#328
2005.12.22

札幌市 路線延伸案の市・市民の検討会議が発足


札幌市電は02年から赤字になり存廃が議論されたが、市民の多くは存続を求めていた。今年2月に市長が市電存続を正式に発表し、延伸を含めた委員会の設置と市民意見を聞くワークショップの開催を決めた。

8月になり大学教授・経済人・市幹部を含めた「札幌を元気にする路面電車検討会議」(委員長・佐藤馨一、北大大学院教授)が発足。12/16札幌市役所にて3回目の会議を開いた。市電の現状と課題の整理を終え、この日は『都心部でどう路面電車を活用していくか』に論点を移し、「商業を活性化するためにも札幌駅と大通り周辺を結びたい」「創成川以東にも延長を」「拠点病院を結ぶ路線案」等多くの案が出された。 委員会は来年2月に「たたき台」として纏めた路線案を提示する。   (北海道新聞・北海道建設新聞より)

 参考ニュース:「札幌市 市電の存続を正式に発表 札幌駅まで延伸検討」

札幌LRTの会が提案した一例
これは同会が「札幌市電 路線延伸の提案」として発表した3つのルート案のうちのひとつ、「西2・3丁目案 (3丁目北行、2丁目南行)」
  • 商業地域を広く走行 まちづくり効果大
  • 既存のバス・地下鉄路線を合わせた交通体系ができる
  • JR札幌駅直結
  • 時計台前走行等観光効果大
他の2案も特色が有り、同会の下記ホームページにはそれぞれのルート案と停留所設置案が図表示れ、メリットデメリットが詳しく論評されているのでぜひご覧頂きたい。
       詳細情報サイト:札幌LRTの会ホームページ

2月に存続の市長発表がありその後を気にしていましたが、公約は実行されました。会のメンバー中に活発な北大の吉見宏先生が加わっていらっしゃるのが個人的には心強いです。市民に納得され実現可能性大な実質的案が来年2月に見られることを願っています。


#327
2005.12.11

富山ライトレール 新線建設着々 工事写真紹介


富山市ライトレールの新線工事は着々と進んでいるようです。富山駅北口の富山駅電停から大通り交差点を東進し、インテック本社前方面に至る部分の工事状況を読者の大阪市Tさんから送付されたのでご紹介します。12/6撮影の生々しい写真です。 
このほど新駅4駅の名称が決まりました。このうち粟島(大阪屋ショップ前)インテック本社前の2駅は電停命名権販売による成果です。

駅前電停ホーム。駅前広場から北方向へ。電停上屋が2本あり、線路は西・中・東とホーム内に3本入る。いずれJR富山駅の高架完成後には線路は南に延伸し、市内線と接続する計画。

富山駅から北進し、大通り交差点から東のインテック方面に向いた様子。すでに交差点部分の工事は終了し、線路を引くだけの状態。

駅前大通りから北進する道路部分の、芝生部分のインファンド軌道道床。中央凹み部分に芝生が植えられる。線路は路側方式で施工されているのが興味深い。


#326
2005.12.5

長崎電軌 開通90周年記念イベント開催


長崎電軌軌道(株)の開業は1915年(大正4年)11月16日である。今年は開業90周年に当たるわけで、長崎電鉄の主催にて電車開通90周年記念電車展(11/16〜路面電車ニュース64:路面電車とLRTを考える館20)および路面電車まつり(11/20)等が行われた。特に圧巻は路面電車まつりで、花電車および新旧の電車の運行パレードが盛大に行われた。
 
   Photo:長崎路面電車の会 崎戸秀樹さん
   デザインがエキゾチックで、さすが長崎を感じました
 
   詳細情報関係サイト:長崎路面電車ホームページ「記念行事特集」 


#325
2005.11.29

富山市 地鉄市内線の環状化案を提案


富山市は今、都市の再開発に活気を帯びている。富山駅北口から富山港に向かう富山ライトレールは目下工事の最盛期であるし、新幹線富山延長を睨んで富山駅の橋上化も視野に入っている。ただし現在の市内は富山地鉄市内線が駅南を中心に逆U字形で走行し富山城址を中心とする中心部が繋がっていなかった。

このたび富山市が中心となり、富山地鉄市内線の環状化路線のルート案を、富山地方鉄道(株)や関係者に説明会をもった。新線には2つのルート案が出た。一つは西の始発駅・富山大学前から丸の内電停を経て城址公園に沿って東進してから曲がる大手町ルート案と、他の一つは丸の内にて南進し。旅籠町を経由して西町に至る旅篭町ルート案である。長さは900m。

