#300
2005.6.14

池袋 東部地区LRT延伸シンポジウム討議要点 


去る5/27に、「池袋の路面電車とまちづくりシンポジウム」が開催される旨の案内を掲載した。このほどシンポジウム世話人で交通ビジネス研究会阿部氏よりシンポの様子が送られてきたので、ほんのさわりのみを速報。詳しくは6/25開催の宇都宮「人と環境にやさしい交通をめざす全国大会」にて同氏より報告されるはず。

標題:池袋における路面電車と街づくりに関する活動

●池袋でのLRT構想


 (1) 3つの導入ルート案


 (2) 現時点での収支見積り

現時点では以下のように試算され、既存の補助制度以上の財政出動なしには事業が成立しない。
・建設・車両購入等の初期投資は38〜48億円
・3ルートの需要は、@東池袋3,598人/日、A雑司ケ谷2,880人/日、Bサンシャイン4,990人/日
・民設民営では、事業者は1年目に2.4〜3.8億円の赤字で、継続的な財政負担を要す
・公設民営でも、事業者は1年目に0.2〜1.2億円の赤字で、初期投資及び継続的な財政負担を要す

●雑司ケ谷ルートをメインとした実現に向けた検討

(1) 第1期ルートの絞込み
環状5の1号線は、生活道路・地下通過道路・地下鉄の3層構造となり、東池袋交差点〜雑司ケ谷の生活道路は平成18年度に開通の予定である。一方、東池袋4丁目再開発地区の完成は平成22年度以降の見込みであり、早期実現の点からサンシャインルートは優先順位が下がる。また、早稲田方面との結節を考慮して東池袋ルートより雑司ケ谷ルートを優先することで関係者間の議論を進めている。

(2) 採算性確保策と事業主体
現時点での試算は、独自の車両基地の保有、比較的高価な車両の導入、利便性(運転間隔・所要時間)のあまり高くない前提、早稲田方面の需要を含まない控えめな需要予測に基づいており、それらを見直すことにより採算性を確保できるビジネスモデルを構築すべきである。
財政状況が厳しいなか多額の税金投入は見込めず、またサービス業は、本来は官でなく民が担うべきである。採算性を確保できるビジネスモデルを構築できれば、民間企業による早期実現が可能となる。

(3) 道路工事計画との整合性
環状5の1号線の道路空間の使い分け及びこれから数年の工事手順について、今まさに関係者で議論がされている。雑司ケ谷ルートLRT計画と道路計画との整合性をうまく取らねば、最悪の場合はLRT走行空間を確保できなくなりかねない。また、工事手順との整合性をうまく取ることにより、地下通過道路及び地下鉄の開通を待たずにLRTを早期に実現し、池袋の街づくりに貢献したいものである。

     大会の詳細ホームページ:
       第1回「人と環境にやさしい交通をめざす全国大会」in宇都宮

館主感想:
池袋東口のLRT構想を本年2月に聞いた時、もと東京都住人の館主にとっては大ニュース。早速HP報告をし、その後の推移について多大の関心をもって見守りました。今回のシンポ討議では雑司ヶ谷ルート案が一番現実的のようですが、収支、経営形態もまだ絞れぬようで、引き続き苦労は多いようです。都合の付く方はぜひ宇都宮大会に出席していただき、詳細の把握および諸々の他のLRTの動きについて知って応援を願いたいものです。

  関連ニュース:
   2/21池袋 豊島区がLRT新設3路線案公表と路面電車の会発足 
   5/22 池袋の路面電車とまちづくりシンポジウム
   6/2 宇都宮市 人と環境にやさしい交通をめざす全国大会


#299
2005.6.6

広島市 路面電車まつりが10回目を迎えた 


早いもので、路面電車まつりも今年で10周年を迎えることになった。全国の路面電車まつりの開催のきっかけは、1995年「路面電車サミット in 広島」にて6月10日を路面電車の日と定めたことによる。以来各都市にて電鉄事業者と愛好団体とが協力して一斉に路面電車まつりなる行事を開催し、市民に路面電車への愛着と利用とを図っていることはご承知の通り。

広島市の場合、第1回は翌年1996年6月9日に開かれたので、今年の開催は第10回目にあたる。まつりの変遷を考えるに、当初は開催者が広電社員と路面電車を考える会メンバーのみなので男性世話人ばかりとなり、なんとなく無骨。また出し物もどうも展示物中心でお勉強的ではなかったかしら。 今は主催者は実行委員会形式に変わり多彩。特に目を引くのが文教女子大の学生さんが多数世話人に加わってすっかり華やか。また出し物も来場する子供さんとその母・父をターゲットに、本物の電車に乗り、ハンドルやボタンに触り、模型電車を運転してみる。ほかに自分で吊革を組み立ててみたり、クイズ電車に乗って回答を出す等々参加型に変化した。この盛況なら潜在顧客が将来は顕在化し、乗客増への布石ともなろう。

