#69 99.10.24

広島市 東西線地下案は駅配置に意義あり ほか   .


広島市東西線問題は来月にも決定と煮詰まってきたので、地元有力誌中国新聞が3日に渡る大特集を掲載した。

10/21(上)では「東西線地下アストラム案強まるが・・・」「3000億円事業 財政難の壁」「膨らむ市債 基金も底」「調整大詰め 市長どう判断」との見出しで財政課題を報じた。 8段。写真、図解入り。

10/22(中)では「東西線採算 市民に疑問の声」「1日10万人集客可能か」「平和公園素通り 駅配置にも異議」として路線案に対する疑問を報じた。 このうち利用者の市見込数10万人に対し「都市問題研究会」の試算では市内線のみは僅か1.2万人だと報告。 これはもう大差過ぎて(@_@;)です。 他の一つは「広島LRT研究会」の意見として、東西線地下方式案は地上案の駅案から大事な駅を抜いて計画しており、これでは「作る側の論理優先」ではないかと報じた。 7段、図・写真入り。

以下は当会提案関連の報道であったので、本日この問題を館主は、下記のようにもうすこし細かく検証作業しました。 



広島市東西線案は当局では地下案に収斂したと報道された。 だがしかし、地下案は高架案に比べ駅を2カ所削っている。理由は駅の建設費は100億円もかかり、建設費が高価だからと説明されている。削られた平和公園駅は被爆の旧跡でもあるが、その地に記念資料館、国際会議場、厚生年金会館、アステールプラーザ等々市民や訪市者が集中する場所であり、駅を節約するのは解せない。???  もう一箇所の三川町は100m幅の平和大通りに面して、ホテル、会社などが林立するビジネスの街である。ここも節約とは将来の発展可能場所へのアクセスを自ら削ることになる。おかげで中心市街地線路案にも関わらず、ここは駅間距離が1,100mにも伸びてしまった。
結果としては、地下案の駅は全部広島電鉄の既設電停場所になった。重複投資ではないか?
これでは利用者不在、仏を作って魂を入れずと言われても仕方あるまい。
市の責任者はこの疑義に対し「事業化の段階での検討課題」と説明しているが、「後で追加」方式は採算その他影響が大きい事項は先送りで、の疑問も出る。

10/23(下)では「巨額投資に見合う効果は・・・」「西部丘陵線 景気低迷で不透明な街の将来像」「路線バス事業者 共存連携に不安」の見出しにて、本案の新規乗客の本体である、新開発地「西風新都」の開発と販売が停滞しており、このままだと10年は遅れそうだと市の担当は気をもんでいると報じている。
また、民間交通事業者の意見は、「広島電鉄は路面電車は電停が多く、高齢者も利用しやすい。市の計画案との共存は可能」と更に路線拡大や再編などにらみ元気だが、バス事業者の方は「ここ4年間赤字続き。これ以上利用者が減ったら倒産だ」と嘆く。 明暗の差の大きさに驚かされた。 本日分は市場見透し、マーケッティングの疑問が纏められている。8段、写真入り。



#68 99.10.7

仙台市営地下鉄 現状を広島TVが取材し放映 


 広島TVは広島市の東西線意見募集以来この問題について特別取材を行い精力的に放映を続けている。第1回は市民意見、第2回は秋葉広島市長の生出演があった。今回は第3回であるが、前2回目にて司会者が「仙台市には地下鉄があり累積赤字780億円あるが市民は文句を言わないみたい」と水を向けたら、市長は「乗っている人が少ないのでもんくが聞こえないのでは?」といなした。

 今回はそのやりとりを受ける形で広島TVのスタッフが仙台市営地下鉄について自ら取材に出かけ、生の情報を集めて編集放映した。結果は司会者が前回の「地下鉄がよいのでは」の発言取り消しとなり、視聴した市民に事実を通じて教訓を与える結果となった。 この報道は全国各都市の軌道系交通新設可否の判断参考になると思われるので掲載したい。


仙台市地下鉄特別番組 仙台路線図
広島市のTV局が仙台地下鉄実績を検証 仙台南北線図 12年前建設。
いま東西線を地下鉄かLRTかの議論が
仙台採算 大内秀明先生
 建設12年後の実績 建設当時審議委員だった大内教授は
「いまは反省し、東西線はLRTでと提案」

