04.11.3 12/4 2日目講演・報告の詳細を追加掲載 |
館主前言: 路面電車サミットは1993年に札幌市にて開催されたのを嚆矢として、以降2年ごとに広島市、岡山市、豊橋市、熊本市と続き、昨年03年には函館市が開催市となっています。次の開催年は05年のはずですが、次回引受者の高知市では土佐電鉄が04年が開業100周年に当たるため特別に連続年開催を認められ、本年10月に高知市にてサミットを開催しました。館主は病気のため出席が叶いませんでしたが、掘切邦生氏他ご参加出演の方から会議の詳細資料を頂戴しましたので、要点を編集UPすることができました。厚く御礼申し上げます。 追加掲載の経緯: 11/3掲載した発言要約は掘切氏の記録に基づく第1日 10/22(金)分の詳細でした。 同氏より第2日 10/23(土)の発言詳細を入手しましたので12/4追加掲載しました。 |
スケデュール | |
●名称と開催期間:全国路面電車サミット in 高知 '04,10/22〜10/24 高知の路面電車は、今年竣工100年目になります。 高齢化の進む都市で、これから路面電車が都市交通手段として見直されていきましょう。 ■ 10/22(金) かるぽーと大ホール、13:00〜16:30 全国路面電車サミット 開幕宣言 第6回 ユニバーサルデザイン・シンポジウム、セッション1 都市の基盤としての路面電車の意義は?
■ 10/23(土) 土電 電車パレード 9:30〜11:30 かるぽーと小ホール12:30〜17:00 事例の紹介と提言 全国路面電車活性化の動き
■10/24(日) 旭ロイヤルホテル 9:00〜12:30 第6回 ユニバーサルデザイン・シンポジウム、セッション2 路面電車システム(車両、軌道等)を安価につくるには、どうしたら?
主催者: 「土佐電鉄の電車とまちを愛する会」のホームページ |
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発表事例のレポート
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講演:「都市の基盤としての路面電車」 国土交通省 道路経済調査室 深澤 淳志 室長 |
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講演内容要約 by 出席者 堀切邦生氏 (nifty鉄道フォーラム[まちづくり]シスオペ) 深澤氏は幼年時代に巣鴨に住み、近くを走る都電荒川線に「ひとの暖かみ」を感じたことを挙げ、欧米の動きなども鑑みて、道路行政としても積極的に応援していきたい、との意気込みをまず語りました。 まず第一段階として、これまで道路局がまちづくりのお手伝いとして行ってきた事業、 点・線・面・空間への支援 点…交通結節点改良 柏駅・新宿駅の事例 線…連続立体交差事業 環状8号線井荻付近の事例 面…区画整理・再開発事業 草加・八日市駅前の事例 空間…魅力ある都市空間「横丁からの都市再生」 京都・東京表参道の事例 (いずれも道路特定財源を使用) 以上を挙げた上で、国土交通省における公共交通支援策の拡充の歴史を振り返りました。道路交通の円滑化を狙った事業が多かったように思えますが、しかし車社会進展に伴う弊害が顕在化してきたことから、「道路を供給」から「公共交通機関へのシフト促進など」へ、交通需要マネジメント(交通需要をコントロールする)を重視した施策に転換しつつあるとの解説に移りました。それについてバス交通についての支援施策や、モノレール新設についての支援についても語られました。例えば大阪モノレール整備においては総事業費約1,660億円のうち920億円が道路特会補助事業費である、などの実例が示されています。 第二段階として、道路行政が路面電車にどのような支援をしているのか?というテーマで、まず路面電車についてその現状とメリットが説明されます。 路面電車の特徴 ・交通渋滞によって12兆円の損失→渋滞解消のひとつの解決策として期待。 ・中心市街地活性化へ役立つ。 ・環境にやさしい交通機関としての期待。 ・地下鉄などに比較してシームレス・バリアフリー。高齢化社会にマッチした乗り物である。 欧米では1978年以降70都市で導入、今は全世界でおよそ300都市で運行していること、フランス・ストラスブールの「立案から5年で実現」した事例を挙げた後、これまで整備してきた施策として「道路構造例の改正」や「走行空間改築」などの各施策、そして現在概算要求中の「LRT総合整備事業」について簡単に触れました。この「LRT総合整備事業」については翌日講演された国土交通省鉄道局の川勝敏弘氏によって詳しく解説がなされます。 