01.11.5

館主前言:
10/24〜10/28、熊本市において「第5回 路面電車サミット IN 熊本」が開催されました。期間が5日間あり講演会、討論会、サミット本会議、市民フォーラムその他たくさんの行事が持たれたいへん盛大でした。 館主は都合で討論会とサミット本会議等に出席できたのみですので、接した部分だけですけどご報告いたします。 サミットの詳報はいずれ実行された都市交通会議から公開されると思いますので、今回は速報版のみを提供します。 講師その他関係者で誤りに気がつかれた方はE-mailでご連絡ください。

議事録詳細版:(2002・4/15)
2002年4月に至り主催者側の「都市交通会議(本多孝氏)」ホームページに、行事のうちの26日本会議の議事録が掲載されましたのでリンクを下記に付けます。会議の詳細はこちらをご覧下さい。 他の議事録は若干時間がかかるようです。

      「都市交通会議」 http://s3.kcn-tv.ne.jp/~honda/   「路面電車サミットの講演と討論について」ご参照

         


サミット行事

10月24日(水) ●第1部講演会「ライトレールの展開、鉄道に乗り入れる路面電車」
 講師:ハルムート・トップ氏(ドイツ・カイザースラウテルン大学教授)
●第2部講演会「市民のためのまちづくりと都市の交通」
 講師:ヤン・ゲール氏(デンマーク王立芸術アカデミー准教授)
●ディスカッション(来場者と講師2人を交えての公開討議)
10月25日(木) ●第1部講演会「持続的成長可能な都市サスティナブル・コミュニティーの思想と実践」
 講師:ピーター・カルソープ氏(アメリカ/都市プランナー)(ビデオ出演)
●第2部公開討論会「21世紀の都市と地域の交通」
 3人の講師のテレビ会議討議の来場者との公開討論会
●歓迎レセプション 
10月26日(金) ●路面電車サミット本会議
●低床電車試乗会
●アジア留学生交通ワークショップ
10月27日(土) ●市民環境フォーラム「環境未来都市を目指して/市民参加のまちづくり」
 講師:松本英揮氏(エコロジスト)
10月28日(日) ●講演会『和! いいなアー 電車で街に出かけよう』「電車で楽しくなる城下町」
 講師:鳥飼香代子氏(熊本大学教授)
●着物リフォームふぁっしょん抄
 講師:山口ブリーズ千恵子氏(服飾研究家)
●地球大好き大パレード
22日〜30日
●展示会「各国車両模型、熊本駅周辺模型、各国の電車・人・街パネル」
●ビデオ上映「公共交通で変わった! 障害をもつ私たちの暮らし」



サミット会議

全国路面軌道連絡協議会 専務理事 中尾 正俊 氏挨拶

  • 今国土交通省の肝いりで1067mm狭軌型の日本型LRTの開発をやっている。試作車が出来るのは平成13年である


熊本市長 三角 保之氏 挨拶

  • 昔熊本市には路面電車は7路線あったのに今は2路線12.1kmになってしまった。今思えば残念に思っている。
  • 7年前から軌道式をの声が挙がってきて、今では脚光を浴びている。
  • 3年半前から建設運輸共に結節改善延伸の研究を始めた。
  • 今後は健軍町から空港へ、それと港の方に走らせたい。国、県の補助を受けて早く作りたいと考えている。


国土交通省道路局企画課 道路計画調整官 徳山 日出男 氏

  • 私は岡山の生まれです。岡山市は今路面電車で元気です。 最初の任地は熊本市でした。 約20年前に日本初の路面電車クーラーを入れたのを覚えています。
  • 路面電車は20年前が底でしたが、今は都市の交通機関として見直されています。新交通は100万都市神戸でも採算すれすれで、50万から60万人の都市では難しいでしょう。 
  • さらに、路面電車は今や街づくりの役割もしている。ヨーロッパのトランジットモールなどのように、今は成功事例が色々出ている。
  • 道路の整備と道路の社会実験をしているのが私のセクションです。
  • バリアフリーの立派な停留所を作り増やしたい。 これは景観面とバリアフリー化とを両立したもの。高速道路中心から、街づくりや都市景観づくりへと徐々に軸足を移している。 歩く人が電柱やクルマの危険にさらされないように。
  •  国土交通省になったので、今後は車両から基盤まで上下フルセットで皆さんと一緒に街づくりに励む所存です。