路面電車を考える会は10年間一貫して路面電車アンケートによる定点観測をしているのは広島市の特長。

来場者数も初回は6,000人であったが今年は14,000人。毎年若干の増加で、まつりがすっかり広島市民に定着したことがうかがえる。

今年の目玉はmax新車の公開。乗車も長い
行列になるし子供写生大会もこちらに集中した
10周年記念の第2目玉はステージを新設。
文教女子大生によるダンスやバンド演奏など
クイズ電車は広電前〜広島港間を1日4回運行。
切符の抽籤入手が大難関  「当たったよ!」
日本路面電車同好会は毎年模型運転を提供
今年はmaxの模型が早速2セットも登場
修理工場の壁にさりげなく「方向幕の歴史」展示
大人の関心へのサービスを感得した
修理工場内のドアハンドル、パンタグラフの昇降、
ブレーキ等は自分で動かせるように設定してある
路面電車を考える会の「1000人アンケート」
コーナーは今年も盛況 定点観測として定着
コーナーには昨年度アンケートの集計を
必ず展示してお答えをしている


#298
2005.6.2
6/17大会プログラム追記

宇都宮市 人と環境にやさしい交通をめざす全国大会 


大会プログラム確定(6/17)
LRT関連の歴史的大会なので、発表コンテンツも多く準備も大変だったようですが、このほど大会の詳細が決まったとのことです。内容を見るに、論文発表会の方は6会場に別れて12セッション、発表論文は74編という多彩さで圧倒されます。市民フォーラムも来賓は大物出席者にて決まり。詳細は下記主催者HPにて確認してください。出席者はどれに参加するか事前に決めておく必要がありましょう。都合の付く方はぜひ出席しましょう。

  

  「人と環境にやさしい交通をめざす全国大会」
                    in 宇都宮


■開催内容:研究発表大会、パネルディスカッション、市民フォーラム、懇親会

■開催日時:2005年6月25日(土)


 研究発表大会
  • 時間:10:00〜15:00
  • 場所:宇都宮大学工学部 (宇都宮市陽東東7−1−2)
  • 発表内容:確定版
     午前の部 午後の部
第1会場 公共交通の存続 各都市のLRT
〃2 〃 海外事情 財源・制度
〃3 〃 環境問題 まちづくり
〃4 〃 車両技術とデザイン 交通システム
〃5 〃 パワープラント 代替交通手段
〃6 〃 市民参加 支援技術

 ●パネルディスカッション 新規
  • 時間:4.30 〜 15.30 (予定)
  • 会場 :財源・制度セッション終了後、同じ会場で開催
  • テーマ:「LRTの整備の促進に関する法律」を考える。(仮題)
  • 司 会  石井晴夫教授(作新学院大学)
       基調報告 大島崇志教授(学習院大学・前東京高裁判事)
       パネリスト   太田勝敏教授(東洋大学・東京大学名誉教授)
              古川 洋氏 (NPO/横浜にLRTを走らせる会副理事長) ほか

 ●市民フォーラム
  • 時間15:30〜17:30
  • 場所:宇都宮大学 工学部内第1ホール
  • 内容:確定版
    • 主催者挨拶:宇都宮大学学長、来賓挨拶:福田栃木県知事、佐藤宇都宮市長
    • 基調講演:ゆたかはじめ(エッセイスト)
    • パネルディスカッション
      • コーディネーター:古池弘隆(宇都宮大学教授)
      • パネリスト:岡将男(RACDA会長)
      • 島正範(RACDA高岡会長)
      • 奥備一彦(雷都レールとちぎ代表)
     
 ●懇親会
  • 時間:18:00〜20:00(予定)
  • 会場:「ホテル サンシャイン」 参加費5,000円(予定/当日支払い)
■大会および市民フォーラム参加費用
  • 参加費は無料
■主催: 実行委員会
        市民団体「雷都レールとちぎ」、 宇都宮大学、
        県央地区における新交通システム導入促進協議会(3市4町)、
        「全国・路面電車ネットワーク」、SEV/電気自動車研究会、
        NPO法人AREEV /エコエネルギーによる地域交通システム推進協会
     
■主催者ホームページ:AREEV・LRT-NET・SEV・AEVS 合同ホームページ 

参考サイト(実現に向け活発に活動中):雷都レールとちぎ

■問い合わせ先:SEV/AEVS事務局長 内田敬之氏( sev@mb.infoweb.ne.jp ) 


