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 鹿児島市交通局 1000形 ユートラム

02.2.19

アルナ工機設計製作の初の低床車!

 アルナ工機は昨年独自設計になる国産低床車「リトルダンサーS」、「リトルダンサーA3」、「リトルダンサーL」の3形式を発表していたが、今回鹿児島市交通局に入荷運用を開始したのは、台車を両端に寄せた中型の「リトルダンサーA3」型であった。 アルナは広電のGreen Mover 等外国輸入低床車の艤装納入は実績があるが、独自設計の製品実用は今回が初めて。 リトルダンサー形式の解説は当会講演録13をご参照。

愛称はユートラム。・・・優トラム 悠トラム 遊トラム 友トラム YOUトラム とのことです。

納入された1000形は3セットで1011,1012、1013の車番を付けられています。

(資料は到着写真K氏のものを除き他はすべて鹿児島市交通局のものです)

●設計製作会社:アルナ工機株式会社
●運行開始:2002年1月15日


鹿児島にLRTがやってきた 01,12,8
市内走行図 はるかに桜島が・・・


鹿児島市電 1000型 ユートラム 2面図


天井機器配置図およびブレーキと台車構造

 (画面をクリックすると拡大します)

LRTはどうしても機器が床下から屋根へと移動する
その配置の工夫がみもの
電動ブレーキ装置は特長ですね


室内説明図


鹿児島市電 1000形 仕様

項目  計  式  メーカー
架線電圧 DC600V
軌間 1,435mm
最高運転速度 40km/h
車種 全鋼製2軸ボギー電動客車 アルナ工機
車体 全鋼製軽量構造車体
最大寸法 車長14m 車幅2.45m 車高3.75m
定員 55名 (座席数24名)
停留所との段差 5cm
自重 19トン(空車時)
台車 SS01型 住友金属
主電動機 TDK6309−A型三相篭型誘導電動機 東洋電機
主制御器 VVVFインバータ方式
回生/発電ブレンディングブレーキ付き
東洋電機
ブレーキ装置 電動バネブレーキ装置 ナブコ
冷房装置 RPU−4413S形 屋根上集中方式 東芝
警笛 2mの位置 105〜115dB
車椅子設置装置 1車椅子固定装置
シートベルト:フリーロック方式
使用しない場合は跳ね上げ腰掛
降車ボタン (降車ボタン設置個数)
側面:8個、天井:8個、運転席後部:2個
車椅子利用者専用:2個
カラー液晶テレビ 車載型・多機能表示装置 アドブームCOM−B12U 三菱電機
行先表示装置 電光式行先表示装置(LED) 三陽電機
車両価格 1台当たり 約」178,000千円 (3両購入)


日本路面電車同好会 堀切邦生氏による 1000形乗車感想 (抜粋)

(FTRAINE(7)まちづくりの交通 1☆LRT・路面電車等#06478より)

(館主注:堀切氏は100形運転開始翌日には早速乗車され、体験からの意見を発表
しておられますので紹介します)


 鉄道ファン491号には1000形のコンセプトとして車両設計と設計仕様の基本的な
考え方・車両の特徴について書かれていますので、引用します。
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●車両仕様
(1)人と環境に優しく、快適性・安全性において優れた機能を有するものであるこ
   と。
(2)既存の軌道と停留場ホームなどへの施設に適合した車両。また、保守や点検費
   用が少ない。さらに、トラブルへの対応が容易。以上の要件とすることから、
   国産の車両とすること。 
●設計仕様の基本的な考え方・車両の特徴
・すべての人の乗降がスムーズにできること
・バリアフリーに対応した装置の拡充を図ること
・車両は省エネルギー・省力化に寄与できること
・車両は安全性の高いものとする
・車両形状・色彩・デザインなどはざん新なもので、設備は近代的機能を有するもの
 であること。
・車両の騒音は室内・室外とも不快感を与えないようにするとともに、スムーズな発
 進、なめらかな走行で乗り心地の良いものであること。
-------------------------------------------------------------------
(鉄道ファン491号文中より引用)

 以上のようなコンセプトがこの車両に盛り込まれている、と言うことになるかと思
います。
 車両仕様の(1)はともかく(2)については熊本の導入例なども参考にして、海
外の車両も視野に入れて検討が進められたものと思われますが、メーカーからの営業
もあったのかもしれません。また鹿児島市電ではインバータ制御の車両を続々入れな
がらも一時期9700形で抵抗制御に戻ったことがあり、保守面で安心できるシステムの
車両を求めていたことも考えられます。