発言要旨

広島市のアンケート結果(下記10/16掲載:賛否二分)を説明して仙台地下鉄ケースの検証は始まった

  • (司会者)広島市アストラムライン(新交通)の建設費は3000億円、うち市負担1900億円という大プロジェクトになる。
    今日は検証として12年前に地下鉄を建設した仙台市の場合を取材した。
  • (三戸森ゆかりレポータ)仙台市は今年春で100万人を突破したが、南北線建設時は当時は71万人であった。 南北15kmの路線である。路線開発後北と南に副都心が誕生した。
    建設時1日23万人の乗客予想が昨年16万人であり、6万人予測を下回った。昨年は乗客数と収入が前年を始めて割った。
    建設経緯は76年に自動車渋滞の解決策として路面電車の代替を検討し、委員会にて都市交通に地下鉄がふさわしいと決定した。
    当時地下鉄決定に拘わった、もと東北大学教授大内秀明先生に尋ねた
  • (大内先生)当時地下鉄は路面電車に代わりうると思っていた。ところで、路面電車は駅の間隔が短く、地域コミュニティーの利便性を持続していたのです。 これは地下鉄はカバーできなかったが、当時はそれがよく判らなかった。
  • (レポータ)自動車は10年で1.6倍に増えた。その間、バス乗客は1.8億人から5,500万人へと半減し、赤字が65億円に膨らんだ。
  • (大内)従来路面電車が運んでいた人はかなりマイカーに移った。残りがバスと地下鉄に移ったが共食い、共倒れとなった。それでバス、地下鉄両方の赤字となった。
  • (仙台市営業課長)最大の誤算は自動車の普及がこんなに速く浸透したこと。これにつきます。
  • (市民若い女性)地下鉄はよく使います。時間が正確で速くて便利です。
  • (主婦)乗らないです。 地下に降りてゆくのが嫌。市内は歩いた方が早いくらい。
  • (若い女性)地下鉄は初乗りが高い(注:200円)
  • (中年男性)運賃は地下鉄は特に高い(注:最遠地290円)
  • (レポータ)仙台の地下鉄は区間や距離で比較すると日本で一番高いと言われている。
    そうは言ってもいちど作った地下鉄は有効利用するしかない。市は5年後には今の南北線に加え東西線を着工することを決めている。 東西線は総額2,710億円で、市負担と借入金で2,100億円。国負担が610億円となっている。
    地下鉄を利用できない地域のため、バス路線の見直しをやる。来月には郊外から都心へ直行バスを出す。都心での循環バスや、大がかりなパークアンドライドの実験を行うことになった。
  • (仙台市計画課長)交通実験の成果を踏まえて本格的な検討を進める。軌道系を機軸としてバスが補完するようなありかたを検討する。
  • (大内)エスカレータや階段で地下へ潜っていく時代ではない。まず人に優しいバリヤフリー型の街づくりを。今までのように右肩上がりで税金がどんどん入ってくる時代は終わった。市民の税負担がかからない、懐にやさしい交通手段でないと長持ちしないです。
  • (レポータ)都心のTDM(交通遷移)をどうやるか。地下鉄が切り札にならなかった今、新たな方策を求められている。
    この仙台市の例は広島市にとってもよい教訓になりそうです。
  • (司会者)その通りでしょう。
  • (キャスター)わたしは東京の地下鉄のイメージで思っていたのですが違っていました。
  • (司会者)地下鉄案も善し悪しですね。(当市も)市民的に議論を発展させて、早く結論を出さねばいけないと思う。


#67 99.10.6

広島市 アストラム延伸案 賛否二分  


広島市が新交通体系について市民に意見募集していることは、当ホームページ8/20付けにて報道すみであるが、このほど市によって纏められた。
中国新聞10/6に「アストラム延伸 賛否二分」の見出しにて、この夏、市によって行われた市民の新しい交通体系のありかたの意見調査は、下記グラフのような結果になったと報じました。同紙によると、市はこれらの意見を参考にし、遅くとも11月上旬までに新交通交通体系マスタープランを決める予定と報じています。


交通体系意見


#66 99.9.27

金沢市 LRTかガイドウエーバスか 比較案検討中 


金沢市も市内交通改善の切り札としてLRTとガイドウエーバスの両案を検討中です。
石川県は7月にLRTとガイドウエーバス両案の比較調査書を県土木企業委員会に報告しましたが、「LRTは680億円、ガイドウエーバスは1130億円」の事業費という試算になっています。そのどちらを選択するかは先送りとなりました。 LRT案については都心を中心に交通調査実験を行う模様で、来年度にも実施される様子。 以下、北陸中日新聞、建設通信新聞記事、村田篤史さん、山田達也さん、末岡政彦さんなどの情報にもとずいて要点をご報告します。


