#56 99.6.24

 アメリカ ポートランドの低床路面電車   


  最近は路面電車を低床車採用を機に「優しさ・福祉」の面から論議されることが多くなってきました。このたび東京居住の建築家秋元孝夫氏から、アメリカポートランド市で実見した低床路面電車のレポートを頂戴しました。介護者のありかたについて示唆があると思いますので転載します。



アメリカ・オレゴン州のポートランドに出かけてきました。サスティナブルコミュニティとして定評を受けている都市で、MAXという低床電車が市内を走っていました。ドイツやフランス、あるいはオランダなどでも低床電車を見ていますが、ポートランドのものは、低床だけではなく、電車とホームの間に自動的にプレートを出すシステムになっており、電動でも手動でも車イス利用者自らが乗り降り自由のシステムが出来上がっており、広島で導入された車両の試乗実験で、介護者が4人から1人になったと書かれていますが、ポートランドのは介助者0で、二両編成の1両が低床車両になっているのですが、3回に1回は車イスに出会うほどの利用され方で、もちろん介助者が付いていることはありません。障害者にしてもノーマライゼーションを実現するのは介助者なしの日常生活が理想であって、介助者がいる内は完全ではないと思います。


なお同氏のホームページには実際写真と関連記事が掲載されていますので関心のある方は参照してください。  http://www.akimoto.com/kimama/index.html



#55 99.5.27

広島におけるライトレールのデザインとその未来展開催  


広島市でもいろいろの団体が路面電車やLRTに関心を持たれてきたようです。
昨日この展示に行って来たので私見を交えて報告いたします。

催 事 名:広島におけるライトレールデザインとその未来展
会  場:広島市立大学 芸術学部芸術資料館 広島市安佐南区沼田町大塚 
展示期間:5月31日まで。 29(土)、30(日)も開催
時間:午前10時〜午後5時まで。
入場料:無料
アクセス:アストラム大塚駅下車。バス私立大学行き
電話:830-1500本部より転送期  間:5月24日〜5月13日


昨日会友2名と一緒に行って来ました。

受付にてデザインした本人にお話を聴きたいと申し出ました。(編集者気分)
現れたのはドイツ人客員研究員でイエンツ・コイネッケ(32)という人でした。(新聞によると大井健次教授と吉田幸弘助教授との合作らしいが)
会場には彼のデザインした広島用路面電車のパネルが掲示してあります。表題に「2010年の広島の路面電車」と書かれているから近未来用のデザインです。市内や宮島線用電車外装は屋根が横から見ると扇形にカーブをしております。出入り口窓が円形(南海ピラート風)なものでコンピュータグラフィックを使用して合成した写真風の大型パネルが6枚掲示してありました。車体外側の塗装は緑色と銀色。内部も同系。
その他、車体外装(エクステリア)車内内装案(インテリア)とか広島市の路線特徴の検討と電車デザインとの合理的関連、デザイン思想の説明、このことから広島には単車、2連接車、3連接車の組み合わせ方がよい(コンビーノの思想)ということで例示的説明とデザインのパネルなどもあります。2連接は2台が一組で扇形、3連接は3台一組で扇形にデザインされており食パン形3山ではない。

会場ではその他、いま広島市鷹の橋にて工事中の「エレベータ専用横断歩道橋」の平面図と立体模型の展示をしています。

いろいろ聞き出しましたが、彼の故郷ハノーバーやドイツ各都市を広島市に比較して考えたらしく、広島市の建物は直線が多いのでカーブを主体にした路面電車をデザインしたとのことでした。彼は技術的というかメカ系ではなくCG系の方だそうです。 驚いたのは「広島は市内での車の頻度がドイツの都市に比べて多いので狭い電停で待つ人が脅威を感じる。だから高床式電停にしてスロープで上がっていくデザインにした。1週間考えた。これならインテリアもデザインしやすいし。低床車に比べ製造コストが安い」との説明。この考えはNifty路面電車会議室でも議論されている荒川線方式の主張ですね。 但し電停や車体出入り口部分の解説的図解が無いのが残念。当方が首を傾げているのであまり嬉しくない風でしたが。

