(1)私のICカードについての考え方
近年のIT技術の進歩によりまして、乗車券システム(運賃の支払方法・収受方法)に様々な可能性が出ています。
特に、ICカード(集積回路チップを搭載したカード)技術の進歩は、交換データ量や記憶データ量の大容量化、セキュリティー機能の向上等により、乗車券システムを通じた、また、乗車券システムの枠組みを超えた高度なサービスの提供の可能性をもたらしています。
ICカードの乗車券システムへの応用は、国内では、鉄道総研・JR、旧運輸省により各種実証実験が行われた後、平成13年からJR東日本で大々的に実用化されるなど、すでに、鉄道やバスにおいて導入が始まっています。
また、海外では、例えば、香港において、各種交通機関等で相互に利用できるシステムが構築されるなど、利便性の高いシステムとして定着しています。
そこで、本日は、おそらく、数年以内には、広島地区においても導入されるであろう、ICカードシステムが、その技術的可能性を最大限発揮し、利用者にとって、また事業者にとっても真に利用価値の高いシステムが構築されるものになるよう、また、そうした議論の一助になればと思い話を進めて参ります。
(1)IC乗車券システムの特徴
- 非接触
乗車券をパスケースに入れたまま運賃箱にかざすだけで支払える。
- 共通化
カード自体のデータ処理能力、記憶容量の大きさを活用して、1枚のカードで路面電車、バス等の利用が可能となる。
- サービス向上
利用距離、回数に応じ特典の提供など多様で高度な運賃サービスの提供が可能となる。
- 多機能・汎用性
物販、金融カード等のサービスを付加することが可能となる。
- 広域連携
例えば、広島のICカードで他の主要都市圏の公共交通機関を利用したり、買物も可能となる。
(2)各地での動き
- 首都圏:バス共通カード、パスネット(民鉄系)は、当面磁気カードを使用か。
ICカード化については、勉強会が開催されているが、事業者数が多く導入時期は長期に渡るか。
- 関西圏:スルッとKANSAI協議会がH15年度にICカードの導入を決定。
鉄道系(阪急。京阪)が先行。バスはH16年度から。
JR西日本がICカード「イコカ」をH15年度に導入予定
- 岡山地区:オムニバスタウン計画(H14年指定)の主要事業にICカード化を位置付け
スルッとKANSAIとの連携の方向を確認
(3)国内外の導入事例
- 静岡県豊田町(町委託) H9 ユーバスカード 密着型
- 東急トランセ(渋谷駅周辺) H10 − 近接型
- 道北バス H11 DoCard
近接型
- 山梨交通 H12 − 近接型
- JR東日本(東京近郊) H13 Suica 近接型
- 北九州市交通局 H13 ICバスカード 近接型
- 長崎県バス協会(県内5社) H14 長崎スマートカード 近接型
- 遠州鉄道 H14 EG1CARD 近接型
- 宮崎交通 H14 宮交バスカ 近接型
- 東京急行世田谷線 H14 せたまる 近接型
- 香港 H9 オクトパスカード 近接型
- シンガポール H14 − 近接型
先行導入事例の検証@
〜遠州鉄道(株)〜
○従前方式:磁気カード
○導入理由:メンテ費の多さ
○利用現況:バス26台で実験段階で不明(全体は360台ある)
○サービスの特徴 定期+ストアードフェアカード プレミアムあり
正しい運賃引き去りができる
現金取扱が減る
乗降時間が速くなる
運賃箱が旧くなるとメンテ費がかかるのが防げる
ICカードはメンテフリーでメンテ代は安くなる
○問題点・課題等
乗継割引は今後検討
関連事業との連携は今後検討
残額が不明の矛盾もある |
先行導入事例の検証A
〜北九州市交通局の導入事例〜
○従前方式:紙回数券
○導入理由:磁気カード導入への対応と運賃箱の更新
○利用現況:金額ベース(IC定期・IC回数券)で約65%
○サービスの特徴
・定期券、回数券、一日券
・プレミアムあり。乗継割引70円
○問題点・課題等
想定以上に減収か
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先行導入事例の検証B
〜西肥バス(株)〜
○従前方式:紙回数券
○導入理由:運賃箱の更新と磁気カード事例のメンテ費の高さ
○利用状況:
全車の1/3で25%のIC利用(定期導入時は50%超?)
