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例会演録7
米ポートランド市などにおけるLRTの現状 付:岡山市路面電車延伸の近況
日本政策投資銀行 地域企画部次長 澤田
正彦氏 |
2000.2.19 |
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講演日時:2000.2.16 6:30〜8:30p.m |
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場所:広島市鷹野橋 広島市婦人教育会館 |
館主前言:
LRTというとどうもヨーロッパの話をよく聞きます。 アメリカにもいろいろの都市で建設利用されていることはもちろん知ってはいます。 でも纏まったテーマとして勉強してみる機会が少ない。ということで旧開発銀行今は日本政策投資銀行のLRT研究者である澤田氏が、アメリカの路面電車事情を最近調査されたと聞き及びその辺の情報のご講演をお願いしました。なお澤田氏は昨年まで日本開発銀行岡山事務所の事務所長を務められ、あの岡山市の路面電車延長問題にもしっかり応援をされていました。RACDAの快著「路面電車とまちづくり」にも執筆しておられます。
講演者略歴:
1952年埼玉県生まれ
1976年一橋大学卒業
1976年日本開発銀行入行
1997年〜99年岡山事務所長
岡山市活性化協議会ほか委員
1999年10月
行名を日本政策投資銀行と改称
1999年本店地域企画部次長 |
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講演要旨
本講演の要旨は、例によって、当日参加の会員藤井正史氏が「FTRAINE(7)まちづくりの交通 1☆LRT・路面電車等」に掲載された原文によるものが殆ど全部で、館主がほんの少し補足をしました。藤井正史さん、ごくろうさまでした。m(_
_)m
図版等は講演者より得た資料で、講演者の了解を得て掲載しました。さらに岡山県の出版物を転載しました。
日本政策投資銀行 中川純典氏(当会会員)による講師の紹介
最近まで岡山支店長を務めていた方で、RACDAなどでポートランドのLRT調査をしたりで、造けいが深く、当銀行の中でもおそらくトップの知識を持った方です。 現在の部署でも、地域プロジェクトの立ち上げにも関わっています。
まえおき
- 岡山支店に努めている中で、岡山のRACDAとのつきあいができ、この分野に関わっていくことなった。
- 日経新聞に大阪の記者の方が先週土曜に書かれた記事が掲載された。この記事では欧州を中心にかいているが、米国でもライトレールが出てきている。米国へ実際に視察へ出かけた。
ビデオ上映と解説
- フジ系の岡山放送の方が昨年米国を取材しており、そのビデオを上映させていただきます。
米国ポートランド市
- オレゴン州のポートランドは緯度は旭川と同じぐらい。オレゴン州は森林が多く、森林関係の産業が中心。バスを使ったトランジットモールが中心で、ライトレールは「MAX」とよばれ、シーメンス製であるが、米国製でもある。LRTは中心部で一方通行となっており、中心部を一周する。
- ポートランドの市街地は一階が店舗となっている高密度な都市形成となっている。中心部ではバスも電車も無料とし、乗ってもらうことを重視している。郊外では時速90Km/hとし、高速道路の自動車と変わらない速度で走行している。パークアンドライドを重視し、郊外の駅では立体駐車場もある。
- ライトレールは現在2路線であるが、さらに空港へ向けた延伸計画がある。
- バス路線は方向別にカラーと記号で表記していて分かり易い。停留所も同色。
- 公共交通を中心とした都市開発を行い、駅周辺にオフィスや住宅を貼り付ける。収入の3分の2は、税金で、給与所得税に上乗せして賄っている。都市の成長管理を規制しており、都市成長境界線を設けて明確に管理している。
- キップは自分で買って乗車。無検札。
- 古い路面電車も運行している。
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ポートランド市のLRT(MAX)
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MAX低床車両入り口
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ミネアポリス
- ミネアポリスはアメリカの最初のバスによるトランジットモール「ニコレットモール」が設けられ、寒さから逃れるためにスカイウェイとよばれるビルを空中廊下でつないでいる。
サンフランシスコ
- 古い路面電車(PCCカー)とトロリーバスを同じ路面軌道上を運行している。観光都市ということで名物の1つなっている。
- オークランドと結ぶバートと呼ばれる高速地下鉄が運行している。この路線に並行する道路は激しい混雑なっている。
- 再開発計画に連動してジャイアンツスタジアムとかがえる湾岸地区にイタリア製車両を使ったLRTを建設しており、既に一部区間では運行が開始されている。
- ウオーターフロントの南に Third Street計画がある。
- サンフランシスコでは売上税が8%であるが、これに0.5%を上乗せして賄っている。
- 再開発計画では、計画当初のオフィスの数を減らして、需要管理を行っている。
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サンフランシスコLRT 伊製車両 延伸予定 |