ホームページに掲載したいので写真を撮らせて欲しいと申し出ましたら、暫く考えて「ホームページはコピーされる、ダメ。お友達に見せるだけならOK」と言ってデジカメでの撮影を許されました。 

ともかく路面電車やLRTに関心を持つ組織が広島市のあちこちに出来るのはとても嬉しい傾向ですね。



#54 99.5.25
5.26続報

広島 都市交通から考える人と環境に優しいまちづくりフォーラム報告


(5/26続報:フォーラム討議内容報告)
フォーラムでの討議内容をいずれ報告をと思っていましたところ、5/26中国新聞にフォーラムの報告が掲載されました。
一読しまして、さすがプロ、様子が簡明に書かれています。館主の筆力ではこんなに上手には書けないと脱帽し、記事内容を転載させていただきました。


「人にやさしく 環境にやさしく 高速路面電車導入の提案も」

広島市の都市交通問題を通して、人と環境にやさしいまちづくりを考える「エコシティーひろしまフォーラム」が24日夜開かれた。
広島を世界に発信できる環境としにしようと、広島修道大人文学部の日隈健壬教授らが実行委員会を作って開いた。
 約500人の参加者を前に、新谷洋二日本大理工学部教授が「LRT(高速路面電車)とまちづくり」と題して講演した。日本の路面電車に比べ、高速・低床で輸送能力も大きいLRTを税金を投じて導入し、都心が活性化したフランス・ストラスブール市の例を写真で紹介。「日本でも公的支援の拡充や、路面電車の最高速度を制限している法律改正などが必要」と強調した。
 続いて、学者や市民代表ら6人が、高齢化や環境をキーワードに都市交通の将来像について討議した。路面電車を考える会の山根政則事務局長は、市の「東西線」構想に対して「整備費が安く、周囲の環境にも調和しやすいLRTを平和大通り経由駅前通りに通してはどうか」と提案した。
 広島大総合科学部の石倉康次助教授も「低床路面電車を被爆地ヒロシマの、人への優しさを印象付けるシンボルにしよう」と呼びかけた。 また、県社会福祉協議会の竹下虎之助会長は「環境保全やエネルギー節約のため、今後は利便性を犠牲にすることも考えなければならない」と指摘した。
 実行委では、今秋までに同フォーラムを2回開く予定。


(5/25追記)
下記交通と街づくりフォーラムは参加者多数にて無事終えることが出来ました。ご来場の方々にお礼申し上げます。
開会は前広島県知事竹下氏のご挨拶により始まり、引き続き新谷先生による世界のLRTの現状と日本における課題を話されました。 全編OHPを使用しての非常に理解しやすい名講演でしたのに、割り当て時間が少なかったことが残念でなりません。 
その後は水谷先生の軽妙な解釈を交えての司会でパネルディスカッションが進行しました。論者の多くは環境問題に理解を持つ人々でしたが、どなたも路面電車に親近感を持たれているようで、新交通派との甲論乙駁を期待した筆者にはちょっと物足りないものとなりました。 
筆者は21世紀の広島市の環境と条件よりしてLRTネットを拡大建設することをおおおいに主張したかったのですが、なにしろタイムキーパーの女性が眼前で「後3分」「2分」「1分」「30秒」「」のパネルを次々出すものですからすっかりプレッシャーになり、言いたいことが充分言えず残念でした。(^^;) 
いずれフォーラムの発言内容は印刷物で報告されるはずですが、その節には当ホームページにも掲載する予定です。 館主敬白


(以下5/12掲載文)
環境と都市交通は切っても切り離せません。このたび当路面電車を考える会でも大いに応援をして、環境と都市交通をテーマにフォーラムを開催する運びになりました。 基調講演は、都市交通・LRTのテーマで著名なあの新谷洋二先生にお願いできました。その他環境、福祉、デザイン等多士済々の方がパネラーとして出演されます。実は、館主もパネラーとして末席に並びます。(=^_^;=) みなさま、万障お繰り合わせの上、お運びくださいませ。(旧い表現(^^;))



●日時:5月24日(月) 18:20〜21:00
●会場:広島国際会議場「ひまわり」  広島市中区中島町1 (広島平和記念公園内)
                         広電袋町下車徒歩6分。バス平和公園前下車1分
●参加費:無料 定員:500名

