#311
2005.9.9

京都市 LRT路線網の検討報告書を発表   


日本の路面電車発祥の地京都市は市内の道路を使用するLRT路線網の検討を続けていた。想定したのは7路線であるが、このうち4路線について採算性が確保できるとの報告書を発表した。報告書要点は・・・
  • 4つの選択された路線
    1. 河原町線 京都駅−三条京阪ー東山三条
                  −四条河原町−祇園
    2. 東大路線 京都駅−東大路通−元田中
                         −銀閣寺
    3. 今出川線 北野白梅町−銀閣寺
                     −出町柳駅
    4. 大環状線 金閣寺前−葛野大路九条−東福寺−元田中−金閣寺前
  • 選択から漏れた3路線
    1. 中環状線 堀川通−五条通−河原町通−御池通−堀川通
    2. 小環状線 烏丸御池−河原町御池−四条河原町−四条烏丸−四条大宮
    3. 堀川線  京都駅−堀川今出川
  • 路線は複線を基本とするが、充分に幅員が確保できない一部区間は単線にする
  • 右折車線が設置できない交差点が多く、部分的に用地買収が必要
  • 一部の橋梁については架替えが必要
  • 需要予測は運賃を220円として四段階法にて行った
  • 開業後40年にて回収を想定して、東大路・今出川・河原町・、大環状線が概ね黒字
  • 課題の第一は自動車交通の影響…混雑と荷さばき場所 迂回道路の混雑化
  • 交差点処理の対応も課題
  • 今後の行動は市民合意の形成 情報公開、シンポジウム等々
  • その後で市の方針決定 会社設立 開業
         関連サイト:京都市情報館−新しい公共交通システム−
             (本件の詳細はこちら 報告書72p 概要版7p)

例によってお勉強を兼ね、ネット案を図解してみました。

京都駅前バス停には観光客の待ち行列。街はごらんの通り、クルマで渋滞が。(Photo:京都市)

館主感想:
京都には観光のため度々訪れるが旧市街を活かす都市条件から交通にはかなり悩まされ辟易する場合もある。ヨーロパの旧い市街は京都と同じ都市条件のものが幾つもあるが、LRTと観光客・市民が上手に共生している。京都市が今後も観光で生きるとすると、まちの再生と都心の活性化を求め優先信号で安心できるLRTの導入検討は必須であろう。

近年は今出川線復活の市民運動のみ知られていたが、市当局も検討をしてきたことは悦ばしい。然し誰しも気になる道路現況。生やさしい決意・努力ではLRTは1kmも敷設されまい。市民に大所からの理解を得て味方に付けることと市のリーダシップ。手始めは今出川線を敷設して実績を市民に見て貰うことは如何?



#310
2005.9.7

川崎市 フォーラム:
 「都市の交通システム(LRT)の普及に向けての戦略課題」   


 去る6月25日宇都宮市にて実施された「人と環境にやさしい交通をめざす全国大会」は全国的反響があり、成功裏に終えたようである。これを受け主宰する「エコエネルギーによる地域交通システム推進協会(AREEV)では9月から定期的にフォーラムを開催することにした。今回は継続版第1回フォーラムのご案内。東京都市圏なので関心のある方はぜひどうぞ。

  

「都市の交通システム(LRT)の普及に向けての戦略課題」


■日 時:2005年9月27日(火)  18:00〜20:30(予定)

■場 所:川崎市商工会議所ホール (JR川崎駅より徒歩2分)        

●基調講演:黒川 洸 氏   財)計量計画研究所所長
                    日本都市計画学会会長(元)

●フォーラム構成:
   コーディネータ 原田 昇 氏     東京大学教授
   パネリスト   宇都宮浄人氏   全国・路面電車ネットワーク
                        制度・財源プロジェクト委員( 日本銀行)
             岡 将男 氏    全国・路面電車ネットワーク 運営委員長
                         (岡山RACDA代表)
             上岡直見 氏    全国・路面電車ネットワーク 運営副委員長
                         (環境自治体会議・主任研究員)
●定員: 50名