また道路局が支援を行った路面電車関連の改良事業として広電横川駅ターミナル整備や岡山・広島のバリアフリー対応電停工事、また土佐電鉄では低床車ハートラムのほか、で行われた芝生軌道化工事についてもその効果がサーモグラフィーによって示されるなど、実のある改良工事の実例として取り上げられています。 まとめとして、今後日本にLRTが普及するために大事なこととして、 ・地域デザインの確立(どのような街を目指すのか) ・公共交通の選択(多様な支援策の活用) ・自動車と公共交通との連携・分担 ・路面電車に求める役割 ・地域社会の合意形成 以上を挙げ、聴衆に対しては、LRTは期待できる乗り物であり、皆さんが全国でしている先進的な取り組みをいろいろなところで情報発信することを期待するとともに、その継続がLRT発展に繋がるとし、人の触れ合う、個性ある地域づくりのために「地域が中心になった」まちづくりが必要であることから、国としても精一杯応援したい、と締めくくりました。 |
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報告:「土電の利用実態から見た路面電車の意義」 高知工科大学 寺部 慎太郎 助教授 |
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報告内容要約 by掘切邦生 土佐電気鉄道における輸送量の実態を、寺部研究所の学生を動員して調査した結果の報告がその主な内容でした。 高知都市圏は高知市(人口33万人)を中心とした3市8町2村で人口は約53万人、続けて交通手段構成比を表すパーソントリップ調査で1997年現在の土電沿線の状況が解説されましたが、全国的な傾向と同様に、自動車および二輪車の分担率が高いことが示されました。鉄道ファン2004年6月(通巻518)号の服部重敬氏の連載「都市交通新世紀」で土佐電気鉄道が取り上げられており、全体的なパーソントリップ調査も出ていますので、こちらも参照戴ければ、と思いますが、通勤目的でも自動車・二輪車の比率は大きく、都市圏全体で路面電車は3.8%・バスは4.6%・自動車は44.8%・二輪車は40.0%となっています。 今回の研究の背景・目的として「利用者の減少→サービスレベルの相対的低下」という悪循環を断ち切るために、利用者ニーズに適応した路面電車利用促進策の検討というのがありましたが、これは寺部氏自身も指摘したように、この報告では調査結果の披露に終始してしまったところがあります。 しかしながら、利用者の動向を見ることができた点は非常に興味深いものと感じました。 調査は以下の手順で行われました。 平日調査:2003年12月4日(木)天候:晴れ 調査対象:始発から終電まで 配布方法:整理券として乗車時に配布 降車時に回収 調査項目:調査員が乗降停留所・運賃・種別・性別等を記録 乗客は年齢・職業・利用目的を回答 土日調査:2003年12月5・6日(土・日)天候:晴れ 調査対象:始発から終電まで 配布方法:車内配布郵送回収による調査 アンケート用紙を乗車時に配布 解答欄を切り取りハガキとして郵送回収 調査項目:乗客が乗降停留所・運賃・年齢・職業・利用目的などをを回答 平日は悉皆(しっかい)調査でもあり、回収率は72.3%に上りました。また土日調査の回収率はやはり中年世代以上からの回収が多かったようです。これらの誤差を修正のうえでアンケートを分析しています。 簡単に紹介すると、利用実績からすると女性の利用が男性より目立つようで、いずれも7割以上が女性のようです。また50歳以上の利用が全体の3割に上るなど、高齢化社会の足としての路面電車の役割も浮き彫りになっていることが見えます。 ほかに時間別の行動パターンや乗車区間などの詳細なデータももたらされたほか、グループインタビューの結果なども報告され、最後に高知における路面電車の課題として以下を挙げています。 ・高齢化社会への対応遅れ −低床車両の導入、乗降口の拡幅 ・自動車に対する相対的サービスレベルの低下 −運賃の割安感、市内区間の速達性 −定期券利用の促進 プリペイドカードの導入による乗車運賃支払いの時間短縮 ・路面電車と路線バスの不明確な役割分担 −路面電車:市内中心部・バス:端末交通 ・自動車交通との連携不足 −P&R施設の拡充、マーケティング |
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パネルディスカッション1 |