●第1部 基調講演
   新谷 洋二 (日本大学教授・東京大学名誉教授)
   
●パネルディスカッション
  パネリスト 石倉 康次 (広島大学助教授 福祉・社会学)
         金堀 一郎 (住宅デザイン研究所所長)
         竹下虎之助 (広島県社会福祉協議会会長)
         新谷 洋二 (日本大学教授 東京大学名誉教授)
         水田 一征 (広島工業大学 建築思想)
         山根 政則 (路面電車を考える会事務局長)
         渡部 朋子 (アジアの友と手をつなぐ広島市民の会代表)
 コーディネーター
         日隈 健壬 (広島修道大学教授)

●主催:エコシティひろしま実行委員会



#53 99.4.19

熊本市電 LRT増備車2編成到着・運行情報と映像


館主敬白:1997年4月に日本で初のLRV車が熊本市電が到着し早2年が経過するが、この3月には第2,第3編成が到着した。これはすでにパソコン通信にてPOTE/細井敏幸氏によって報じられている。このほど同氏のご厚意で到着関連の写真を入手したんで氏の報告と一緒に掲載する。(熊本市電了承済み)


POTE/細井敏幸氏報告:NIFTY-TRAINS(16)#4392

増備車両

  • メーカー:ADトランツ
  • 型式番号:9702A、9702B。 9703A、9704B の2編成
  • 熊本市電到着日:1998年3月29日
  • 営業運転:4月15日より運行開始 これに伴い9701ABが改造のため運休。 GW前に3編成運行となる予定 (4/20追加)

最初の9701ABとの変更点

  ・方向幕がLEDから幕式に。
  ・方向幕は系統別に色表示。(2号系統「緑」、3号系統「青」、非営業「橙」、臨時系統「黄」)
  ・車体色は白一色。ただし側面窓下にスポンサーの広告。
  ・前扉上に「KUMAMOTO」のロゴ。
  ・正面窓下と側面窓上に「KUMAMOTO CITY TRANSPORTATION」のロゴ。
  ・前扉にも整理券発行器とカードリーダ設置(前扉からの乗車可能、9701AB号も改造されると思われる)。
  ・1人掛け座席がタイヤハウスの幅に拡大。1.5人掛け(?)となり、親子や子供2人の着席が可能。色は茶色と緑の縞模様に。
  ・通路幅が77cmから82cmに拡大。
  ・天井に握り棒と降車用ボタンを設置。
  ・運転台の操作パネルの日本語化と形状変更。機器スイッチ・インターホンなどの配置変更。
  ・運転台の日除けカーテンをアクリルボードに。
  ・エル・パーサー用の室内ミラーを設置。
  ・乗客用握り棒を増設。
  ・車内色を白からベージュ系に。
  ・エル・パーサー立ち位置の座席使用禁止棒の取り付け位置変更。
  ・他にもいろいろあるかと思います。

9702、9703の画像 (解説文はPOTE/細井敏幸氏自身のものです)

 下記サムネイル画像をぜひとも大拡大してご覧くださいませ。見えぬものが見えてきます。 40KB程度です。


1999/3/29 
深夜2:00過ぎにトレーラーに載せられて到着した9702B号
3/29 
車体を吊り上げられる9702A号。台車がくっついたままなので短時間で
降ろせる
3/29 
なかなか姿を見ることができない台車
3/29 
連結部断面を見ると、床の低さがわかる
3/29 
みんなでピットに押し込み
3/29 
その日のうちにダイムラークライスラー社の広告電車に変身
4/2 
試乗会前で並んでいる増備車。この日は9701ABも運休で、3編成が
同一フレームに収まった。 どうせなら3編成並べて欲しかった。
4/2 
超低床車全景
3/29 
9702A号の運転台。より使いやすい配置になった
4/2 
試乗会はあいにくの雨模様。園児達を乗せて出発。

