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日本 全チンチン電車の一日旅 |
2004.6.16 |
遠 森 慶 著 |
各地の路面電車に乗りに行くのも良いが、少しは近辺も探索してみては |
館主も人後に落ちず旅行機会があれば日本各地の路面電車に乗るよう努めています。「あの市の電車も乗った。この町の電車にも乗った」と数えて満足している趣も正直なところあります。が、思い直すと電車ファンというものはとかく乗車が目的になってしまい、路面電車を支える周辺の町をぶらつく、観察するという楽しい経験とを見逃しているきらいは無いだろうかというのが読後感。 この本の著者は鉄道旅行をこよなく愛すルポライター。本書の特長は各地の路面電車を紹介するのに手書きの案内マップとお奨めスポットとをイラストでの表現するのが重点になっている。おかげで街の特長を直感的に理解でき、「行くならそちらの探訪もぜひ試みたいな」と旅心を誘うシカケになっている。 見て、読むだけでも楽しい本。 路面電車関連書物というと正攻法の図書が多いが、路面電車探訪の旅の機会に携え、参考にしながら街を探索するのも有益。 読むなら、イラストを先に眺め読んでから本文を読む順序の方が楽しくて理解も早いかも知れない。 路面電車実地探索派へのお奨め本。 |
目次 カラー口絵 路面電車分布図 本文
●サイズとページ数:A5版 206p ●発行所:東京都文京区音羽2丁目12−21 (株)講談社 |
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路面電車ルネッサンス ・ |
2003.11.29 |
宇都宮 浄人 著 |
公正な目線で世界の、日本の路面電車現況を解説 |
扉説明によると筆者は現役の銀行家である。その冴えた静かな目線から路面電車が復活を果たした欧米の歴史と、なかなか夜明けを迎えない日本の現況を比較し分析する。 派手な電車の写真等は省かれているが、代わりに新鮮なデータ・統計が盛り込まれている。 欧米では当たり前だと思っていたチケットキャンセラー方式(信用乗車)についても「信用乗車を考える」として1章を割かれていた。読んでみて、信用乗車制度もヨーロパで最初からすんなり入った訳ではなく、先人が多くの疑問を乗り越えての決断があったこと知った。 この本はページは少量だがその分、要点を明快に簡潔に説明されていて一読で頭に入ってしまう。読者は今得られた知識を使って自分の住む街のLRT化プランを自分もちょっと描いてみようかという気持ちが湧くのではなかろうか? そういう気持ちを誘う本である。 |
目次序章 高速道路から路面電車へ第1章 路面電車新時代へ 第2章 データで見る路面電車
第3章 路面電車が求められる理由 第4章 路面電車とまちづくり 第5章 路面電車の経済政策 第6章 信用乗車を考える 第7章 日本の新たな動き 終章 MOMOは実のるか−日本の課題 ●サイズとページ数:新書版 205p ●発行所:東京都新宿区矢来町71番地 (株)新潮社 ●定価:680円 |
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路面電車カタログ ・ |
2003.3.16 |
山と渓谷社 |
美麗正確な路面電車のほんとにカタログ |
山と渓谷社といえばもともと日本の山岳写真を集大成して出版するので著名な出版社である。 同社写真出版の拡大版「ヤマケイレイルブックス」が遂に路面電車に及び、標題も正直に「路面電車カタログ」と名付けてこのほど出版された。 本書は22事業体の殆どの稼働車両を網羅的に集大成している。 低床車全車種は勿論、各社の動体保存的なレトロ車や事業用車種までもていねいに収集してある。 また、付録資料として『懐かしの路面電車[路線廃止表]』があり、これはいろいろの話題をチェックするのに役立つ資料でユニークだ。 とにかく本書も同社写真集の定番どうりばっちりと正確に撮られ、それを美しく印刷し、おまけは格安の価格付けがされ、コストパフォーマンスが抜群という点が特筆されよう。 余談ですけど、こうやって日本各地の路面電車車体を眺めてみるるとカラーリングは変化に富んでおり、楽しい乗り物達ですね。(^_^) |
本書の構成●掲載事業者名 (22社)
●なつかしの路面電車 (代表写真のみ)
●路面電車カタログ資料編
