路面電車を考える会例会 講演録34

    「 路面電車ルネッサンス 
      −LRTによるまちづくり− 」
 

    宇都宮浄人 (うつのみや・きよひと) 

06.12.13
講演日時:2006年11月25日 4:30p.m.〜6:30p.m.
会場:広島市市民交流プラザ

館主前言:
 かねて氏の著書を通じて、欧米の路面電車では国・地方の制度がわが国と根本的に異なることを啓発されていました。このたび当地広島市にて、氏自ら所説の講演を頂いたが、やはり国民性、制度についての大きな差異を知りました。しかし、わが国でもLRT充実について近年種々の新制度が行われている状況をも客観的に知り燭光を得ることができました。


宇都宮浄人氏略歴
1960年 兵庫県西宮市生まれ
1984年 京都大学経済学部卒業
  〃   日本銀行に勤務


宇都宮氏講演要旨

 (挿入作図は宇都宮氏提供)


●世界のLRT・路面電車
この30年間で世界のLRT・路面電車の新設都市は100を越えた
(注)06年の数値101の都市数は見込みである

●非効率な自動車交通
自動車交通と鉄道では環境に対する影響に圧倒的な差

●路面電車で街はどう変わるのか

●新しい路面電車は乗客が増加
減っている都市も多いが、それよりも増えている都市がもっと多い

●富山ライトレール(2006年4月開業)
JR富山駅北通り LRTは単線で建設

●富山ライトレールの乗客数の変化

●路面電車で街はどう変わるのか

     トランジットモール(独・カッセル市)
日本ではトヨタの街など自動車会社に遠慮があるが、ドイツのベンツの街シュツットガルトにはLRT・鉄道と全部揃っている。 海外もLRT化を苦労してやっているのだ。

●路面電車は街の「装置」
アメリカのポートランドのケース。fareless zone が設けられている

●街の装置として必要なもの

●万葉線の負担額
以前に路面電車廃止の話が出たとき、国立高岡短期大学の武山先生が、資料を作って市民に説いてまわったのが成果を生んだ。

●公共交通に対する公的補助
 (海外主要都市:1999/2000)
補助率はオペレーションコストに対する補助率

●海外の路面電車政策の哲学
世界、特に独・英は財政の理由から徐々に絞り込む傾向がある。それでも、苦しいなりに続々建設を進めているのが現実。

          PFIで建設された路面電車
       細い道路なので路面電車を単線で敷設している

●日本の新たな動き
富山ライトテールは朝のラッシュ時7時台と8時台に後方降車方式(信用乗車)を試行した。不正乗車は極小とのこと。時間短縮効果も後日正式に発表されるはず。続報予定

◎ある外国記事:「岐阜市の路面電車廃止」の報を聞いて…「日本は世界の歴史に反しているのではないか?」 これは路面電車が街の装置として稼働しており、公的補助は当然との思想があるヨーロッパ人にとって日本の交通政策に対する率直な疑問ないし揶揄ではないか。


館主感想:
@気が付くのは欧米では交通権という思想が確立しているようで、交通弱者やエコ環境維持の面から公の支援が当然のようで、わが国との思想の越えがたいギャップを感じた。
A話題の富山ライトレールが後部信用下車(=信用乗車)を試行した情報は初めて聞いた。これは日本で初めての歴史的を作った快挙ではないだろうか?


   宇都宮浄人氏著作紹介:「路面電車ルネッサンス」 (2003年11月当館参考文献ページに紹介)