続報:営業運転写真追加(細井氏撮影) 4/20 追加      

1999/4/17 
9702ABの車内の様子。通路が広くなり、タイヤハウスの出っ張りもあまり
気にならない。握り棒や降車ボタンがずいぶん増え、天井までついた。
(館主注:これは重要な写真です。かって熊本訪問時に1号のハウス出っ張り
が気になっていたが、これならかなり工夫されているのではないでしょうか)
4/17 
八丁馬場を行く9702AB号。向こうから来るのが9703AB号。
4/17
熊本駅前に停車中の9702AB号。

 その2熊本市交通局宮崎氏より9700形2次車市中走行写真のご送付を受けましたので再追加掲載します。4/29 

市内通町筋を行く健軍行き9700。
熊本城目にて。
参考情報 1997年3月 熊本LRT第1編成到着試運転当時の当ホームページ情報へ飛ぶ


#52 99.3.6

岡山市 路面電車の環状化と延伸とを提示  


岡山市内中心部の路面電車延伸計画を見当している「まちづくり交通計画調査検討委員会」は2/17の会合でこれまでの案を絞り、具体的提案として提示した。



延長ルート案は二つで、中心部1キロ四方を環状化するRACDA案+市役所から大元駅まで南進する計3.5kmの延長案。
総事業費は68.8億円。1日の乗車人員増17,800人。
駅前〜市役所間が第1期工事。第1期予算は低床車3台の購入を含み27.2億円。

興味を引くのは道路を通す軌道案は上右図のように道路中央を通す軌道敷設でなく、道路東側歩道よりを提案したことだ。
昨年広島電鉄が平和大通り案を提案したとき同様の提案をしたが、その後の検討で軌道下に水道本管が走っていることと、川岸へのスロープ新設の処理が難しいとして断念し中央案に変更した経緯がある。
もし岡山案が実現すれば各都市の軌道新設にバラエティができて貢献できるであろう。

この検討委員会は97年に岡山市が国、県、岡山電軌、学識経験者、市民などに呼びかけて結成したもの。
検討委員会は、本年度中に報告書を纏めて市に提出する。 第三セクターによる経営を打ち出したが、夏までに最終結論を出す方針。

委員会は「街づくりや交通結節点の強化につながり、採算もとれる」としている(公的補助を前提で)が、岡山電軌は「まづ空洞化対策が先だ。乗る人がいなくては、電車を走らせる意味がない」との考えらしく、鶏・卵論争の気配もある。
都心の再生や経済波及効果を考えると、いろいろの困難もあろうがぜひ乗り越えて、この真剣な提案の成功を祈りたい。

    (山陽新聞、朝日新聞、中国新聞、読売新聞などの岡山版を参考)


#51 99・2・4

広島市 市長交替と東西線建設問題への影響は   


昨年暮れに現市長平岡氏の出馬取りやめ宣言に端を発し、1/31に広島市の市長選挙が実施された。館主としても誰が選ばれるかによって現在論議されている広島市東西線建設への影響は大きいと見て注目していた。
結果は社民党代議士を離脱し無所属で出馬当選した秋葉氏と決まった。 これまでの経緯をマスコミ評価を中心として抽出し今後の市交通問題への影響を占ってみたい。

今回の候補者は、調査会社社長で無所属共産推薦の小林氏、市会議長で市の交通問題特別委員会の委員であった自民党推薦中本氏、社民党代議士を離党し無所属で出馬した秋葉氏、寝具会社経営無所属の柳楽氏、広島市助役で無所属の太田氏の5名で争われた。
投票率は47%で、前回平岡市長再選時の史上最低投票率だった29%よりは18%も上昇したが、選管の目標だった50%には若干届かなかった。 当選者秋葉氏の得票は地区別には全部1位であって、無党派層に受けたのはもちろんであるが、出口調査では、各党の支持者からも相当の割合で得票しているし、年齢別も偏っていないので、新市長は市民全体からまんべんなく支持を得たと言えるのではなかろうか。
今回の争点は広島市らしく「平和都市をどうやって訴えていくか」ということと「市経済の活性化」の2点である。
中国新聞は結果について「分かりにくかった「争点」」と表現している。
広島市の交通問題は争点の一つであるが、道路建設と軌道系建設とに分かれる。軌道系とくに東西線建設に関して、アストラムラインがよいか広電案ないしLRT案がよいかをはっきり意見を表明したのは、小林氏と柳楽氏の2名で、あとの3名からははっきりした意思表示はなかった。