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ディスカッション内容要約 by 掘切邦生 パネリスト:岡崎誠也(高知市長) 谷ひろ子(焼菓子屋まみゆと店主) 宇賀 久(MLシルバー高知会員) 福井 照(衆議院議員) 深澤敦志(国土交通省道路局企画課) 寺部慎太郎(高知工科大学助教授) コーディネーター:谷本 信(高知県政策総合研究所理事・研究部長) ディスカッションは、まずパネリストが一言ずつ路面電車に関する意見を述べました 岡崎氏 100年間高知の足として走ってきたのは意義あること。 現在640万人程度が利用。 ピークは昭和37年、3039万人が利用。 路面電車はクリーン・スローライフでゆとりをもたらしてくれる。 しかしラッシュ時に最も速いのは電車である。 高齢者に対して有効な交通である。 谷氏 はりまや町生まれ育ち→電車を見て育つ 軌道がある・オンタイムであるから「子供にも安心できる乗り物」。 自動車を使う世代以外にはありがたい乗り物。 「楽しみながら乗る電車」→電車を身近に感じられるチャンスか? アテネの主役が路面電車→高知市民としてうれしい。 宇賀氏 車の運転をやめる高齢者が今後増えてくるのでは? 行政は財政が厳しくて補助金を見直し →路面電車がなくなってしまうのでは?という危惧。 バス代替を提案する人がいる。バスではダメか? ・電車が車の流れをコントロールしているように見える ・はりまや橋を中心にして分かりやすいネットワーク ・ひとのコミュニケーション ・路面電車が走る都市は格調が高い サービスへの提言「ラクに使えるサービス」 非接触式ICカード・チケットキャンセラーシステムは便利 福井氏 ユニバーサルデザインはもはや常識になっている→皆さんの努力の賜物。 文明評論から見て、時代の意識…環境の象徴・人間尊厳の象徴として路面電車 →ビジネスライクに考えるのは禁物では? どういう市民運動を展開するのか?行政や企業・NPOがどのような役割を果たしていくか?を考えたい。 深澤氏 「愛される」存在があるのは貴重 寺部氏 5年から10年後の自動車の技術を考えると… 燃料電池車の普及→「環境にやさしい」とはいえなくなる。 高齢者でも運転できるシステムの開発→「高齢者のため」とはいえなくなる。 その時に路面電車に如何に付加価値を見出すか? 以上のような意見が述べられた後、本格的な討議に移りました。 内容としては路面電車を今後「高知」の中で如何に活用していくのか?というのが中心になったように思います。岡崎市長からはまちと電車をひとつのイベントに繋げていく努力を訴えたほか、寺部氏からは学生に「電車が無料になったら乗るか?」の問いに「乗らない」と答えた、というエピソードを挙げ、まずは利用している人にもっと乗ってもらう努力を強調、福井氏からはいくつかの車両メーカーが存続の危機に瀕していることから、道路行政の中で車両供給システムを確立することを希望するなどの意見が出され、会場からも意見が出されました。特に「バスアンドライド」については寺部氏によればヨーロッパ並みに「電車とバスが同じホームに入ってくるシステム」を高知県で検討したものの、様々な制約に阻まれて実行に移せなかったことを例に挙げ、「欧米でできることが日本でできないのがおかしい、もっと市民が声を上げるべき」と答えました。 これらの意見を踏まえて、谷本氏は以下のようにまとめました。 ・自動車が使える場合ばかりではない。自動車前提の社会になるのは困る →使えるのは路面電車 ・軌道があるところはまちとして・交通機関として分かりやすい。機能というより「まちの分かりやすさ・住みやすい都市」のランドマークになる。 ・市民に愛されるものがあることは資源である。 ・景観を磨く・ランドマークとして磨いていく。 ・システムをリフレッシュし、同時に古いものを残していく努力が必要。 いろいろな結論を導くことが可能と思われますが、まず高知の路面電車が(必ずしも全てではないが)市民に愛される存在であること、特に高知の場合は路線がはりまや橋を中心とした十字型になっていることから、まちのランドマークとしての機能も果たしていること、それを磨いていくことでさらに高知の「顔」としての存在を見出すことができるのではないか?といったものが結論だったといえるかもしれません。 |
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外国電車パレード |