#297
2005.5.28

鉄道総研 「LRTに関する技術検討会」 が発足


(財)鉄道総合技術研究所(鉄道総研)の主唱で地球環境にやさしい日本型LRTの開発の基礎となる技術検討会の第1回会合を5/20を都内にて開催された。

●名称:LRTに関する技術検討会

●委員長:
    須田 義大 東京大学教授(国際・産学協同センター兼生産技術研究所)
●委員構成:
    中川 大   京都大学 大学院工学研究科助教授(社会基盤工学)
    岩倉 成志 芝浦工業大学 工学部土木工学科教授
    国土交通省より 関係8部局の代表者
    交通安全環境研究所 代表者
    鉄道・運輸機構 関係3部門代表者
    自治体および事業者より: 
      札幌市、函館市、栃木県、宇都宮市、東京都江東区、東急電鉄、
      神奈川県、浜松市、京都市、万葉線(株)、京阪電鉄、京福電鉄、
      堺市、岡山電軌、広島電鉄、熊本市

●検討項目:
   @架線レスシステム
   A簡易な運行システム
   B運行管理システム・誘導案内システム
   C複合交通システムほか

●検討形式:技術検討会を円滑に進めるため、検討会のもとに技術評価を行う
         評価分科会と、フィジビリティスタディを行うFS分科会を設置する。
  1. 評価分科会
       ・技術評価の観点から、実用化に必要な評価項目の決定。
       ・評価項目に対する、シミュレーションや実験による結果の報告。
       ・評価項目の設定や、実用化に向けたアドバイスを受ける。
  2. FS分科会
    • 導入を検討している鉄道事業者や自治体の協力を得て、設備の仕様、需要予測、設定路線に対する工事費用、保守費用、省エネルギー効果を初めとする波及効果などをケーススタディする。
●今回の会合内容:次回からの上記活動に資するための資料と情報の提供まで

●会の活動期間:今後3年間を予定

●次回開催日:2005年10月 鉄道総研

            参考サイト:鉄道総合技術研究所

館主感想:
先年、日本の主な鉄道車両メーカが共同して超低床LRV台車技術研究組合を発足させ、日本に適したLRV台車製作に乗りだしました。その成果の第1弾が広島電鉄のGreen Mover maxにて結実したのは新鮮。このたびは鉄道総研の主唱にてLRTを関連した日本型諸周辺システムの開発をめざし、まずは底辺となる基礎技術について衆知を集めての開発に乗り出すことにしたのでしょう。先日の会合は、関係者がどこまでの取り組みが出来るか、それぞれの組織に適した研究・活動対象を決めるための頭揃えの会であったようです。

時期に適した好企画ですね。集まった自治体や事業者を見ますと、LRTについて目下取組中で当館でも話題にしている組織が多く選ばれたように見えます。これは研究も実行もやる気に繋がる妙案で、メンバーの熱心な研究活動と成果が期待されます。個人的関心からですが、都市景観の観点から架線レスシステムにもっとも牽かれる。ともかく成果発表がありしだい即報道します。


    関連ニュース:鉄道総研 世界初バッテリー路面電車を開発



#296
2005.5.22

池袋 「シンポジウム オーストリアのLRTと路盤技術」   


 昨秋豊島区による池袋地区活性化の目的で東部方面にLRT敷設案が発表され、本2月には池袋の路面電車とまちづくりの会情報も紹介しました。
 同会はシンポジウムを2003年8月、同年12月、04年11月と既に3回実行しており、この度は下記標題にて4回目のシンポジウムを開きます。ちょっと専門的かも知れないがそこが興味深いです。在京地区の方で都合の付く方はぜひどうぞ。

  

  「池袋の路面電車とまちづくりシンポジウム」
 −オーストリアのLRT及びその路盤技術の紹介− 


■日 時:2005年5月27日(金)  10:00〜11:30 13:00〜18:00

■場 所:豊島区民センター5階音楽室 (東池袋1-20-10、Tel 3984-7601)

●現地視察(関係者のみ) 10:00〜11:30
  
視察コース説明  (豊島区民センター4階第2会議室に集合)
  徒歩で池袋⇒雑司ケ谷⇒池袋 


●シンポジウム (自由参加) 
13:00〜16:10
  挨拶 オーストリア大使館商務部 商務参事官 エルンスト・ラーシャン      
  挨拶 池袋の路面電車とまちづくりの会 会長 宮田和昌               

