のLRT化計画の隠れた功労者になるのではないでしょうか。

次回の路面電車サミット引受都市: 富山市  開催時期は未定