国土交通省鉄道局技術企画課 車両工業企画官 河合 篤 氏

  • 熊本市は日本の路面電車で三つの新しいことをした。
    1. 始めての冷房車
    2. 低床電車
    3. 省エネ車両(交流モータで電力再生式)
  • 25年前に大学の鉄道研究会にいて「路面電車ガイドブック」を作った。個人的には路面電車ファンです。
  • 国土交通省になってからは道路部門と仲良く仕事をしている。路面電車ではバリアフリー化を進める。低床車導入時には普通形式との差額を補助する。今日本には1000台の路面電車がある。今年からその2〜3割を低床車に置き換えたい。
  • 日本の路面電車の4割は狭軌である。 3年間で低床車を開発する予定。ということは1068MM軌道では車輪間が99cmでその間に80cmの通路を通さなければならない。 これで車椅子が通れる。 今年度にはモータの試作が出来る。 年度末には電車のイメージが出来上がる。
  • 日本では安全地帯が狭い。 これでは車椅子が乗れない。伊予鉄のケースでは乗れるのは3カ所。
  • 道路事情があるので皆んなで知恵を出し合うべき。工夫が大事。市民ももっと知恵を出そう。
  • 日本の今世紀は人口の減少が起こる。 最初は通勤・通学が減ってくる。これを経営上から心配している。
    例えば千里や高島平団地。高齢化、退職、子供の別居が起き突然定期客がいなくなる。
  • 今までは混雑緩和がテーマ。これはひとりでに緩和してくる。 クルマも減ってくるから道路も走りやすくなる可能性がある。このときに路面電車を中心とした街づくりをどう進めるかが課題。
  • 路面電車はちょっと延ばすのは簡単。が、新しい町に作ったり復活させたりするのはなかなか大変。というのは線路以外に変電所、車両基地の取得という初期投資が大変。
  • 今後はフリーゲージトレインを熊本電鉄(狭軌)から熊本市電(広軌)に乗り入れることも考えられる。今あるインフラを活用すべき。皆さんも東京にやってきて議論や知恵を私のところに持ってきてください。


「路面電車を取り巻く最近の事情」 全軌協専務理事 中尾 正俊 氏

  • 今全軌協傘下には19の路面電車事業者がある。公営5社。民営14社。
  • 全体的には諸制度拡充による支援を待っている状況
  • 全軌協の活動紹介
    1. 集まりは総会と部会とがある。部会は車両部会と土木部会があり別々に開く。
    2. 各地の路面電車シンポジウムに参加。国土交通省や警察にも要望書を提出
      例えば、軌道内車乗り入れ禁止、電車優先信号、広島では広島LRT研の意見を入れて20km化を目標に等。
    3. 日本式低床車を我々も研究中。 私は「LRT=高速路面電車」と定義し言っている。
    4. 電停拡幅や上屋の設置も推進中。
    5. 上屋設置は雨の日は30%乗降が早くなる。低床車を入れると50%早くなる。
    6. 近代化補助の改善。今までの下限1000万円からの補助で足切りだったのが、今後200万円になる予定。
    7. 新車補助を1/2として欲しい。
    8. 延伸についてはインフラ補助がある。これで豊橋駅前が出来た。
    9. 乗換のシームレス化も望みたい。
    10. フリーチケット化への補助を考えて欲しい。今の罰則で3倍ではダメ。欧米式に40倍〜50倍に。加えて検札員の身分保障も要る。こうやって日本式フリーチケット制を実行してみたい。
  • 札幌市交通局:ループ化を計画。公的施設を都心に入れ活性化を計りたい。短期でやりたい
  • 函館市交通局:バス部門を分離して地元の会社へ統合の動き
  • 東急電鉄:世田谷線の改善で全部新車に変えた。低床車でなくホームかさ上げ方式にて
  • 富山地鉄:電車・バス共通回数券化、商店街が乗車のチケット提供
  • 豊橋鉄道:駅前電停にエレベータを新設。伊奈さんの画が教科書に採用された。
  • 阪堺電軌:電車が堺市の「すぐれもの大賞」に選ばれた。大阪市営定期観光バスに阪堺電車に乗るコースができた。
  • 岡山電軌:交通社会実験が行われた。 02/3にボンバルディ製のLRVが入車する。三戸岡氏のデザイン。 東山電停をバスト共用化する。JR乗り入れも実現性が出てきた。
  • 広島電鉄:横川駅電停が平成14年にJR駅前広場に入る。低床車Green Mover は02/3までに9編成になる。 03年度末までにもう3編成入り、計12編成になる。 電車運賃の値下げ社会実験を半年したが02/4まで1年に延長。減収になるがやらざるを得ないと判断。
  • 伊予鉄道:アルナ工機製リトルダンサーを製作中。坊ちゃん列車を10/10より運転開始。Uターンの仕組みを工夫した。
  • 長崎電軌:100円ワンコイン運賃を継続中で長い。100円バスも全国100都市で実施中。但し多くが減収と聞く。
  • 鹿児島市交通局:低床車製作中。 乗客が100.5%になった。
  • 熊本市交通局:路盤のインファンド工法(広電による詳細説明は→「付:「広電の今後の計画について紹介」を参照してください)を来年度から実施。これは線路に釘を使わぬ、低振動、低騒音になる。これでまた日本最初が出来る。健軍からの延伸をしてもらいたい。 