 設計仕様の考え方についてですが、実物を拝見したところでは以上に挙げられたコ
ンセプトはさすがに全てを満たしているようです。「乗降がスムーズにできること」
については多くの市民から「楽ですねぇ」「これはいいな」という意見が自然と出る
のを聞いています。
 バリアフリーについては車椅子の乗客でも市電に楽に乗れるようになったのは画期
的といえるでしょう。ただ渡し板についても自動化するなどして、乗務員の負担軽減
も考慮して欲しかった気がします。また車椅子はスペースに設けられたベルトに固定
されるようになっていて、万が一電車が転倒するなどした際の危険性が指摘されると
ころですが、逆に電車が急停車した際に怪我をされた時に運転士が責任を取らされる、
という理由もあってこの点は議論を深めるべきだと思います。
 あと施設面で車椅子での乗降が出来ない電停がある点については、車道との関連か
ら難しいところですが、徐々に改善が図られていくのを期待したいところです。

 省エネや省力化、安全性は申し分ないと思いますし、車両デザインのざん新さはピ
カイチでしょう。私も帰京後知り合いに「あのカッコいいヤツはどうだった?」と聞
かれたくらいです。
 乗り心地についても十分合格点だと思います。ただ今回の訪問では市内区間でしか
乗車できず、落ち着いた頃に再度訪問して確かめてみたいと思っています。

 一方で現状でも乗客の多い鹿児島市電に今更収容力の小さな電車が必要か?という
意見も聞きます。ただ今回はボギー車500形の代替用という位置づけになっているら
しく(1000形も「2軸ボギー電動客車」という扱いになっています)、今後混雑緩和
のために1000形を軸に収容力を高めた車両の導入も視野に入ってくるかもしれません。
あくまで今回は「純国産初の低床車」であることで、この長所・短所を多く出して次
に繋げられれば、と思います。

 皆さんにおかれても鹿児島に出かける機会があればぜひ一度乗車してみて、感じた
ことを聞かせていただければ、と思います。

           2002/01/22(Tue) 堀切邦生(FZH03600)


館主感想:
鹿児島市電1000形乗車はまだ未体験であるが、初期故障に悩まされているようである。但し原因もはっきりしているようだし追って全復するにちがいない。 低床式LRVの純国産車両がデビューすることはファン待望であったし、出現は意義が大きい。日本製LRVが根付き順調に生育することを見守りたい。 (^_^)





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 名古屋鉄道 美濃町線用 モ800 

  (この車両は2006年 福井鉄道に譲渡されました)
00.8.2
06.4.7追記
初の日本製部分超低床車!

●製作会社:日本車輌製造株式会社、三菱電機株式会社他
●運行開始:2000年7月19日

          photo:名古屋鉄道
上芥見駅付近 単線で運行 p:藤井正史



運転席風景 
マイクとワンハンドルが目立つ
大きな窓とGreen Moverに似た明るい
色彩設計で、車内は生き生きした雰囲気
空気バネ台車を採用。 
車輪はM軸が610mmだがT軸が530mm
の直径を使用しているのは、いかにも
部分低床車らしい工夫である。
回生ブレーキと空気ブレーキの併用
1個のブレーキシリンダで
M、T軸のブレーキを同時制御。
空気ブレーキは非常ブレーキと
別系統の保安ブレーキがある


掲載写真資料等は特記以外は全部名古屋鉄道(株)資料による。以下も同様



名古屋鉄道800系 三面図・座席配置

上図をクリックすると拡大図(85KB)が表出します


名古屋鉄道800系 屋上機器配置図

 (館主注:低床車では機器をできるだけルーフに上げる工夫が要り、関心がもたれます。同社では発表しました)