○サービスの特徴
回数券 プレミアム9% 乗継割引5%(100円限度)
○問題点・課題等
共通化において運賃割引制度に妥協点 |
(4)先行導入事例の所感
- ◎非接触の利便性は利用者に受け入れられる!
- ×ICカードの特性をサービス向上→利用促進に活かしているか?
×サービスが磁気カードと大差ない(発展途上)。
・現行の割引制度の効果についての検証は?…割引率も同じ?
・ICカードの高い情報処理能力が活用されているか?
・メーカーも車載機のハイテク化に消極的?
・広域的な連携の視点は?
- ×汎用性の付加について具体的な内容がない(検討自体が先送り?)。
(5)広島圏でのICカード導入に 当たっての特徴と論点
- 特徴
共通磁気カードから共通ICカードへの転換
・共通(バス7社・路面電車・航路)で導入済み
・乗継割引(前後10円)を実施
・未だ事例がない。検討したケースはある。
- 論点
ICカードの特性を活かした新たなサービスメニュー(→利用者増・収入増)を打ち出せるか。
ICカードの特徴の一部を共通磁気カードによって既に実現
○非接触 △サービス提供 −共通化
△コスト低減 ※多機能性・汎用性
(6)新しい運賃体系の視点
- 合理的・戦略的な運賃割引へ
?一律プレミアム ?定額乗継割引
- 1000円も5000円も同じ割引率9%は如何なものか。たくさんの回数の人はたくさん引く=マイレージ性の考え方であるべき。運賃を下げても他の交通機関からお客が移らないと減収になる。
- 岡山のアンケートでは75%の人が割引を知らなかった。広島も同じ事情ではないか?
- 高い情報処理能力の活用
- 円単位で精算できる
実質距離でも精算できる
- 広域的な連携(スケールメリットの追求)
- JR西と連携すると便利性が増す
- 汎用性の付加(連携サービスへの転換)
- ソフト開発費は1件100万件乗車で釣り合う。スルット関西に依存する手もありそう
(7)私から)7つの提案
- 負担感の大きいと考えられる400円以上の高額利用者に限定して、通しの遠距離逓減割引運賃を適用
- 乗継判定は、乗降時間差が1時間以内・反対方向不可による
- 運賃は1円単位で計算する
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- 運賃区間の境界では、現金と同じ運賃とし、区間内では、区間内の概略位置関係で1円単位の詳細化を行う
ICなればこそ半端な数字が活用できる。
- 区間内の詳細化は、乗車側と降車側との両方で行い、最低運賃を適用する
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- 現在の定期券発行作業はたいへんというので
既存の複雑な経路判定等を必要とする定期方式に変わるべき、ICカードならではの簡略化した定期方式。
- ICカードの記憶容量を活かして、発行時に利用停留所をすべてカードに登録することとし、利用時は停留所の判定だけを行う。(途中で降りるところを登録するとソフト開発費が安くなる。 但し起点終点の割引率を大きくする)
- 現行の途中経路内無料サービスに代わり、片端が登録停留所の場合に10%割引をする
- 定期券を持つ人に、もっと利用するインセンティブを与える
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- 初回の発行は窓口とするが、継続定期については、5千円、1万円等の釣り銭なしの定額発行する。
継続使用が前提
Exe1:5000円入れると使用期間が延びる
Exe2:持ちかねから4500円だけ払う
- 定期券の発行について、現行の「窓口発行のみ」という不便を解消するため、車内発行をする
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- プレミアム→地域の商機能との連携サービス→運賃バリュー =移動をすると運賃のプラスが増える。カードを見せると割引してくれる店を作る。
- 長期的には、目的地(スーパー・デパート、商店街)にICカードの端末装置を置くシステムになろうが、短期的には、サービスセンターでポイントを運賃バリューに交換する。
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案6:特定指定割引案
広島市民の大勢集まる「とうかさん祭り」とか「バス祭り」、また市内中心地に限っては時間帯指定として100円にする。
案7:旅行者サービス
旅行者にはICカードにラッピングにして市内旅行案内を付ける。 デポジット制を取り入れ用済み後返金できるようにする。
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