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サンフランシスコ 車椅子用プラットフォーム
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サンノゼ
- 車の渋滞がひどく大気汚染が強いのがLRT開発の動機である。
- カナダ製の車両を使っている。シリコンバレーを通っており、郊外では高速道路の一角に軌道を敷き、高速運行を行っている。さらに2箇所への延伸計画がある。 車両は高床式であるが、車内に自転車を2、3台、立てかけられる様になっている。
- 郊外はセンターポール式の専用軌道で70km/hで走っている
- 延伸計画があり、シリコンバレーの工場・研究所などの客を拾うために。
- まだ部分開発というところで効率は当然悪い。
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サンノゼ中心部トランジットモール
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サンノゼLRT 自転車が置けるように改造
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・・・・・・・・ここでOHK制作のビデオは終了。・・・・・・・・・・・・・・
配付資料に基づく米国の現状報告
- ポートランドでは中心部で立体駐車場を取り壊して、公園を設けている。
- 米国ではサンディエゴでLRTの導入が始まり、最近ではダラスで導入されている。米国では、郊外へ都市が分散しており、1つあたりの都市の人口は少ないものの、都市圏人口で人口数を考える必要である。
- ダラスでは日本の近畿車輛製の車両が40編成導入されている。
- 元々、米国では19世紀から20世紀始めにかけて軌道系交通機関が結構あったが、GM社が路面電車を買収したりして廃止されていた。その後、80・90年代に見直しされているのが現状。
- ポートランドでは、米国で唯一選挙民に承認された自治憲章を持つ広域行政機関「メトロ」が出来、3郡の都市部と24市を管理しております。広島市の5割増しの面積であります。
- 「地域2040」という2040年を目標年次にした長期計画により、都市整備が行われています。この根幹には広島市よりも一回り大きい面積の範囲を「都市成長境界線」を設け、2040年まではこの範囲内しか開発しないと明確にしているのが、日本の都市計画とは異なる点のです。
- 都心の通勤分担率は、4割ぐらいが公共交通利用となっている。広場建設にともない立体駐車場を撤去するなど中心部での駐車場の制限を行っており、川岸の高速道路は70年代に廃止しており、環状道路を整備しています。 LRTの建設費は、東線では83%が連邦政府が負担し、西線では93%が連邦政府が負担し、いずれも残りを州政府など100%公共負担である。この税負担であh、オレゴン州は売上税がないので、給与所得税に0.6%程度上乗せしている。これらは住民投票で決定している。
- オレゴン州ではハイテク企業を誘致しており、シリコンバレーに対して、シリコンフォレストとよばれている。靴などのナイキもここが本拠地である。
- 州がかなり権限を持っており、自治体で細かく決定する。
- 80年代から人口急増が起き、乱開発がが問題化し、個別の市町村では対応出来なくなったことから広域行政機関「メトロ」が出来た。公選により、長と7人の議員が選ばれて、約800名の職員で運営している。
- 現在予備選が行われている米国の大統領選では、ポートランドを手本とした都市成長管理政策を訴えている候補がいる。
- 夜10時過ぎでも一人歩きをする女性もおり、米国では例外的に治安がよい。
- サンフランシスコでは、容積率を上げるのはなく、駐車場問題などで容積率を決めオフィスを抑制している。一方で、地域全体の容積率を決めることで、隣接ビルなど容積率を売買出来るようにしており、歴史ある建物の保存などを行っている。 市内交通事業資金として、1989年に売上税に0.5%上乗せすることが住民投票で決定し実施されている。LRTの建設負担は連邦政府が3%、州政府が7%、残り90%は市が負担している。
- サンノゼは、州政府と地元が資金を賄えず、全線開業出来ない為、ポートランドと比べて成績がかなり悪い。収入のうち、15%程度の運賃収入、残りは目的税(売上税に0.5%上乗せ)により補填している。 最近では、インテルが駅舎建設費を負担したりしている。
- サクラメントでも、売上税0.5%上乗せを行って賄っている。都心部は25セント・ワンコインである。バスは209台のうち、136台が天然ガスを動力としている。
日本の現状と米国の実状
- 米国の事例を日本に利用するにあたって、日本では縦割り行政等に阻まれ、長期の都市計画ができていない。
- 米国では長期の都市計画のもとに、 米国ではどこでも1人乗り自動車制限を行っており、1人乗り自動車が走行できない・複数乗車優先レーン「カープール」を設けている。ロサンゼルスであは罰金額を書いた標識をある。
- LRTでもカープールでも懲罰的な料金システムとなっている。
- 自治政策は住民投票で決めることが一般化しており、1人の職員が1,000回ぐらい説明することもある。
- 米国では州が強い権限を伝統的にあり、地方分権が出来ている。
- 専門家集団の流動性が高く、専門家が都市計画プランに強く関与している。
岡山の路面電車延伸計画の近況について
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岡山市都市計画課 都市交通政策室発行
目次:
◆LRTとは?