上図をクリックすると拡大図(40KB)が表出します


名古屋鉄道800系 仕様

車体寸法 L×W×H
重量
定員
最高運転速度
加速度
常用減速度
非常減速度
14,780×2,220×3,880
18.9t
72人(座席30人)
40(60)km/h  ( )は将来速度
2.8km/h/s
4.0〃
4.0〃
台車形式および寸法 インダイレクトマウント空気バネ台車 FS−567
固定軸距 1600mm   車輪径 動軸φ610mm 従軸φ530mm
制御装置 VVVFインバーター 1C-2M制御
複電圧対応・応荷重・回生ブレーキ付
MAP-062-15V91
主電動機 三相誘導電動機 MB-5090-A
60KW/440V-107A-52Hz-1510rpm
駆動装置 WN継手 84:15=5.6
ギヤカップリング WN-2202-FS   ギヤユニット WN-1202-AM
ブレーキ装置 MBS-R電気指令式電磁直通ブレーキ
MA-99作用装置 回生ブレーキ・保安ブレーキ
電動空気圧縮機 C−1000LA AC220V駆動
補助電源装置 ダイレクト3レベルIGBTインバータ  MELSIV-7000複電圧対応
出力220V:29KVA,AC100V:1KVA、DC26.8V:5KW
バッテリー
集電装置
焼結式アルカリ電池 AH-40MS 32Ah
シングルアームパンタグラフ PT7120-A
空調装置 冷房 CU771A ユニットクーラー24.42KW
暖房 座席シーズ線ヒータ、出入口 温風ヒータ8.02KW
照明装置
前尾灯
戸閉装置
表示装置
放送装置
運転保安装置
その他
客室天井灯 40W×8灯 20W×4灯  運転室灯 10W×2灯
前照灯 150/50Wシールドビーム、尾灯、続行灯/車幅灯/制動灯 LED
先頭 折戸TD-6LA-ML、 -MR   中間両引戸 Y2-8A
自動先行種別表示幕、出入口ワンマン表示器、乗降中表示器
分散式ワンマン対応   自動放送装置
M式ATS、空間波列車無線、戸閉保安装置、デッドマン装置
対面式運賃箱、整理券発行器、次停車駅表示付運賃表示器


岡山市藤井正史氏による800系乗車記 (抜粋)

(FTRAINE(7)まちづくりの交通 1☆LRT・路面電車等#04688 より)
 7月26日、名鉄美濃町線の部分超低床車に乗ってきました

 今回、部分超低床車を3両導入した美濃町線は通常の路面電車とは異なり、
岐阜市と関市を結ぶ都市間路線的性格が結構あり、両市を1時間弱で結んでおります。

 岐阜市内は大変に走行環境が悪いです。路面区間はほとんど単線であるため、
電車が接近してくるのに電車に対して逆走してくる車が多く、とてもスピードが
出せず、高性能のVVVFといえども運転士さんは、ブレーキ扱いに必死です。
軌道敷内の自動車走行を安易に認めすぎです。

 さらに岐阜はだいたいから、電停は路面に書いただけで、ホームらしきものが
まったくないので、車を縫って歩かねばならず、歩行者にとっては危険きわまりない
ものです。

今回、美濃町線に導入された部分超低床車800形は、名鉄のほとんどの車両
を納入している日本車輌製です。部分超低床とはいえ、海外メーカーと提携しない
純国産超低床車としては、初めてとなるのでしょうか? というわけで、熊本市電
9700形や広電のグリーンムーバーとは、結構違う乗り心地です。

 空気バネにすると台車の動きが大きくなり、ただでさえ艤装スペースの確保
が難しい超低床車の設計をさらに難しくさせるのです。 また、美濃町線には半径
25mという箇所が新関〜関間にあり、台車の動きがどうしても大きくなりますが、
空気バネ台車を決断した設計陣は凄いですね。
 ちなみに、車輪ごとの直径が異なり、車体中心側の車輪の方が小さい車輪を
使っております。

 岐阜市内は専用軌道といえども、幹線道路と平行するとところは警報機がない
ところが多くとてもスピードを出せずに30km/h〜40km/hでトロトロ走りますが、
幹線道路から離れて関市側は警報機があり防護がしっかりできているからなのか、
宮島線並みの最高60km/h程度まで出しました。それでも、広電宮島線の
グリーンライナー3950形で走るよりも遙かに揺れない点には、さすがエアサス
ということで、感心しました。

 あと、部分超低床車ということで、乗車口は電停さえしっかりしていれば、
ノンステップなのですが、下車の時には高さ72cmのところから下車するとい
うことで、段差がどうなのかと心配しておりました。正直言って同じ名鉄が岐阜
市内線〜揖斐線直通用に1997年・1998年に導入した780形の出入り口ステップは
かなり高かったのです。800形では折りたたみステップを常に使うことで、
1段当たりの段差をかなり小さくしております。当初考えていたほどじゃないです。
これならば、大丈夫と感じました。

 岡山でも、JRと岡電の直通運転に直ちに使えそうな車両です。

 岡山を始発で出て、最終で帰ってくるという18切符の日帰りはさすがに疲れ
ました。

 参考:藤井正史さんのホームページ:http://homepage1.nifty.com/m-fujii/



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