●参加費: 3000円 ※事前振込み
    (参加の申込みについて)
     定数が限られていますので、事前にメールでお申込みください。
     申込み先メールアドレス sev@mb.infoweb.ne.jp

      満席の場合はお断りする場合があります。ご了承ください。

●主催:AREEV/NPO法人
     エコエネルギーによる地域交通システム推進協会
     全国・路面電車ネット/事務局長
     全国・路面電車ネット/事務局長
     AEVSJ/アジアEV学会・日本協議会・事務局
     SEV/電気自動車研究会事務局 

●連絡先:全国・路面電車ネット/事務局  TEL:045-481-6069
    
      関係サイト:AREEV・LRT−NET・SEV・AEVS 合同ホームページ


#309
2005.8.31

伊予鉄道 ICいーカードモバイルいーカード の2種を同時実施


今、国内の交通事業者は従来の磁気カード方式の限界や機材更新時期に直面し、他方ではIC技術の躍進を利用して乗車カードをICカード方式に変更することが澎湃として起きている。その実例が松山市でも実現した。

伊予鉄道は現在まで磁気式カードを実施していたが、8/23よりは預託金式のICカードICいーカードに加え、携帯電話のおサイフ携帯から非接触式で使用できるモバイルいーカードの2種が使用できるよう同時に実施した。両方式が実用できるのは同社が日本で始めて。

ICいーカードはFeliCa方式を使用し、同社の電車・バス・タクシーにて使用できる。記名式も無記名式もどちらも一枚2000円で購入できる。但し無記名式の方は、うち500円が預託金(デポジット)になり、乗車利用は1500円となる。あとで駅や車内の機械にて3万円までデポジットできる。割引率は10%(電車・バス)。来年以降には同社系列の百貨店や店舗でも使用できるよう対応を予定。

おサイフ携帯とは、NTTドコモiモードFeliCa対応の携帯電話なら利用できる非接触式IC機能。特徴は多数種の契約物販店にてこのケイタイをかざすだけで決済が計れる便利さ。デポジットは不用。モバイルいーカードはこのおサイフ携帯方式を利用する。この方式のもつ利便性から今後は諸分野での利用が広がると期待されている。

                参考サイト:(株)e-カード

尚、現在発売中の磁気カードは来月10/31にて販売中止。使用は2006年10月にて中止予定。

伊予鉄道 ICいーカード  (伊予鉄HP)
読取機の電車・バス使用例 (ITmediaビジネスモバイル)
駅設置の読み取り機 携帯からの使用例
読取機の機能が理解でき興味深い (同上)

館主感想:
いま私の住む広島都市圏でも、限界に来た磁気カードへの革新システムとしてICカード導入検討が官・市・事業者・関係者にて共同して選定作業に当たっており、自分も関心が深い。しかしこのICカードの具体的システムとなると、IT仕様・事業者の範囲・収容する機能・サイトの運営者等々多岐に別れうるので、組合せは無限に考えられよう。またソフト開発費・設備の初期投資・システム運営費は事業者にとって多大な負担を強いられ、システム規模による変化も多大である。更に厄介なことには一度基本システムを導入すると次回の基本的改訂は相当期間先になってしまうこともある。

今回の伊予鉄のシステムは、同社が松山市を中心に鉄道・路面電車・バス・タクシーを大きなシェアにて運行し、更にはいよてつ高島屋をはじめ多くの系列物販店を維持している環境にある。ということは今回のシステムは伊予鉄道にとっての最適システムであり、即、市民にとっても利用しやすいとの判断だったと思える。

どうも最近のカードの大きな流れは、現在の運送事業者だけの運賃事前預託型カードシステムから、物販の便宜=都市の活性化に対応した顧客輸送機関としての応援・後払いシステムへと変化しつつあるように見える。