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パレードの様子 by 掘切邦生 2日目の午前のイベントは土佐電鉄が誇る「外国電車」の試乗会です。参加者は思い思いに「外国電車」を楽しみました。 すでに説明は要らないと思いますが、「世界の電車が走る街」計画としてヨーロッパ各国から車両を買い入れ、実際に運行できるように大改造して使用しているもので、高知の路面電車の大きな自慢の一つになっているようです。現在は5編成の外国電車が活躍しています。 本来ならもっと多くの両数が活躍する予定でしたが、現在はこの5編成で打ち止めになっています。しかしながら他都市には見られない魅力として挙げられるべき存在といえるでしょう。 外国電車は桟橋車庫→はりまや橋→枡形→はりまや橋→知寄町→はりまや橋→桟橋車庫の行程で運行され、9:42に最初のオスロ電車が出庫、以後9:53に最後となるシュツットガルト電車が出庫するまで5編成が順次営業列車の合間を縫って運行、順次上の行程を走って入庫しました。 いずれも個性派揃いでどの電車に乗ろうかと迷ってしまうのですが、私は第一弾でもあったシュツットガルト市電に乗車、その乗り心地を楽しみました。 一時期は土佐電鉄でも「世界の電車」を積極的に売り込み、後免町終点のそばにある「はらたいらと世界のオルゴールの館」とをセットにしたツアーも行っていたようですが、最近はそれがやや活かしきれていないようです。高知県の観光需要にもよるのでしょうが、しかしながらこの大きな武器はもっと有効に活用できないか…と望むところです。 私のような「趣味者」ではない人にとっても、かなりインパクトのある存在ではないでしょうか? |
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[12/4 講演要約を追加掲載] |
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講演内容要約 by 掘切邦生 午後からは「サミット本会議」が前日と同じ「かるぽーと」にて行われました(館内の別のホールを使用)。2日目のこの本会議が最もサミットらしい内容だったかな、と思います。 川勝氏は予め配布された資料をもとに、まずは現在の国内路面電車の現状などについての解説、その後LRT整備促進による地域再生へのメリットなどを説明し、路面電車とLRTとの違いとして車両収容人員の増加や走行空間・軌道構造、また他モードとの連携・都市との一体性について解説が行われました。 国土交通省としてこれまでLRTについてどのような取り組みをしているか?、という説明では 走行空間改築事業 都市再生事業(電停シェルター・センターポールなど) 公共交通移動円滑化(低床式車両導入への支援) 国産メーカーによる低床式台車開発への支援 道路構造令の改正 以上の支援策をとってきたものの、真の意味でLRTと呼べる存在が出てこないことから、今後は「新しい交通システムという広い観点で制度の拡充を模索」するとし、来年度概算要求に盛り込まれたLRTプロジェクトについての解説が行われました。 これまでのここでの発言などでもそのプロジェクトの漠然とした印象が報じられてきましたが、ここで改めてどういうものなのか?を知ることのできるよい機会になりました。これについては別発言で説明します。 最後に川勝氏は「LRT普及を阻む課題」として 合意形成 路面電車に対する思い入れの世代間ギャップ 住んでいる場所によっての認識の差 現状の補助体制ではインセンティブが働きにくい 以上の点を挙げ、その解決策として、 限られた走行空間配分のコンセンサス(自動車利用者や沿道などの理解を含め) 学校教育・観光教育・出前講座などによる啓蒙活動への取り組み 地域コミュニティーの維持への取り組み 行政だけの動きでは限界→NPOなど市民が直接取り組む 以上を挙げて今後もLRT促進へ努力していく、と締めていました。 |
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講演内容要約 by 掘切邦生 前発言で川勝氏から説明のあった「LRTプロジェクトおよび概算要求」についての説明です。 LRTプロジェクト 都市・地域整備局、道路局、鉄道局の連携のもと、LRTの整備に対して総合的に支援 (1)LRTプロジェクト推進協議会の設置 事業者・自治体・有識者およびNPO・国(運輸局・整備局)・公安委員会 ↓ (2)合意形成と計画策定 ↓ (3)計画について一体的・総合的に支援 ↓ 人と環境にやさしい都市基盤設備と都市交通体系の構築 利用しやすく高質な公共交通ネットワーク 生き生きとした魅力ある都市の再生 (3)の総合的支援のメニューとして、 1:ハード整備に対する支援 LRT総合整備事業の創設(新規) 車両など事業者に対する補助制度の創設 都市内交通政策上の課題解決に効果のあるものに対し補助 路面・路盤などの整備 道路管理者による走行空間の整備など 2:速達性向上・輸送力増強 最高速度制限の見直し検討 運行管理システム改善・編成長制限見直し 3:利便性の向上 ICカード導入・交通結節点整備 鉄道線への直通運転・路側帯軌道設置による歩道等との一体整備 4:まちづくりとの連携 LRTと関連した駅周辺・中心市街地活性化事業など 5:利用促進 P&R駐車場やフィーダーバスの整備など トランジットモールなどの社会実験 このようなものを挙げており、これを「一体的に」支援する、としている点が注目されるところかと思います。 