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#16

16


日本 全チンチン電車の一日旅

2004.6.16

遠 森 慶 著


各地の路面電車に乗りに行くのも良いが、少しは近辺も探索してみては

館主も人後に落ちず旅行機会があれば日本各地の路面電車に乗るよう努めています。「あの市の電車も乗った。この町の電車にも乗った」と数えて満足している趣も正直なところあります。が、思い直すと電車ファンというものはとかく乗車が目的になってしまい、路面電車を支える周辺の町をぶらつく、観察するという楽しい経験とを見逃しているきらいは無いだろうかというのが読後感。

この本の著者は鉄道旅行をこよなく愛すルポライター。本書の特長は各地の路面電車を紹介するのに手書きの案内マップとお奨めスポットとをイラストでの表現するのが重点になっている。おかげで街の特長を直感的に理解でき、「行くならそちらの探訪もぜひ試みたいな」と旅心を誘うシカケになっている。 見て、読むだけでも楽しい本。

路面電車関連書物というと正攻法の図書が多いが、路面電車探訪の旅の機会に携え、参考にしながら街を探索するのも有益。 読むなら、イラストを先に眺め読んでから本文を読む順序の方が楽しくて理解も早いかも知れない。 路面電車実地探索派へのお奨め本。
目次
カラー口絵
路面電車分布図
本文
  • 札幌・札幌市電 北の大都市に唯一残った緑の電車
  • 函舘・函舘市電 海峡の街の愛嬌者「函舘ハイカラ電車」
  • 東京・東京都電 江戸情緒を乗せて走る庶民派感覚の現代っ子
  • 東京・東急電鉄 生まれ変わった「玉電」の残党路線
  • 湘南・江ノ島電鉄 創業一世紀!魅力あふれるレトロ電車
  • 豊橋・豊橋鉄道 クルマ社会の街で善戦する小さな熱血漢
  • 岐阜・名古屋鉄道 大通りも田舎みちも走れる芸達者
  • 滋賀・京阪電鉄 日本初! 路上を走るサブウエイ
  • 京都・京福電鉄 古都洛西のみやびを演じる立て役者
  • 大阪・阪堺電軌 下町の声援をうけてがんばる人情電車
  • 富山・富山地方鉄道 立山連峰をのぞんで走る北国の足
  • 高岡・万葉線  活性化の夢をかけた第三セクター
  • 福井・福井鉄道 急行もある越前平野のインターバーン
  • 岡山・岡山電軌 創意工夫のミニ路線、新顔は「MOMO」
  • 広島・広島電鉄 最大・最先端の路面電車ネットワーク

  • 松山・伊予鉄道 路面SL「坊ちゃん列車」は温泉客の人気者
  • 高知・土佐電鉄 南国の街にとけこむご近所電車
  • 北九州・筑豊電鉄 時代の変遷を乗りこえて走る高速郊外ライン
  • 長崎・長崎電軌 極彩色のエキゾチック・シティを縦横無尽
  • 熊本・熊本市電 おしゃれな城下町のくらしを運ぶ個性派たち
  • 鹿児島・鹿児島市電 維新の街を行くトロピカルな路面電車
あとがき・参考文献

●サイズとページ数:A5版 206p
●発行所:東京都文京区音羽2丁目12−21 (株)講談社


#15

15


   路面電車ルネッサンス    

2003.11.29

宇都宮 浄人 著


公正な目線で世界の、日本の路面電車現況を解説

 扉説明によると筆者は現役の銀行家である。その冴えた静かな目線から路面電車が復活を果たした欧米の歴史と、なかなか夜明けを迎えない日本の現況を比較し分析する。 派手な電車の写真等は省かれているが、代わりに新鮮なデータ・統計が盛り込まれている。 欧米では当たり前だと思っていたチケットキャンセラー方式(信用乗車)についても「信用乗車を考える」として1章を割かれていた。読んでみて、信用乗車制度もヨーロパで最初からすんなり入った訳ではなく、先人が多くの疑問を乗り越えての決断があったこと知った。
 この本はページは少量だがその分、要点を明快に簡潔に説明されていて一読で頭に入ってしまう。読者は今得られた知識を使って自分の住む街のLRT化プランを自分もちょっと描いてみようかという気持ちが湧くのではなかろうか?
 そういう気持ちを誘う本である。

目次

序章 高速道路から路面電車へ
第1章 路面電車新時代へ
第2章 データで見る路面電車
館主解説:こんな国際比較をして日本の特徴をあぶり出す。  この日本の中にも、
ドイツ・ベネルクス型があるのはおや?だ。個別内容はどうぞ本書にてご覧下さい。