富山県高岡市 万葉線再生報告  高岡市生活環境部 小神(おこう)哲夫氏

  • 私は高岡市生活環境部交通対策課長ですが現在は万葉線経営第三セクター設立準備室長をしております小神と申します。
  • 現在高山市から新湊市までを軌道7.9kmと鉄道4.9kmで結んでいるのが加越能鉄道です。
  • 先年来この線路が存続を巡って両市の長年の懸案となっており、多くの論議を呼んでいましたが、この度正式に万葉線として存続することに決まったことをご報告します。
  • 昨年12月に富山県議会と両市の市議会の了承を得て、「第三セクター方式の新会社で存続と決定した。
  • 本年4月には万葉線株式会社として登記された。
  • 来年4月から新会社による運行を目指して出資や寄付の募集、監督官庁との調整・手続きが行われる。
  • 厳しい経済情勢の中から新会社が立ちゆくためには、行政、経済界、高岡・新湊市民の協力が不可欠である。
  • この存続の陰にはRACDA高岡がイベント電車の運行、フォーラム開催や市民との30回に及ぶ懇談会を持った。また愛する会5000人の会員の応援を得た。これは[街角革命]と言われているものである。


土佐電鉄の電車とまちを愛する会の元気報告 浜田光男氏

  • 高知市で土佐電鉄を愛する会の市民活動ぶりをご報告します。
  • 土電は海外多数の国の電車、古いですがを多数導入し運行をしています。
  • マンガを描いた電車も多いです。
  • 当会は「土佐の交通便覧」作成に協力しました。
  • 平成10年の路面電車シンポを建設省に協力して開いたり、ユニバーサルデザインシンポジウムも実行。
  • 100円電車の推進、商店への電車乗車券提供制度の応援
  • 子供用「電車の乗り方」パンフ製作
  • 電車・バス共通パスポート発行協力
  • 路面電車とバスのマップ「公共交通マップ」を発行した。全市民宅に配布。
  • 他の土電トピックとして本年4月にはJR高知駅に電車が直接乗り入れになった。
    この乗り入れは仮で、平成17年には駅舎建て替えで高架になるはず。
  • アルナ工機より低床車が来年3月までには入荷する。


各都市路面電車愛好団体代表者の現況報告

札幌市電の会
  • 路面電車は次々廃線になり、今は一系統残すのみになった。 平成になって見直し機運が起こり地味な市電に脚光を与えた。
  • 昨年はシンポジウムを開き関心を引いた。
  • 広報を出している
函館のチンチン電車を走らせよう会
  • 当会は代々女性が会長である
  • 復元電車はいから号を中心にして末永く応援してゆく
  • 最近降車ステップを3段から2段に変更したのが現れた
北海道夢れいる倶楽部(函館市)
  • 当会は94年にスタートした会である
  • 2003年には路面電車サミットを引き受けたい
  • 電車にお茶を飲める設備をしたい。「電車に乗れば幸せになる」となりたい。
とよはし市電を愛する会
  • 15名の大勢でやってきました
  • 豊橋駅前は今まで登りエスカレータだけであったが、このたびエレベータが付いた。
  • 市役所の中に「路面電車活性化委員会」ができ、例えば新しい電停を作ろうなどの研究をしている
  • 延長をテストコースにて実験した。
  • 伊奈氏の路面電車の画と本文を教科書に10ページ掲載した
  • 岐阜市、高岡市と連携を深めたい。
岡山RACDA
  • 来年3/15に低床車が入る。このデザインは三戸岡氏がタダで引き受けられたもの。
  • 当会は女性会員が半数を占めている
  • 今年は国会議員などに働きかけ国レベルのロビー活動を始めている。
  • 路面電車の開発を国規模でやり全国の都市にたくさん売りたい
路面電車を考える会(広島市)
  • 当会は93年以来90回の講演、電車まつり等の活動をしている。
  • 当会ワーキンググループ「広島LRT研究会」が本年「バスの超マップ」を発刊した
  • 「広島LRT研究会」がJR横川駅改造案を発表したが、このうち路面バス発祥記念碑が出来ると発表された
  • 広島電鉄は次々と改良計画を実施しており事業者が積極的である。
長崎路面電車の会
  • 長崎の電車を仙台市で保存することになった
路面電車同好会
  • 当会は昭和45年に発足した。当時は路面電車廃止の嵐の中であった。
  • 「路面電車ハンドブック」を2年に1回発行している。最新版を近々発行したい。