当選した秋葉忠利氏のプロフィールは       
56歳
元社民党代議士
テレビ朝日キャスター
広島修道大学教授
米タフツ大準教授
日本経済研究所主任研究員
東大大学院卒
マサチュウセッツ工科大大学院卒
著書「夜明けを待つ政治の季節に」


中国・朝日紙による質問のうちで市中心部の「軌道系新交通・東西線」整備問題について秋葉氏の意見表明は

  • 広島市の総合的都市像を描くことから始める
  • 各種交通手段の特性を生かし、ターミナルの立体化など総合交通システムを確立する
  • 新たな軌道系については、導入そのものの是非から論議しなおし百年の大計にたった抜本策を確立
  • 平和大通り構想もその議論の中で、相生通りを含め再検討すべき 当面の改善策ではダメだ

この主旨で行くと先日まで行われた小委員会の検討結果はどう判断されるのか? 討論結果はあくまで参考とし採否は白紙に戻して考えるということにならぬか。

また氏は選挙戦中は一貫して「ボス議員による支配排除」を訴え続けてきたし、今の市政は市民の声を聞く受信機が壊れていると指摘して戦ってきた。
朝日紙によると、当選後の初会見で「市には市民の意見をとり上げてくれるところがないとよく耳にした。そこを改善する必要がある。市長としてはまず、市民の意見をきちんと聞くことから始めたい」と答えている。
心強い公約表明ではないか。当会でも一昨年来、市に対し提案を出しているがどうも手応えが弱い。 が、今度は我々市民の提案も聞いて考えてもらえるシステムが出来ると考えられ、新市長に大いに期待する次第である。



#50

広島市 1/13東西線小委員会審議 最終回を迎える

99.1.15

いよいよこの1/13をもって広島市都市交通問題調査特別委員会による東西線建設問題の審議が終了した。一昨年8月が第1回であり今回が8回目である。
審議初年には「東西線実現困難に」などという新聞報道があったりした。最初の提案では「新交通高架案」のみ成立とした。次いで広電より「平和大通り案」が提出されるにおよび、多くの関連質問と調査要求とが重なった。昨秋におよび「都市の装置」なる妖刀が飛び出してきて「新交通高架案」も成立ということになった。
昨日の最終委員会ではどれかの案に絞り込む提案がなされるのかと予想したが、実際は市の新交通案に対し、調査要求の多かった広電案を詳しく検証するデータの提出し説明するという「両案併記」までで終わった。たぶん1/31に行われる広島市長選への配慮から決定的選択提案は控えたのではなかろうか。そういうことで結論は2000年度に開かれる中国地方交通審議会に合わせて、この6月か7月に策定する広島市第4次基本計画にて出すことになろうと説明があった。


今回の提案内容は市の新交通案と広電平和大通り線案との比較説明とで全てといえる。
多くの比較資料のうち最も総括的な比較資料は、下記の市東西線案を実行した場合と、そうでなく広電の平和大通り線のみ実行した場合との交通機関への影響比較説明ではなかろうか。それを掲げる。



市当局が付した両案への主な問題点

新交通中心にて投資のとき

  • 「都市の装置」の考え方に立った新たな公共負担の考え方を導入し、段階的な整備を行えば採算が成立するという見透しを得られたが、感度分析(注:採算の余裕範囲のこと)が厳しいことからも、都市の発展動向によっては、利用者数および採算性の評価の見直しが必要となる。
  • 新たな公共負担の考え方を導入して、年間100億円程度の投資的経費を投入すれば、20年程度で完成することができる見通しを得られたが、経済や財政規模の低迷が続けば、道路事業など他の事業の進捗を圧迫することが懸念される。


路面電車改善のみのとき

  • 増加が予想される都市圏各方面からの自動車利用の大幅な抑制にはつながらないことから、周辺部の開発、人口増が進展すれば、相当の渋滞が発生する。
  • 中心部や周辺部における都市機能の強化やまつづくりへのインパクトが市案に比べ弱く、路面電車の改善のみでは、中枢都市としての活力の低下が懸念される。


自動車交通等への影響力は?