今後は需要予測、交通影響、事業効果などの検討に入り、来年5月までに事業計画を纏める方針。 市はこれら公共交通調査費に2500万円を計上予定。
館主感想:
たぶん新幹線建設と関連がありと推測するが、この機会を捉え、市は富山駅北部を富山ライトレールの建設に踏み切った。更に富山駅高架化に合わせ、この線路は富山駅ホーム下を貫き、富山駅南口にて地鉄市内線と接続するはずである。宿題であった市内線の環状化もこの際実行して、富山市軌道交通のLRT総合的ネットワーク化と市中心部活性化との相乗効果を睨んでの計画であろう。富山市の都市改革に対する積極姿勢を高く評価したい。


#324
2005.11.25

長崎市 全国路面電車シンポジウム in 長崎 2006 概要


昨年10月に開催された「第7回路面電車サミット04 in 高知」において次回開催都市は長崎市と決定した。このほど長崎路面電車の会にて06年度に開催されるサミットの概要が公開されたので要点をご紹介。ご期待下さい。

●開催期日:2006年(平成18年)10月20〜22日、3日間の会期日程。

●予想される参加者の構成:  
   路面電車愛好支援団体協議会加盟団体(18団体)
   全国路面軌道事業者協議会加盟事業者(19事業者)
   国土交通省・各地方自治体交通・都市計画担当者
   一般鉄道愛好者・一般市民
   日本各地からたくさんの路面電車関係者が一同に会します。

●サミットでの主なイベントは以下のものを考えています。
  • サミット全体会議(開会・閉会イベント)
  • 市民参加フォーラムもしくはシンポジウム
  • 路面電車パレード
  • 路面電車インターネットサイトオフ会
  • 路面電車まつり(浦上車庫、11月中旬開催)
  • 市民参加イベント(さるく博コースを巡るスタンプラリーを構想中、2007年3月開催)
     詳細情報関係サイト:長崎路面電車ホームページ
           〃     :長崎路面電車の会 ホームページ 
     今までの開催情報 :路面電車サミット記録 インデックス


#323
2005.11.15

京都市 LRT導入検討シンポジウム 結果報告


つい先日の11月13日京都市にて標記のシンポジウムが開かれました。市の発表と市長の提案とが食い違っており、たいへん気になったので当館の案内に「どなたかぜひ結果を教えてください」書きましたところ、早速京都大学の南さんから下記のような詳しい報告を頂戴しました。そっくり掲載させて頂きます。

   関連ニュース:「京都市 LRT検討経緯ほか シンポジウム」
     〃     :京都市 LRT路線網の検討報告書を発表 (9/9)

●開会の挨拶
毛利信二氏(京都市副市長)
 深刻化する京都の交通問題を解決するために歩くまち京都プランを作成し、さらなる解決を目指すためにLRT導入検討を行った。検討結果として、LRTは課題は多いが、効果が高く京都の交通問題解決の一つの切り札となる。今日のシンポは、今後LRTについて市民と話し合ってゆくプロセスの第一歩としたい。

●報 告:「京都の交通課題と新しい公共交通システムの検討経緯について」
大島 仁氏(京都市都市計画局長)

1,新しい交通システムの必要性
 過度の自動車依存を改めるために、1)歩行・自転車を増やす2)公共交通に乗り換え3)自動車利用を控える4)自動車を分散する5)観光地のクルマを減らすことを目指している。現在の京都では、慢性的な渋滞、公共交通ネットワークの連携不足、観光シーズンの交通容量不足などの問題を抱えている。なので、地下鉄とバスの中間的な機関、LRTの導入を検討した。

2,LRTってなに
 LRTは、1)バリアフリーに優れ人に優しい、2)歩いて楽しいまちをつくる、3)空気を汚さず、騒音も少なく、環境にやさしい、4)専用化された軌道を持ち、時間に正確で乗り換えも便利、5)建設費が比較的安く、財政にもやさしいという特徴を持つ。

3,どのような検討をしてきたのか
 検討ルートを7つえらび、それをモデルとして実現可能性と課題を探るためのデータ収集を行った(正式な導入計画ではない)

4,LRT整備によりもたらされる効果
 所要時間の短縮、乗り換えしやすいという効果の一方、交通渋滞の激化の危惧がある。事業者が受ける効果:LRTによる乗客増の相乗効果。バス事業者とはバランスを取る必要。環境面:LRTによる+と渋滞による−の両面。他には、中心市街地活性化、京都市の新しいシンボルになるなどがある。