さらに概算要求の概要についても解説が行われました。 LRT総合整備事業については 1:LRT システム整備費補助(鉄道局・新規) 低床式車両その他LRTシステムの整備に不可欠な施設に対して1/3(これまで1/4を補助する(→鉄軌道事業者) これまで低床式車両は「バリアフリーの観点」で補助がなされていたものの、今後は「システムとしての観点」での補助に代わることになります。 また「システムの整備に不可欠な施設」とは、変電所や車庫・レールなど、要するにインフラにあたる部分のほぼ全てが補助の対象になる、という点にも注目かと思います。 2:路面電車走行空間改築事業(道路局および都市・地域整備局) LRTの走行空間の整備に対して支援(→道路管理者) 3:都市再生交通拠点整備事業(都市・地域整備局) これまで停留所シェルターなどに限られていたものの、今後は都市内交通政策上の課題の改善等に効果のあるものに対して、限度額方式により補助(→地方公共団体等) つまり「道路整備と比較して有効と認められる場合に使途を限らずに適用する」とのことで、非常に画期的な提案ではないかと思われます。 補助対象は現行の赤字路線・黒字路線に限らない、としており、現在の想定としてJR富山港線の路面電車化への適用を考えているようです。 内容を聞いた限りでは非常に画期的で、期待が持てるものではないか、と思われますが、しかしながら概算がそのまま通るかどうかはやや厳しい状況である、という補足もありました。またこの後に講演した全国路面電車ネットワークの岡会長(RACDA会長)は、インフラ整備は徐々に環境が整っているものの、完成後の運営面についてのプロセスについても考えていくべき、との意見も出されていました。 |
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[12/4 講演要約を追加掲載] 特別講演 逢沢 一郎 外務副大臣(LRT議連) |
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講演内容要約 by 掘切邦生 LRT推進議員連盟が超党派で結成され、活動を続けていますが、その議長を務められている逢沢外務副大臣が急遽路面電車サミットに足を運ぶことが決まり、壇上で講演をされました。 何しろ半年前は「時の人」でもあっただけに、注目は高かったようで…。 逢沢氏は、まず「LRT議連」についてその活動内容を説明し、未来に向けてのまちづくりのためにLRTが必要であり、交通渋滞の解消は政治の要請であるとの持論を展開、世間の動きではロシア下院議決の成立で「京都議定書」の批准が来年には現実的になることから、LRTが環境問題解決へのツールとして国民の理解を得うるものであり、少子高齢化・財政運営など規律を保ちながら「持続可能な」まちづくりをめざしていく、と述べられました。 また、事業体の経営についても事業として持続的でなくてはならないわけで、その確保も大事である。「公共性」「社会性」を取り込みながら、最終的に財政を投入することも理屈面・論理面での説得性を持つことが今後の大きな課題であり、「国民全体」の意見合成をなしていきたい、としていました。 |
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[12/4 講演要約を追加掲載] |
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講演内容要約 by 掘切邦生 逢沢副大臣の講演もあったことからか、短いものになりました。サミットに先立つ19日火曜日には議連総会があり、先の国土交通省の概算要求のほか、LRT敷設に伴う起債を認めるべく進めていること、また環境省からも総会出席者があり、今後は「環境教育」の面でも底辺を広げるべきであることを表明。 また昨年立ち上げられた「全国路面電車ネットワーク」についても22日に行われた全国路面電車愛好支援団体協議会の役員会において参加が認められたことが発表されました。なお同協議会には堺のチンチン電車を愛する会の参加も認められています。 |
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[12/4 講演要約を追加掲載] 路面電車の新設・延伸に向けて〜「どうしてできないLRT」土木学会関西支部 本田 豊 氏 講師は図例(PowerPoint)45枚を用意し説明されましたが、ここはさわりだけ紹介。 |