●サイズとページ数:B5版横開き 112p ●発行所:東京都港区芝大門1−1−33 (株)山と渓谷社 ●定価:1200円 |
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日本の路面電車ハンドブック ・
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2002.3.8 ・ |
日本路面電車同好会 |
日本の路面電車標準データブック |
日本中の路面電車ファンの全国的愛好団体と言えばなんといっても日本路面電車同好会であろう。この団体の企画のうちには路面電車のデータブックを発刊することがある。但し毎年定期発行ではなく数年おきであり、前回は1997年版が発行されたから、本書はそれ以来であり4年ぶりということになる。 路面電車関連は比較的変化が少ない業界かも知れないが、やはり待望久しかった言えよう。 明治村や梅小路公園の記載があるのもいかにも愛好団体制作らしい。 期間が空いた分内容の充実と校正には努められているよう見受けられ、採り上げた項目も多いので、路面電車愛好家にとって標準的データブックというか座右の書として存在価値が大きい。 |
本書の構成●掲載公営企業・私鉄各社の掲載内容
●発行所:日本路面電車同好会 206-0033 東京都多摩市落合4−3−4−401 相馬方 ●頒価:1500円 |
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走れ、LRT −路面電車がまちをかえた− ・
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2001.9.11 |
西森 聡 写真・文 |
子供のために こんな良い本が出た |
子供は総じて乗り物が好きである。それぞれがダイナミックで美しいし、メカニズムにも関心を持つからではなかろうか。但し その対象はよく見かけるJRとか飛行機のような乗り物になりがちなのは仕方あるまい。 その日本に、理解しやすい文章で書かれて写真が素晴らしくきれい、且つ運用ロジックまで要点をうまく押さえたヨーロッパ事例を中心にしたLRT特集の子供さん向け月刊啓蒙書が発行されたのは嬉しいことである。 この中の自動券売機の具体的使用例やチケットキャンセラの紹介等はいままでは実例明示がすくなかったのではなかろうか。大人が読んでも楽しく参考になる一本である。ぜひとも子供さんに買ってあげてください。私の場合は孫ですけど・・・。 |
本文の自動券売機によるチケットの買い方説明部分
●雑誌コード:15923-09 ●定価:税込み700円 |
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路面電車−未来型都市交通への提言− . |
2001.4.5 |
今尾 恵介 |
旅人の目から,生きている路面電車を観察する |
今まで掲載した文献はどちらかというと鉄道交通研究者の路面電車研究といった角度のものが多い。当たり前であるが・・・。 本書の特色は地図・時刻表の趣味から職業に転化したライターが、路面電車の時代性に目覚め、日本各都市の路面電車探求から始まり、ヨーロッパのそれの探求まで深入りしたルポと言えよう。その分足で歩いた感動が新書版というスタイルで結実し、心地良い路面電車読み物になっている。 心地良いと言っても、内容が軽いという意味では決してなく、筆者の日本の路面電車・LRTの在り方についての洞察が個性的な提言となって随所に現れる。 短時間で路面電車とLRTの現況と課題を概観するに適書。 ちょっと抵抗感を覚えたのは、カバーの帯封にある「チンチン電車は遅くない!」の文言である。今のLRT時代に旧式電車をイメージするこの用語を使用するとはどんなものであろうか?出版社のセンスから出たものであろうけど。やはりLRTの語が欲しかった。 |
●目次 序章 路面電車とは何か 第1章 日本の路面電車史 第2章 日本の路面電車の現況 札幌市、函館市、豊橋市、岐阜市、岡山市、 広島市、松山市、熊本市、長崎市、鹿児島市 第3章 外国の路面電車の現況 カールスルーエ市、カッセル市、ザールブリュッケン市、 ストラスブール市、ツヴィッカウ市 第4章 将来の路面電車への展望
●発行所:筑摩書房 東京都台東区蔵前2−5−3 TEL 048-651-0053 ●ISBN4−480−05886−9 C0265 ●定価:680円+税 |