 第一部 パネルディスカッション 
  池袋LRT構想の現状と課題   豊島区都市整備部 都市計画課長 鈴木 達    
  池袋LRT構想の実現に向けて 豊島区長 高野之夫               
  LRT成功の秘訣       グラーツ工科大学 教授 クラウス・リースベルガー
  LRTネットワークのあり方  ウィーン公共交通 技術部長 エドガー・フィッシュマイスター
    (司会:交通ビジネス研究会 阿部 等)  

 第二部  オーストリア6社の技術プレゼンテーション 
  
●技術及び交通計画ワークショップ(関係者のみ) 16:30〜18:00
  オーストリア側・池袋側双方による意見交換
  オーストリアタイプ路盤の現地への試験敷設の可能性の検討

主  催:在日オーストリア大使館商務部、池袋の路面電車とまちづくりの会

協  力:NPO法人 交通ビジネス研究会

後  援:豊島区、豊島みらい文化財団

参 加 費:池袋の路面電車とまちづくりの会会員は無料、その他の方は1,000円

参加登録:5月26日(木)10時までに、go@i-tram.com へ


#295
2005.5.12

岡山電軌 和歌山県貴志川線の経営を引受け


和歌山市から東方面郊外に伸びる南海電鉄貴志川線(14.3km)は利用者が年間200万人あるが、年5億円の赤字が続き本年9月末にて撤退をきめていた。このため和歌山市(人口400,000人)と貴志川町(人口22,000人)は後継事業者を公募していたが、9つの企業・個人からの応募があった。選定結果は、岡山電気軌道が事業譲渡を受け06年4月からの運行開始を目指すことに決まった。

岡山電軌は和歌山市に100%出資の子会社を設置し、地元の意見を取り入れる運営協議会を作る。事業譲渡価額や地元自治体からの補助金等はこれからの協議となる。

従業員は南海電鉄からの転籍希望者と地元採用にて賄う。運行本数は現行と同じ平日96本を予定。運転士や技術員の養成期間を確保するため、南海電鉄に対し同線の運行を06年3月まで延長継続を申し出ることになるはず。

■南海貴志川線とはどんな線なのか勉強しました
 
 ・
貴志川線は1914年(大正3年)に山東軽便鉄道として設立、1915年に開通した。1924年国鉄和歌山駅に乗り入れ。1961年(昭和36年)南海電鉄と合併し今日に至る。延長は14.3km。軌間は1067mmの狭軌。

路線終端はJR和歌山駅であり南海本線とは直接接続していない。

館主所見:
いい話ですね。やはりびっくりしたのは路面電車の経営体である岡山電軌が引き受けたこと。先般は岐阜市路面電車4路線の経営に名乗り出て不成立の模様だったが、今回の貴志川線の経営引受では成立しました。基本的には赤字体質なので、ある程度自治体の補助を受ける様子ですが、やはり経営はたいへんでしょう。ともかく公共交通を維持することには意義があり、ノウハウ・創意工夫と勇気にて経営健全化を期待します。


#294
2005.5.6

広島市 フラワ フェスティバル’05 と 路面電車


広島市の中心部を東西に通る巾100mの平和大通りを利用して毎年5月3・4・5の3日間「フラワ フェスティバル」なる市民芸術家?総出演の祭典が行われる。元を質せば20余年前広島カープが初優勝したのを祝い、市民が平和大通りをパレードしたのが始まりだという。今や観客もたいへん増え今年は162万人の人出、博多どんたくに続く日本第二の大きな祭りである。この3日間は大通り付近は全車種通行止め。でも、さすがに中心部を南北に直交し路面電車も走る鯉城通りだけは止めにくい。が、電車も車もパレードの時間差を縫って通過させて貰える肩身の狭い日。 しかし一方では路面電車は観客を会場に運び込む必須の足の役目を果たしている。 周辺の電停は広島電鉄の臨時係員が全部張り付き、電車は乗客が多く朝から夜までたいへんに混み合う。


パレード諸グループは平和大通り東からスタートし約2kmを真っ直ぐに行進する。主役は大通りを通るパレードであるが、この通りは幅100mと広いので緑地、側道等の空間を利用した15ヶ所のステージおよび飲食屋台、フリーマーケット、各県物産屋台等がふんだんに並んでいる。
 
折りしもmaxがパレードの間を縫って全速力で走り抜けた。maxの白い塗装は遠くからでもよく視認できることが判った。入口部分を示すオレンジ色塗装もよいアクセントになっている。 広島市西北部JR横川駅と北部可部町の間に1903年日本で始めての路面バスが走った。今年はその復元バス「かよこ号」がパレードに参加。エンジンはあるが道路走行は許されない。