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(本田氏PowerPointの全文はこちら[PDF]) |
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講演内容要約 by掘切邦生 本田氏は土木学会関西支部の主催によって服部重敬・岡将男両氏とともに「どうしてできない!LRT」というシンポジウムを開いていることはご存じかと思いますが、その議論の結果を踏まえての報告、という形になりました。 報告はパワーポイントを用いて行われ、まずはご自身とLRTとの関係およびFCCサロンの説明から入り、国内および海外のLRTの動向を説明した上で、本題の「どうしてできない!LRT」へと続きました。 地域別の問題点として ・合意形成…宇都宮市・岡山市・JR吉備線 ・導入区間の確保…江東区・岡山市・金沢市・長崎市 ・採算性・財源…江東区・尼崎市・金沢市 ・バスとの比較・金沢市・宇都宮市 いずれも住民に対し、LRT導入とともにライフスタイルをどのように変えていくのか?を説明しきれていない点を挙げていました。 ほかの問題点として、 ・関係者の勉強不足 ・行政サイドの問題点 ・合意形成の問題点 があります。シンポジウムでは岡氏が参加していたこともあって、岡山の事例がより多く報告されていたようです。 LRTを導入するための問題解決の糸口となるものに、 「合意形成」 「財源・制度」 「組織・人材」 以上を挙げていました。特に最後の「組織・人材」については、専従の交通政策担当者がいないことを問題点とし、この理由として国が権限も財源も持っている現状では交通政策の意識が薄すぎる、としています。 それらの問題点を踏まえて、「LRT導入のために何が必要か」という疑問については、 ・国に求められること 「都市再生ビジョン」の推進…経済政策ではなく、持続可能な都市再生の実現 ・地方に求められること 交通専門家の育成(「道路屋」に限らない専門家) 自治体から独立した交通計画機構の設立 地方においては短期的に「公共交通およびLRTについて、市民に分かりやすいPRをする粘り強い努力」が必要とし、それによってLRTを身近なものとして根付かせること、長期的に「交通基本法に基づいた地域交通総合計画の策定」「民間任せだった公共交通を含めた都市の総合的な交通政策を広域連携によって地方が責任を持ってやること」が必要である、としています。 LRTについての説明においては ・LRTは「路面電車ではない」 ・LRTは「都市再構築のツール」 ・LRTを導入するためのはっきりとした都市ビジョンが必要 であることを挙げ、欧米などの事例から、強い政治的な意志(首長の決断)と時間的な要素(ストラスブールは計画立案から建設開始まで15年経過している)、また公共交通は儲からないという認識の浸透も必要、としています。 また、「全国路面電車ネットワーク」をはじめとした市民団体への要望へも触れていました。 |
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[12/4 講演要約を追加掲載] |
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講演内容要約 by 掘切邦生 土佐電気鉄道の文珠通−後免町間では軌道の北側を道路が平行しており、後免町方面へ向かう電車は車道上から電車に乗降することになります。岐阜でも見られる「ノーガード電停」はほかの路線も含めて土電では31箇所に上りますが、当然ながら自動車との干渉、つまり事故などの危険性が高く、高知県土木課では来年度にかけて12箇所で対策工事を行う予定としています。 これまで行ってきたノーガード電停対策は ・軌道の移動による島状(安全地帯)電停の設置 文珠通・高須・県立美術館通・西高須 ・車線位置の変更による島状電停の設置 鹿児・宇治団地前・八代通・枝川 ・道路改良による島状電停の設置 一条橋・清和学園前・領石通 以上の対策が採られてきましたが、今後改良工事を行っていく区間ではいずれの方法も採れないことから、 ・複線軌道を電停部分で単線化(生み出されたスペースに電停を新設) ・電車の乗降口を道路と反対側につけなおす(従来からある島状電停を使用) の対策が考えられたものの、費用の問題から困難と判断、現状の停留場を殆ど変えずに改良されることになったとのことです。 その対策とは、 (1)電車の接近を検知するセンサーの設置 (2)ノーガード電停を照らす調光式照明の設置 (3)自動車に対する警告表示板の設置 (4)自発光鋲設置による電停の視認性向上 これに先立ってノーガード電停における利用者動向アンケートの結果なども公表されましたが、現状において「電停付近で待って電車が見えてから電停に移動」する乗客が全体の76%にも上っており、ここから「電車が来て、乗客扱い中のみの安全の確保」に重きを置いたのが今回の対策、といえそうな気もします。 