各都市の交通環境は全部異なる。私見だが、各都市は新ICカードに切り替えるに当たっては、他都市のシステムもよく分析し、自都市環境への最必要なものは何かを割り切り実施することが肝要であろう。初期から実施できぬ機能はシステム拡張の可能性として考えておくことと、開発費・運用費節約のためには先進実施システムがあればその利用も考慮すべきであろう。 (館主は昔 システムプランナーでもあった)


 関連記事:
  講演録23; ICカードの導入による新しい運賃導入の可能性について
  講演録29: スルッとKANSAI・ICカードPiTaPa 現在と今後
           


#308
2005.8.25

ニューヨーク市 マンハッタン42丁目通にLRT敷設計画


ニューヨーク・マンハッタンのど真ん中42丁目の街路にLRTを敷設する計画が提案された。計画は、当地のある交通技術者が技術調査を行い、これをマンハッタン区長で次期市長候補のフィールズ氏に提案したもの。フィールズ氏は関心を示しているという。
案はマンハッタン島の中心部を横切る42丁目通りを歩行者天国にしその中を低床のLRTが走る。全長4km、16の停留所があり、所要時間は21分。市バスと同様の費用で3倍の人が運べる。

この案は12年前にもあり、市議会の承認をとりつけたのに結局立ち消えになった。   (ジャフメイトタイムス記事による)


タイムズスクエア(左)と42丁目通りの劇場街 (Photo:田中裕一さん)
ブロードウエイと7番街の交差点タイムズスクエア付近から南の42丁目通りにかけての西部分一帯は劇場街として大小おびただしい建物が集中している。その密集地の中で東西の広い道路といえば42nd Street になる。LRT敷設には充分な巾だ。

館主感想:
ニューヨークにはめったに行けないが、それでも訪問時にはタイムズスクエア付近や42丁目辺りの劇場街を徘徊したし、ミュージカルは2度観たことがあり懐かしい。 此の地域は内外の観光客が蝟集し、この広い東西の通りの中間にはグランドセントラル駅、東端には国連本部とかニューヨーク周辺観光ヘリポートなどがある。観光客にとっても視認性のあるLRTが敷設されればタクシーと違って超高層ビル街を観ながら移動でき安心だし、すごく受けると思う。採算もOKだろう。平行道路が何本もありモール化も割り切れるのでは? ただタクシー事業者が猛反対するのではなかろうか?  他所事ながら名案だなあと思う。


#307
2005.8.8

広島市 「ヒロシマと路面電車〜被爆をのりこえて」展 始まる


毎年8月6日は広島市の原爆記念日である。特に今年は被爆60周年であり、被爆生存者も減る一方なので時に意を籠めて広島平和公園での記念式典他、世界平和市長会議、原水爆禁止世界大会、鎮魂とうろう流し、祈念音楽会など数々の行事が行われた。路面電車関連では、8/4 被爆した路面電車に乗ってこどもたちが被爆者から当時の体験を聞く会が行われた。また8/6〜8/14は広島市こども文化科学館にて「ひろしまと路面電車〜被爆をのりこえて〜展」が開催されている。

展示会が行われている広島市こども文化科学館
こども達への科学知識を得る展示・企画が工夫され提供
3階の特設会場入口。 開催主旨と
被爆電車651号の模型が飾ってある
展示会場内。広島電鉄の戦前の各種路面電車写真と被爆電車および被爆前、被爆直後の広島市の空中写真を展示

被爆電車651号の詳細が下記ページに掲載されています。どうぞご覧下さい
関連ページ広島電鉄記念車両 原爆被爆電車 651号

実は館主も被爆者で当時は中学2年生でした。勤労作業に動員され、郊外2km地点の農地にて被爆し大火傷を受けましたが命拾いしました。昨日もある会合にて被爆体験報告をしました。本日も市の施設にて若い人達に被爆体験を話し、平和と反戦を訴えることになっています。