金沢新交通
       北陸中日新聞7/24掲載地図に彩色・加工

1.「金沢都心交通対策・新しい交通システム検討調査委員会」(石川県、金沢市、運輸・建設両省関係者、
  有識者らで組織)が98年度に実施した比較調査報告概要
 (村田氏)

LRT(新型路面電車)

  • ルートは、金沢港−JR金沢駅−香林坊−野町−有松−野々市町三日市(国道157号線と8号線の交点)13.6kmのA線と、野町−北鉄野町駅−(北陸鉄道石川線のLRT化)−加賀一の宮間16.1kmのB線
  • 建設中の金沢外環状道路との交点(金沢港から約800m)と三日市にパークアンドライド用の駐車場とバスターミナルを設置、香林坊にもバスターミナルを設ける
  • メリットは事業費の安さ(LRT680億円に対してガイドウェーバス1130億円)、環境面の影響が小さい(排気ガスを出さない)、所要時間の短縮効果が大きい(ガイドウェーバスは野町以西は一般道走行となる)、高齢者・身障者にも優しい(超低床車を導入し、地上に停留所を設置するため)、など

ガイドウェーバス

  • ルートは、金沢港−(LRT A線と同じ)−野町7.5km(以前は香林坊−現県庁間0.3kmの支線が建設される計画だった(#473参照)が、今回は削除されている)、将来的には有松方面への延伸も検討
  • 金沢駅西口と野町にモードインターチェンジ(ガイドウェーの出入口)を設置
  • メリットは都心部は地下を通るので道路交通への支障が小さい、既存バス路線がそのまま乗り入れるので新たな乗り継ぎが生じない、バス事業経営への影響が小さい、など


2.交通調査実験 (村田氏 末岡氏)

  •  LRT案では、金沢駅付近以外は地上走行を行う模様で、金沢市では来年度にも国道157号線の都心部(武蔵が辻−香林坊−片町−野町広小路?)4車線のうち2車線を閉鎖する実験を行い、道路交通に与える影響を調査するとのこと。
  • 実験は事業コストがより低減される一方、マイカー交通への支障が懸念されるLRTを先行させる。 実験ではコースの1つとなる都心部の国道157号でLRT軌道に必要な片側2車線分を普通とし、残り2車線での交通状況を調査するほか、車線減少による渋滞をさけるための通行車両の分散方法などを検討し、ガイドウェイ・バスとの比較材料とする。現時点で実験方法として 2車線限定通行や1日バスレーンなどの実施が浮上している。


3.新交通システム情報補足 (山田氏)
  LRT方式

  •  想定車両 5両編成(全長36m)、床レベル30cm、最高速度80Km
          騒音軽減策として弾性車輪を使用(ゴム挿入)
      定 員  230人
     事 業 費 走行空間整備  270億円
          車両・電気設備 270億円
          関連事業費   140億円
          --------------------------
           合 計    680億円
     優 位 点 時間短縮効果が大きい(路線長が長いため)
          事業費が安価
     課 題 点 道路交通への影響(空間確保及び交差点)
          バス事業経営への影響→公共交通全体での採算性の確保

 ガイドウエーバス方式

  • 想定車両 ノンステップバス(HIMR=ディ−ゼル+バッテリ式電動機併用)
          案内輪格納方式
     事 業 費 地下走行路整備  680億円
          車両・喚起設備  180億円
          関連事業費    270億円
    ----------------------------
           合 計    1130億円
     優 位 点 地上の道路交通に対する直接的な影響を及ぼさない
          新たな乗継ぎが生じない
          バス事業の経営に対する影響が小さい
     課 題 点 LRTと比較して事業費が高額となる
          地下区間への国からの補助制度適用

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 県と市は既にハ−ド面からの検討は完了、としており今後石川県民への意向調査や交通実験・シンポジウムの開催などを予定している模様

 ソフト面 都心部の交通制限の合意形成
      国道157号線の2車線化に伴う交通処理
      国の財政支援制度及び法体系の改善・整備
      運営主体設立&バス事業者との調整

 今後はこのソフト面での意識改革(^^;の促進が計られていく様です。 どうも結論としてLRTに傾きつつある様に見受けられます。(山田氏ご意見)