◆岡山市の現状
◆考えてみませんか、中心都市のまちづくりを
◆新たな都市交通・LRT
◆LRTの特長
◆市民に聞く、「街づくり」
◆世界のLRT
◆全国路面電車マップ |
- 岡山駅は南北の形状となっており、東側が中心街である。東側に岡電が路線を延ばしている。1kmスクエア構想とよばれている環状線計画などいろいろな案が検討された。
- 環状道路を整備して、通過道路交通を排除しようともしております。
- 市役所筋での延伸計画では、道路中央案は従来と同じでインパクトが低く、両側に軌道を敷設する案では埋設物の関係で実現が難しく、東側歩道寄り導入案を中心に検討されている。
- 岡山では毎月、関係者が集まり、延伸計画を練っております。
- 市役所筋では、6ヘクタールにも上る林原モータープール東京の恵比寿並の再開発計画があります。
- 路面電車の環状化を出来るのか微妙な段階であります。
質疑
Q:現状では大元延伸はあきらめたのか?
A:現在は、市役所筋から大学病院への延伸を中心に計画している。
お配りした図は1年以上前ものであります。
Q:米国のライトレールの定義は?
A:電装品の一新などLRVの一般的定義を前提に紹介した
Q:GM社は鉄道潰しに絡んでは?
A:ある程度の人口規模がないとLRTは出来ないでしょう。
米国全体に中心部の衰退があり、50年代から郊外へ都市が広がっていた。
低所得者が都心に残り、スラム化していく。さらに税収が減っていく。
まだ、一部の都市の動きであるが、今後の動向は注目される。人は郊外で生活は満足しても都心に集まりたいという習性をもっているのではないか? さらに米国でも都心への回帰が起き始め、郊外部のショッピングセンターが飽和状態になっている。
Q:欧米のLRTの違いは?
Q:日本が取り入れることが可能な点は?
A:欧州は既成市街地は古い町並みのままで、道路も広げられず、道路を潰してLRTを行っている。
米国は道路が何車線もあり都市が広く、サンノゼは余裕があるからLRTが出来た面もある。
日本ではアメリカよりも欧州の方が学ぶ面が多いのではなかろうか?
低所得者などの交通弱者とか一部の層の利用者中心である。ポートランドでは運賃無料であり、いろいろの階層の方が利用されている。
日本は高度に公共交通機関が発達している面があり、米国からの視察の方は日本に学ぶ面があると言われている。
米国では完全な自動車社会でタダじゃないと利用してもらえないのじゃないかと思える。
住民投票では導入当初では3分の2の賛成が必要であり、継続の際には2分の1の賛成が必要である。
付:路面電車を考える会から会員へのお知らせ
- 世話人は山根さんを中心におこなっていたのですが、会を永続させるために更に世話人の方を増やして会の運営を行っていきます。広島市の計画では今後何度か計画の見直しの機会があり、そのための充電期間・勉強の機会だととらえております。
- 講師の方を呼んで実施するという機会が多くなっております。今後、会員の研究発表の機会を増やしたいと考えています。
- 各都市の愛好団体があっちこっちの都市への訪問を実施しています。路面電車を考える会でも同じ様な行事を行いたいと考えています。