第5回路面電車サミット IN 熊本

路面電車サミット宣言

 
路面電車サミット宣言(新世紀の人と街、交通がめざすもの)
路面電車サミット IN 熊本

 私たち全国の路面電車愛好支援団体と電車事業体、また人にやさしいまちづくりと交通について深い関心を持つ市民や組織は、新たなる千年紀の始まりの年に、「路面電車とともに歴史と環境を生かしたまちづくりをめざす」熊本市に集った。私たちは人にやさしいまちづくりと、それを支える交通のあり方について学び、意見を交わした。

 私たちは、今や私たちを取り巻く世界が、悪化する環境、希薄化する人のかかわり合い、高齢・少子化や経済の低迷など、さまざまな面で「豊かで安心できる社会」とは程遠い多くの困難に直面していることを認識する。資源、時間、社会負担などの浪費をいかに減らすかが、今の私たちに求められる課題であると受け止める。一方で、多様な個性、価値観が混在し、互いに刺激し合いながら理解を深め合うことが、社会に活力をもたらし、差別のない健全な未来への架け橋であると信じる。私たちは、そのような社会、都市の実現を求め、ゆえに都市のあり方を左右する交通のあり方も変えなければならないと考える。

 今回をはじめ、これまで各地で開いてきた路面電車サミットでは、公共交通を大事にするまちづくりが、人間も大事にし、社会が直面するさまざまな弊害を抑えることにつながるとの認識を深めてきた。特に路面電車という乗り物は、最も効率的にそうしたまちづくりを実現できる貴重な存在であるとして、その価値を訴えてきた。もちろんそこではバスや徒歩、自転車などといった、人間的なスケールの交通手段も、互いに連携・補完する存在として重視されるべきであるし、より良いまち、より良い社会の近未来に向けて、それらの交通手段が相互に協力できるような仕組み、すなわちLRTが必要であると考える。

 現実にはまだ、さまざまな制約もあるが、私たちはこれまでに培った認識を、それぞれの立場、それぞれの地域で広め、実現に向けて一層努力することを改めて決意する。そして、交通のあり方の変革を通じて、社会や環境への負荷が小さく、しかも人間重視のまちづくりを実現しようとするこの動きを「都市交通新世紀」と名付け、「路面電車サミット IN 熊本」の成果として、広く社会に宣言する。

2001年10月26日

全国路面電車愛好支援団体協議会
札幌市電の会、函館のチンチン電車を走らせよう会、北海道夢れいる倶楽部、
日本路面電車同好会、万葉線を愛する会、とよはし市電を愛する会、
RACDA=路面電車と都市の未来を考える会、路面電車を考える会、
土佐電鉄の電車とまちを愛する会、長崎路面電車の会、都市交通会議
全国路面軌道連絡協議会
札幌市交通局、函館市交通局、東京都交通局、東京急行電鉄、豊橋鉄道、
名古屋鉄道、富山地方鉄道、万葉線株式会社、福井鉄道、京福電気鉄道、
京阪電気鉄道、阪堺電気軌道、岡山電気軌道、広島電鉄、伊予鉄道、土佐電気鉄道、長崎電気軌道、鹿児島市交通局、熊本市交通局




次回、次々会路面電車サミット引き受け宣言

議長:「次回は2003年路面電車サミット開催地は函館市に決まりました。尚特例ですが、その翌年2004年が土佐電鉄創立100周年に当たりますので、次々会は2004年に高知市にて開催すると決定いたしました」



 ここまで読んで頂きご苦労様でした。 とにかく学会的とも言える熊本路面電車サミットも無事終わりましたので、熊本サミットのスナップをお目に掛けます。雰囲気などを想像してください。

路面電車サミット IN 熊本スナップあれこれ

とにかくオシャレなJR熊本駅 9700型低床車とレトロ電車がすれ違う
会場からは熊本城が見通せる シンポは米とテレビ電話で繋がって
サミット会議は壇上から報告 会議を支える鳥飼研究室の人達
歓迎レセプションは国際的なのだ またビンゴゲームにも興じる

'97熊本低床車試乗会とシンポジウム報告