第3章 路面電車が求められる理由
第4章 路面電車とまちづくり
第5章 路面電車の経済政策
第6章 信用乗車を考える
第7章 日本の新たな動き
終章  MOMOは実のるか−日本の課題

●サイズとページ数:新書版 205p
●発行所:東京都新宿区矢来町71番地  (株)新潮社
●定価:680円


#14

14


    路面電車カタログ   

2003.3.16

山と渓谷社


美麗正確な路面電車のほんとにカタログ

 山と渓谷社といえばもともと日本の山岳写真を集大成して出版するので著名な出版社である。 同社写真出版の拡大版「ヤマケイレイルブックス」が遂に路面電車に及び、標題も正直に「路面電車カタログ」と名付けてこのほど出版された。
 本書は22事業体の殆どの稼働車両を網羅的に集大成している。 低床車全車種は勿論、各社の動体保存的なレトロ車や事業用車種までもていねいに収集してある。 また、付録資料として『懐かしの路面電車[路線廃止表]』があり、これはいろいろの話題をチェックするのに役立つ資料でユニークだ。
 とにかく本書も同社写真集の定番どうりばっちりと正確に撮られ、それを美しく印刷し、おまけは格安の価格付けがされ、コストパフォーマンスが抜群という点が特筆されよう。

 余談ですけど、こうやって日本各地の路面電車車体を眺めてみるるとカラーリングは変化に富んでおり、楽しい乗り物達ですね。(^_^)

本書の構成

●掲載事業者名 (22社)
  • 札幌市交通局 札幌市電
  • 函館市交通局 函館市電
  • 東京都交通局 荒川線
  • 東京急行電鉄 世田谷線
  • 江ノ島電鉄 
  • 豊橋鉄道 東田本線
  • 名古屋鉄道 美濃町線、揖斐線、岐阜市内線専用
  • 博物館明治村 京都市電
  • 富山地方鉄道 富山軌道線
  • 万葉線   万葉線
  • 福井鉄道  福武線
  • 京福電気鉄道 嵐電
  • 京阪電気鉄道 京津線
  • 阪堺電気軌道 阪堺
  • 岡山電気軌道 岡山電軌
  • 広島電鉄  広電
  • 伊予鉄道  市内線
  • 土佐電気鉄道 土電
  • 筑豊電気鉄道 筑鉄
  • 長崎電気鉄道 長崎電軌
  • 熊本市交通局 熊本市電
  • 鹿児島市交通局 鹿児島市電

●なつかしの路面電車 (代表写真のみ)
  • 札幌市電
  • 仙台市電・東武日光軌道線・都電
  • 都電
  • 都電・東急玉川線・川崎市電
  • 横浜市電・名古屋市電
  • 大阪市電・阪神国道線・阪神甲子園線
  • 山陽電軌・大分交通別大線
  • 西鉄北九州線・西鉄福岡市内線

●路面電車カタログ資料編
  • 全国路面電車[路線概略図]
  • なつかしの路面電車[路線廃止表]1965年以降↓

●サイズとページ数:B5版横開き 112p
●発行所:東京都港区芝大門1−1−33  (株)山と渓谷社
●定価:1200円


#13

13


 日本の路面電車ハンドブック 
       2001年版

2002.3.8
         

       日本路面電車同好会


日本の路面電車標準データブック

 日本中の路面電車ファンの全国的愛好団体と言えばなんといっても日本路面電車同好会であろう。この団体の企画のうちには路面電車のデータブックを発刊することがある。但し毎年定期発行ではなく数年おきであり、前回は1997年版が発行されたから、本書はそれ以来であり4年ぶりということになる。 路面電車関連は比較的変化が少ない業界かも知れないが、やはり待望久しかった言えよう。 明治村や梅小路公園の記載があるのもいかにも愛好団体制作らしい。
 期間が空いた分内容の充実と校正には努められているよう見受けられ、採り上げた項目も多いので、路面電車愛好家にとって標準的データブックというか座右の書として存在価値が大きい。
表紙写真

本書の構成

●掲載公営企業・私鉄各社の掲載内容

  • 本社および各事業所の住所・電話番号
  • 路線名・区間・キロ程
  • 軌間・電圧
  • 運賃(普通、回数券、プリペイド、一日乗車券、団体運賃、貸切運賃等種別に)
  • 乗車方法(車両のドア別乗車口と降車口の説明)
             (広電Green Mover 事例 ↓)
    Green Mover 乗降方法
  • 運転系統 (1号線、2号線、・・・)
  • 運転
    1. 主要停留場始発終発時刻表
    2. 路線別発車時刻表
    3. 時間帯・系統別運転間隔、片道所用時分
  • 年間輸送実績
  • 特色・近況
  • 路線図
  • 車両(形式、車号、車長×車幅、集電、制御、冷房、製造年・所、車種等)