また同様のアンケート調査において「ヒヤリ体験」では「待機時」よりむしろ「降車時」のほうが体験が多い、という結果もあり、降車客がいることを平行車道を走るクルマに如何に伝えるか?ということが大きな課題のひとつといえそうです。 対策では、(1)によって電車の接近を検知すると(2)(3)が稼動し、まず調光式照明の照度をアップして電停を照らし出すとともに、警告表示板によってクルマへ注意を促すものとなっています。 モデルとして東新木電停で対策工事が施工されることになっており、その結果を踏まえてほかの電停についても順次改良していく考えのようです。 「抜本的対策」ではないところが歯がゆい気もしますが、土地的な制約もある中で考え出された対策がどれだけの評価を得るのか、注目したいところです。 後半は朝倉駅前交差点における改良工事についての説明で、JR朝倉駅前の交差点を土電が変則的に横切っていることから、渋滞および電車のスムーズな運行の阻害になっている、として交差点の停止線変更や電車優先信号の新設などの改良を予定していて、そのコンピューターシミュレーションなども公開されました。 |
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[12/4 報告要約を追加掲載] 報告:「NPO高知市民会議の動き」NPO高知市民会議公共交通部会 土居 貴之 氏 |
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報告内容要約 by 掘切邦生 高知市民会議公共交通部会では「人と乗り物を近づけるイベントの実施」「探検イベント」などを企画して参加者に交通を利用させる機会を与える働きかけをしている、との発表がありました。具体的に電車・バス1日乗車券を使ってのスタンプラリーなどを小学生相手に企画することで、小学生に積極的に公共交通に触れてもらう機会を作っていることで、小さな取り組みではあるものの、今後も乗り物を体験する試みを続けて行きたいとの表明がありました。 |
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[12/4 報告要約を追加掲載] 報告:「岐阜の路面電車存廃の動き」岐阜未来研究団 堀 達哉 氏 |
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報告内容要約 by 掘切邦生 岐阜については今年に入ってからいろいろな動きがありつつも、名鉄としては来年3月いっぱいでの撤退を決定するなど、その状況はあまり芳しくないといえそうです。その中で「岐阜未来研究団」が存続への道を探る活動を行ってきたことはよくご存じと思います。 発表は 1.岐阜の路面電車の概要 2.存廃問題と存続運動の経緯 3.住民、行政、経済界の声 4.再生運動と内外の動き 5.再生計画の概要 6.お願い とあり、岐阜の現状はどうなのか?またこれまで行ってきた活動などについての発表が行われました。 ターミナルであるJR岐阜駅の現在の利用者数は1日あたり56,047名で、内訳は以下の通り。 徒歩流動:24,321名 バス流動:10,936名 自転車 バイク:10,009名 自家用車: 5,499名 タクシー: 2,423名 路面電車: 203名 ※新岐阜駅からの徒歩流動:2,656名 路面電車は新岐阜駅前−岐阜駅前間の本数が減少するなどもあって、利用者数が少ないのは当然ながらも、もし岐阜駅前までのアクセスが良好であれば、もっと利用者数を延ばしていたのでは?と思える気がします。路面電車が名鉄所有だったことでJRとの対抗上、ということもあったのでしょうが、大きな市場をみすみす逃していたことにもなります。 コネックス参入表明などの最近の動きを説明した後、路面電車存続についての「絶えない誤解」が説明されました。 ・年間18億円の赤字 ・大企業(名鉄)がやってダメなものはどこがやってもダメ ・昼間は誰も使っていない ・利用者が少ないから廃止は仕方がない ・郊外市町住民が使っているだけ(岐阜市は関係ない) ・これからはクルマ社会 ・バスで十分代替可能では? ・産廃処理に金が要るから電車に税金は使えない ・道路はみんなが使えるが電車は一部の利用者だけ 岐阜にとって不幸だったのはクルマ社会のみならず産廃問題が岐阜市に重くのしかかっていることで、そちらで手一杯のところに財政出動ができにくい、という状況もあったように思えます。また「郊外市町住民が使っている」については利用者の約4割が実は岐阜市民である、ということで大いなる誤解といえます。 岐阜市による電車存続断念を受けて、地元では「みのルネッサンス鉄道」計画が持ち上がりましたが、しかしコネックスの参入表明を受けたことで、現在活動は休止しているようです。 |