5,LRTを走らせるために解決すべき事
 自動車交通に与える影響と課題、LRT導入のシステム構築上の問題、より良好な交通環境の実現の必要性がある。

6,今後の検討の進め方
 検討結果はYesかNoをはっきりさせたのではなく、何が可能で何が課題かをはっきりさせた。LRTは自動車規制など痛みも伴うが、京都の交通課題解決の一つの切り札となる。LRT導入効果については、市民のみなさんと積極的に話し合っていきたい。行政と市が一つのテーブルを囲んで率直な意見交換を行い、市からも積極的に市民へのアピールを行ってゆきたい。


●基調講演:「京都の都市戦略・交通戦略とLRT」 
青山吉隆氏(京都大学大学院工学研究科教授)

 都市計画マスタープランでは、1)環境負荷の少ないまち、2)人にやさしい・美しいまち、3)歩いて楽しい、自転車で動けるまち、4)都市空間が節約できるまち、5)人の交通権が確保されたまち、6)中心市街地が魅力のある都市を目指すべきである。

 自動車と公共交通を比較すれば、都市:環境、空間、中心市街地、アメニティー面では公共交通が強いが、採算性、整備費・財源、自由度・便利・快適では公共交通が弱い。自動車依存都市から公共交通依存都市へ転換するには、公共交通の利用促進、自動車の抑制といった適切な役割分担が必要である。そのためには、クルマから転換する条件を整える、公共交通の整備と自動車抑制に合意形成が得られること、公共交通の財源を整備することが必要である。

 LRTは洗練された公共交通となることが必要であり、そのためにはコスト削減、バリアフリー、シームレス・定時性・速達性、パッケージ政策、柔軟な走行空間、景観創出、まちの賑わいの創出が必要である。LRT導入の課題としては、自動車交通の混雑の発生、事業採算性の解決(社会的便益を評価の上での赤字容認)、市民・ステークホルダーとの合意形成が挙げられる。

 以下世界の事例を挙げる。LRT導入で成功したストラスブールは、1日5万台の自動車を削減をめざし、交通政策と同時に都市計画・都市政策を行い町の美化にも成功した。強いリーダーシップと全市を巻き込んだ合意形成・意志決定によって成功した。ストラスブールでは、LRT開業によって中心市街地の歩行者の増加、商店の売り上げ増、地価の上昇、高級店が増加という効果があった。フランスは国内交通基本法によって自治体に財源、合意形成、決定権限が与えられており、これが成功の要因となった。
 環境首都フライブルクでは、人と自転車が主役の総合交通政策を行い、LRTの整備を行い、郊外にパークアンドライド、鉄道とのシームレス乗り換えを行った。人口は伸びており、自動車は増えず、公共交通・自転車は増える。

 都市戦略・交通戦略の考え方としては、目標:京都をどんな都市にしたいか、目的:京都にふさわしい交通体系は何か、方法:総合パッケージ政策、条件:合意形成、財源について明確にすることが大切である。

●パネルディスカッションについて
 パネルディスカッションは京都を作るプロセスに、LRTをどう位置づけるかについて、来場者と共有しながら議論してゆく場として位置づけた。各界を代表する5名がまず話し合った後、フロアから回収した質問票を読んだ各パネリストがそれに回答する形で議論が進行していった。

・同志社大の青木教授は、海外事例に明るい交通経済学の専門家という立場から京都のLRT計画についてコメントを行った。また、LRTに関する質問について回答するという役割も担った。

・西脇氏は、一般市民代表としてLRTに関する疑問点・不安点を率直に述べるという役割を担った。現在財務状況の悪化が市政上大問題化しているバス・地下鉄の問題についての懸念も示した。

・平井氏は、財界代表として観光都市京都推進のためにLRTは必要であるということを力説した。実際の商工会議所の取り組みについても説明した。

・望月氏は、国の立場から、まちづくりのための一括補助金制度に関する説明などを行った。また、氏が助役時代に関わった富山港線のLRT化プロジェクトの説明も行った。

・大島氏はLRT検討の責任者として、京都市を代表する立場としてパネルディス
カッションに参加した。

うも今回のシンポは京都市民に対するLRTへの基礎知識提供といった意義が強かったよう。パネルディスカッションでは京都市に適合した場合の論議があったようです。館主が知りたかったLRT路線選定の考え方、経緯については細部の説明は無かったようですね。ただ、このシンポを契機としてどの路線をどう絞るかの具体的議論の機会が出るに違いありません。待ちましょう。