#214  03.8.19

広島市 路面電車と二つの被爆回顧展


 広島市は8月に入ると同時にどうしてもあの原子爆弾の惨禍を受けた市民への哀悼と不戦への誓いで覆われます。あの日、路面電車も車両の殆どが被害を受けました。生き残った広島電鉄スタッフは被爆当夜から、焼け残った電車内を本部にして、包帯姿で線路、変電所などの復旧作業を始めたと記録されています。数日間で己斐(西広島)〜天満町、12日間で西天満〜土橋まで開通。それでも全線が稼働するには年内いっぱいを要しました。ともかく路面電車の早期運行が広島市復旧の基礎つくりに貢献したことは市民に語り継がれている事実です。

 今年の8月は市内2箇所の展示館にて、「路面電車が語るヒロシマ」としてタイアップ展示を行っています。片や爆心地にある広島平和祈念資料館では、昨年来市民によるあの日の記憶を画に描いて残す運動をしましたが、そのコレクションから路面電車関係の画だけを選び出しての展示です。 一方の県立文書館は広電本社近くにあります。こちらでは広島市の路面電車創設以来の歴史的写真、キップ等の記念物を展観しています。被爆直後と復旧過程も特集しています。そういうことで両館は互いに補完するユニークな企画展と言えましょう。

電停や車内に掲示された企画展のポスター

平和記念資料館では市民が描いたあの日の記憶展 県立文書館は写真と資料で見る創業・被爆・復興展
戦前の廣島驛前風景 
前方建物が昔の國鉄廣島驛だった
 被爆後全力での線路の復旧作業が始まった。 
  相生通り。前方の建物はデパートだった
戦前の乗車券 路線は今とさして変わらない。私も記憶しているが昭和10年頃か。  
                 (旧い写真・資料はいずれも広島電鉄より借用)

館主私記:
思い起こせばあの1945年8月6日の日、私は中学2年生でした。当日は広島駅近くの畑(中心地から2km)の場所にて、西進してきた米軍機が原爆を投弾し、カーブを描きながら頭上を落下する様子を手をかざして見ていました。 爆弾はじき見えなくなったため北に急旋回し始めた機影へ目を転じたお陰で目が潰れずに済んだのです。 顔左と背中は火傷をうけましたけど。すっかり本復しましたがれっきとした被爆者です。 戦争には理由の如何を問わず悪と見なす性格が出来あがりました。


#213 03.7.15

岡山電軌MOMO 鹿児島市ユートラムに03年度ローレル賞


例年鉄道友の会が選ぶ本年度のローレル賞に岡山電軌軌道の9200型低床路面電車「MOMO」と鹿児島市交通局の1000型低床路面電車「ユートラム」の2車種が選ばれた。

ローレル賞は前年に運行を始めた車両から全国の愛好家でつくる鉄道友の会の選考委員10人が選ぶものである。
尚、同会のもう一つの賞ブルーリボン賞は会員の投票で選ばれるが、本年度は近畿日本鉄道の「アーバンライナーnext」に決まった。

路面電車・LRTのローレル賞受賞は2000年度に広島電鉄5000形 Green Moverがあるが今回は路面電車が一挙に2車種受賞してしまった。友の会の説明によると「国内の路面電車の復権への一助となると共に車両としての完成度も高いと判断した」とある。まさにLRTが21世紀の都市交通として関心を呼ばれる証左であろう。  

岡山電軌軌道 9200形 「MOMO」    写真:藤井正史氏
MOMOは欧ボンバルディア社の部品をベースに新潟鉄工が製作した低床車。2002年7月に運行開始。岡山市出身のデザイナー水戸岡鋭治さんによる斬新なデザインや、製造費の一部を募金でまかなうという市民参加型の手法が高く評価された。またJR線にも乗り入れることができ、路面電車の将来的な可能性を示したことも受賞につながった。

          MOMOの画像・三面図・諸元はこのページへjump
鹿児島市交通局 1000形 「ユートラム」          同局ホームページより
アルナ工機製作の最初の国産低床車。運行開始は2002年1月15日

    ユートラムの画像・三面図・諸元はこのページへjump
    本ローレル賞の詳しい受賞解説は「鉄道友の会ホームページ」参照


#212  03.7.2

広島電鉄 芝生・インファンド軌道・センターポール実験中


ヨーロッパでは路面電車軌道敷きに最新式のインファンド工法を採用して電車の静穏化を計っているようである。もちろん一般的にも芝生を軌道敷きに敷き込むことが各地で見られ清々しい。 日本でも昨年来 熊本市電や土佐電鉄にて実験が開始されたが、広島電鉄も噂より遅れたものの、この春より本格的な評価実験を始めた。芝生も根付いたようだし、その辺をご報告。もっともセンターポールは実験というわけではなく新形式を採用したものであり、市内では相生橋橋上にて別形式のものが数十年前より使用されている。

   広島電鉄広島港の手前 INFUNDO等の実験場所
左:市内より直角に広島港に入り込むところからINFUND0・芝生貼り・センターポールの実験場所になる。
 今は更に芝も茂ってきたが・・・。
   これがインファンドの構造説明図 成型軌道に芝生を貼る方式が理解できる  (広島電鉄提供)
●INFUNDO (ヨーロッパのエリロン化成品会社とレオンハルト軌道会社が出資して出来た、
         樹脂固定軌道専門の会社名)
 ・Embedded Railsystem:埋設式レイル ・launtrack:芝生舗装軌道 ・steel reinforcement:鉄筋 ・lawn:芝生 ・soil::土 ・gravel:砂利 ・monolithic concreat:一体型コンクリート 
●Detail rail section:レイル ・filler pipes: 電線および樹脂軽減化用パイプ(実験用には信号線は通していない) ・cork pad: コルク板 ・slab construction:一体型コンクリート
別に広電方式とは言わないだろうけど、宇品港への延伸線はセンターポール方式にて行われた。
左は旧広島港ターミナル。今もこのターミナルはの一部利用されている。


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