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[12/4 報告要約を追加掲載] |
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報告内容要約 by 掘切邦生 出席者全員に41ページにもなる「第3回長崎の路面電車アンケート結果報告書」が配布され、それに沿っての解説が行われました。 アンケートは2004年6月1日から30日までの間、長崎西洋館などで受け付けたほか、6日日曜日(10:00から17:00まで)には低床車3000形車内(27日も実施)および長崎駅前電停において乗客からアンケートを回収する方法で、全てを合わせて753枚を回収したとのことです。 詳細については省略しますが、「長崎の路面電車への要望」についての記入を漏らさずに掲載してあるところから、乗客が長崎の路面電車に対してどのような感想を持っているのか?どのような要望があるのか?が細かく分かるのが面白いところです。 6年ぶりのアンケート調査になり、今回は低床車3000形が導入されたことからの実施にもなったようですが、前書きにもあるように、このアンケートの「声」を今後の長崎と全国の路面電車が走り続ける為に生かされることを期待したいところです。 |
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[12/4 報告要約を追加掲載] |
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報告内容要約 by 掘切邦生 路面電車サミット主催の中核となっている「全国路面電車愛好支援団体」は札幌から熊本まで、各地に拠点を置いた各団体が活動を行っていますが、その活動について代表者が内容発表を行いました。 この時に富山から参加されていた富山ライトレール株式会社の大場経営企画課長が急遽壇上に上がって一言述べることになり、久々の新設LRTになることもあって、この時が最も盛り上がったように思います。翌日の新聞報道でもこの大場氏の講演を取り上げるところも見られました。 以上で2日目の日程が終了、各自思い思いに高知の夜を過ごしたようです。 |
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「都市交通のユニバーサルデザインをめざして」 広島電鉄(株) 常務取締役 中尾 正俊 氏 講師は図例32枚を用意し講演されましたが、ここでは5枚のみご紹介します |
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追加掲載↓(12/4):「国産低床車両(広島電鉄Green Mover max)の開発状況」 「運転台部分」「付随台車車体」「電動台車」等の詳細図は 「広島電鉄 新低床車グリーンムーバー max 導入発表」ページををご覧下さい |
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路面電車サミット宣言 全国から路面電車に深いかかわりを持つ諸団体、諸企業および行政関係の方々が、路面電車が走り始めて100周年を迎える高知市に集い、3日間のサミットを開催しました。 路面電車を活かしたまちづくりについて熱心な討議を重ねる中で、次のとおり宣言します。
2004(平成16)年10月24日 第7回全国路面電車サミット2004in高知 |
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次回路面電車サミット引受け都市は 長崎市です |
サミットの風景 | |||
Photo:掘切邦生氏 | |||
パネルディスカッション | 急遽参加の逢沢外務大臣 (LRT推進連盟議長) |
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参加者でいっぱいになった会場 | 桟橋車庫でパレード出発準備中の外国電車 | ||
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ウエルカムパーティでの鏡割り | ウエルカムパーティでのよさこい踊り | ||
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サミットに際し9両の電車が全面に歓迎コメントを掲示 |
第3回岡山サミットで制定された「路面電車の日」ロゴ |