双方の投資が自動車交通にどの程度影響力を持つかの資料も提示された



主な討議

  • Q:2000年には中国地方交通審議会があるが提出されるのか
    A:当面6・7月に行われる市企画策定目標に合わせ作業し、次いで2000年の審議会に提出したい
  • 柔軟な修正で対応しないと変化のスピードが速い。 21世紀を展望したとき、人口も大して増えないので、ハコ物を作っても財政が苦しい。 今あるものを利用すべき。 
  • 市の案を実行しても交通渋滞の解消はない ソフト面を含めた対応をやる必要がある
  • 市民からの声が添付してあるが数十件と少ない。 これでは市民からの討議が不十分。公聴会とか市民投票をすべきだ。
  • 外国のLRTは見に行かれたのか? まだならぜひ行き、外国がどう変わったか体験すべきだ。
  • 採算その他がっちりしたものを市民に与えないでアンケートは本当の答えではない。もっと具体的な資料データを示してやるべき
  • Q:「都市の装置」の適用は広島市が日本で1号では? だが、財政が悪ければ福祉や道路建設を圧迫するのではないか。「調整」だけでは納得できない。
    A:今の時点では言い切ってはいない。可能性の表示までである。
  • Q:「改善策の検討」の表現は曖昧。民間は経営の浮沈に拘わる。
    A:現時点では荒神橋の駅前大橋への掛け替えを検討した。 その他バス数社があるので、バス利用促進策として全体連携がとれないかできるだけ応援する。
  • (上記の「自動車利用・20年後の抑制効果」の資料について) 数千億円の投資の割には車利用の抑制効果が殆どないことに驚く。 車利用抑制の真剣な討議がなかったことを反省する。
  • Q:高齢化社会を迎え、中心部は車が一方的に増えて行くだけでは問題。方策は?
    A:具体的方法に至っていない。 車側の環境対策も進歩するのでは。
  • Q:いま考えるに、市案の数千億投資か広電の100億投資かでなく、もっと中間の例えば1000億ですみますという選択もあったはずだった。
    A:広電案の提起をしたからよいはず
    Q:市民からいろいろ提案したはずだ。
  • Q:市案では20年、広電案では5年でできるという。「時間の選択」もあるはず。
    A:平和大通り3橋の掛け替えを一度にやるのは困難。10年を想定する必要がある。
  • 「チョン切れているアストラムを延ばせ」の市民の声はある。 が、市内の交通網については無い。行政がα型にこだわっているのではないか。費用と効果の割りに時間短縮効果が大都市ほどでない。
  • Q:広島の通勤条件で10分短縮の意義は大都会とは違うのではないか
    A:交通機関の定時制の確保に意義がある
    Q:定時制確保なら新交通になってもLRTにしても改善される
  • 広島市は人口増の大きな伸びはない。 広島では東西線よりも南北交通軸特に北がJRとの連携で重要ではないか。
    南についてはLRTを縦横に繋げてアストラムに接続、こういう描き方があるのではないか。これを踏まえた対話を新市長、議会にて選択肢に加えてもらいたい。
  • 「都市の装置」といえば民間会社もJRの交通機関も「都市の装置」ではないのか。この考え方を適用して行くべきでは?
  • どうも市案か広電案かの討議になってしまった。新市長になっても、既存会社、JRと道路整備も含めて広く議論して行くべき。こういうかたちで報告を纏めてもらいたい。

館主意見
今回は最後の審議らしく全体を踏まえての反省と提言が多かった。特に市案か広電案かの二者択一ではなく、市民の意見をよく聴き、柔軟な立案を提起して欲しいとの複数人の意見に対しては、我が意を得たりでした。 付け足すことはありません。


それと審議中に市回答者自身が
「相当なレベルでデータを公開した。他都市ではここまでやらないと考えている。 あとは読みとる人の判断と確信している」との発言があった。 昨年もこのホームページに掲載したことだが、広島市の情報公開度は館主も大いに認めるところである。民主主義の基礎は行われています。  ‘後は読みとる人の判断’だと開き直られては素人読者として辛いものがありますが・・。