●掲載事業者名 (23カ所)

  • 札幌市交通局
  • 函館市交通局
  • 東京都交通局 荒川線
  • 東京急行電鉄(株) 世田谷線
  • 江ノ島電鉄(株) 
  • 豊橋鉄道(株) 東田本線
  • 名古屋鉄道(株) 岐阜市内線、美濃町線、揖斐線
  • 富山地方鉄道(株) 富山軌道線
  • 加越能鉄道(株) 万葉線
  • 福井鉄道(株) 福武線
  • 京阪電気鉄道(株) 京津線、石山坂本線
  • 京福電気鉄道(株) 嵐山本線、北野線
  • 阪堺電気軌道(株)
  • 岡山電気軌道(株)
  • 広島電鉄(株)
  • 伊予鉄道(株) 市内線
  • 土佐電気鉄道(株)
  • 筑豊電気鉄道(株)
  • 長崎電気鉄道(株)
  • 熊本市交通局
  • 鹿児島市交通局
  • 博物館明治村 京都市電線
  • (財)梅小路公園


●その他

  • 路面電車が保存されている博物館
  • 路面電車要覧(事業者別線名・営業キロ・輸送キロ・・・・・等データの一覧表)
  • インターネットホームページ アドレス
  • 路面電車サミット、路面電車の日、全国路面電車愛好支援団体協議会加盟団体
  • その他

●発行所:日本路面電車同好会
       206-0033 東京都多摩市落合4−3−4−401 相馬方
●頒価:1500円


#12

12

       走れ、LRT

     −路面電車がまちをかえた−   
      (たくさんのふしぎ '01/9)

2001.9.11
      

        西森 聡  写真・文


子供のために こんな良い本が出た

 子供は総じて乗り物が好きである。それぞれがダイナミックで美しいし、メカニズムにも関心を持つからではなかろうか。但し その対象はよく見かけるJRとか飛行機のような乗り物になりがちなのは仕方あるまい。
 その日本に、理解しやすい文章で書かれて写真が素晴らしくきれい、且つ運用ロジックまで要点をうまく押さえたヨーロッパ事例を中心にしたLRT特集の子供さん向け月刊啓蒙書が発行されたのは嬉しいことである。 この中の自動券売機の具体的使用例やチケットキャンセラの紹介等はいままでは実例明示がすくなかったのではなかろうか。大人が読んでも楽しく参考になる一本である。ぜひとも子供さんに買ってあげてください。私の場合は孫ですけど・・・。
表紙写真

本文の自動券売機によるチケットの買い方説明部分
本文例示


●発行所:福音館書店 東京都文京区本駒込6−6−3  TEL 03-3942-1226
●雑誌コード:15923-09
●定価:税込み700円


#11

11

   

       路面電車

    −未来型都市交通への提言−   .

2001.4.5
     

          今尾 恵介

旅人の目から,生きている路面電車を観察する

 今まで掲載した文献はどちらかというと鉄道交通研究者の路面電車研究といった角度のものが多い。当たり前であるが・・・。 
 本書の特色は地図・時刻表の趣味から職業に転化したライターが、路面電車の時代性に目覚め、日本各都市の路面電車探求から始まり、ヨーロッパのそれの探求まで深入りしたルポと言えよう。その分足で歩いた感動が新書版というスタイルで結実し、心地良い路面電車読み物になっている。
 心地良いと言っても、内容が軽いという意味では決してなく、筆者の日本の路面電車・LRTの在り方についての洞察が個性的な提言となって随所に現れる。 短時間で路面電車とLRTの現況と課題を概観するに適書。
 ちょっと抵抗感を覚えたのは、カバーの帯封にある「チンチン電車は遅くない!」の文言である。今のLRT時代に旧式電車をイメージするこの用語を使用するとはどんなものであろうか?出版社のセンスから出たものであろうけど。やはりLRTの語が欲しかった。
表紙写真

目次
序章 路面電車とは何か

第1章 日本の路面電車史

第2章 日本の路面電車の現況
       札幌市、函館市、豊橋市、岐阜市、岡山市、
       広島市、松山市、熊本市、長崎市、鹿児島市

第3章 外国の路面電車の現況
       カールスルーエ市、カッセル市、ザールブリュッケン市、
       ストラスブール市、ツヴィッカウ市

第4章 将来の路面電車への展望
フリーハンド地図にて各路線の紹介がとても親しくて、楽しめる(^_^)
本文例示

●サイズとページ数: 新書版 幅10.5cm 高さ17cm
●発行所:筑摩書房 東京都台東区蔵前2−5−3  TEL 048-651-0053
●ISBN4−480−05886−9  C0265
●定価:680円+税