「広島LRT研究会」軌道交通改良提案書を広島市長に説明 |
99.8.1 |
「広島LRT研究会」の手になる「広島市軌道交通改良提案書」の草稿が6月に出来上がったので、これはぜひ市の軌道交通の最終決定者である広島市長にご説明し意見を頂戴したいと思い立ちました。
秋葉広島市長は自分でパソコンを操作しE-mailを使用されていると聞き及びましたので、早速「7葉の提案図を使用してご説明したい」旨6月のある日お昼12時に発信しました。
さて当日午後2時頃、果たして届いたかを確認するため電源を入れたら「即お会いし提案を聴きたい」旨の長い返事が入っていました。 広島市長って情報通信に強い方ですね。
それならと、広島市道路交通局の幹部の方にも同席をお願いしたいと申し出て、会見日は広島市水害被災者対策のため若干延びましたが7月30日実現の運びになりました。 市長応接室にて1時間の説明会を済ませた後、市政記者クラブにて新聞社各社とTV4社に対し市長説明の内容をご披露しました。
市長にいろいろご説明しましたが判りが速い。冒頭にLRTの定義を説明しようとしたら、「判っているよ」 。それもそのはず、最後にRACDA制作の「路面電車とまつづくり」を贈呈しようとしたとき「それは持ってるよ」という返事がありました。で、その本は陪席の交通局の方に差し上げました。
そうそう「広島は日本一路面電車が利用使用されている都市です。もし広島市が優先信号とかアンダクロスを使用した真のLRTを建設すれば広島市が日本初のLRTモデル都市になるわけです。日本各地の都市で検討され始めた21世紀の軌道交通の規範になるわけです」とも申し上げました。
以下に当日のスナップなどと当日使用したイラスト的資料を中心に本文の主要部も交え掲載します。
(私信)秋葉市長さ〜ん。 このHPをご覧頂くよう宣伝しましたがご覧になりましたか〜〜〜。
(=^_^;=)
模型も持参し緊張して入室 NHK | 提案2番の説明図が放映された NHK | ||
報告後市政記者クラブにて NHK | 提案4:新袋町駅新設計画は模型を使って NHK | ||
市長にお願いし記念写真 | 某TV局のクルー 若い!! (逆取材とも言える) |
広島LRT研究会 報告書 21世紀における広島市内軌道交通の 改良について提案 広島LRT研究会 路面電車を考える会 |
「路面電車を考える会」が広島市に呱々の声を上げたのは 1993年(平成5年)3月のことであった。広島市は日本で一番路面電車が生き生き活動し市民生活に貢献している都市といえないであろうか。しかし現況でははるかに理想には遠く、まずは路面電車をキーワードにして関連交通体系をも含めて毎月一回の例会を持つなどして勉強し、かつ将来のあるべき姿を探求する活動を行っている。 また、その活動成果は広島市民にのみ付与されるものではなく、路面電車の活用、復活、再生に関心をもつ日本中の都市市民の共通財産になるものと考えており、参画者については国内における路面電車に関心をもつ人に広く呼びかけて共同活動をしており、成果もホームページその他の手段を通じ公開している。
かかる平常活動を続けていたが、1997年広島市議会に「都市交通問題調査特別委員会」が設けられ、ここにおいて広島市の将来の軌道交通体系のあり方が論ぜられた。 公開であったのでここの論議を会員の有志が傍聴して市民の立場からその是非について議論し、アストラムライン中心とした市の提案に対しては、税の使い方としてより効率の高い路面電車を中心とした提案を行ったし、また市の原案を市と市議会のみで決することなく「客観的指標評価方式」を参考に広く市民の意見を吸い上げる方式を採用するよう要望した。
その後市と小委員会との論議が月を追って深まるのに応じて、路面電車を考える会の会員が散発的に研究するのではなく、これを組織的に検討し市に提案する方式を採用すべきとの提案が持ち上がった。 これを承けて1998年8月会員の有志による「広島LRT研究会」が発足活動することになり、1年弱の活動成果を得てここに発表に漕ぎ着けたものである。 当研究会はこれを広島市に提案するのみならず広く国内に公開し多くの有益な意見を得たいと考えている。 改めて読者に伝えたいことは「当会の行動指針とは、単に市の提案を批評することにあるのではなく、具体的提案を提出し、それが実行されることを希求するものである」ということにある。
お断りしたいのは、われわれ研究会は交通専門家の集まりではなく、いわゆる一般市民が自分の目で見、聞いたこと、考えたことを纏めたもので、専門の目から見れば不正確とか思いこみがあるやも知れない。もしあればその意を汲み取ることにしていただき寛恕していただきたい。
(理由)
われわれは下記の3つの街になることを選択した
広島市21世紀のありかたを考慮しながら、都市交通問題調査特別委員会における2年弱に渡る討議を聴き一緒に考えたつもりであったが、市の現在の財政状況と今後の財政見通しを聴くに、緊縮が続くという環境下で補助金を得るにしても3,000億にも及ぶ東西線建設を行うことは、畢竟市財政の今後更なる逼迫と市民の担税負担を長期に渡って招くものではないかと疑義をもった。 ではその論拠を幾つか摘出する。その多くは議員による質問がヒントになったものもある。
なお、市の新交通案では高架案と地下案との2案が提出されているが、高架案は平和公園前を高架で走る問題を含み現実味が少ないと考えるので、議論を簡略にするために地下案の問題点摘出のみに絞る。(理由は13項)
前項まで詳述したように、広島市内のデルタ部分をなにがなんでも新交通の高架や地下で通すという提案は環境の問題や資金と運用費の点から問題が大きい。そこで広島市の軌道系交通を考えるには両者の長所を取り短所を補う住み分け案が合理的と考え提案したい。 図1
既に広域公園まで延びているアストラムライン*は既成事実である。但しこれを中途で止めておくことは誰が見ても不自然な話であろう。そこでこの線を市案の通り西広島まで延長する。市内のデルタ地区は建設費・運用費負担の少ないLRTネットを広く敷設する。市内デルタのLRTネットは広い地域が対象になるが、建設には緩急を設け、第1次としては平和駅前通り線の建設に着手する。 これが市の東西線案の機能を代替する。 図2
案の詳細を説明すると、現行己斐駅前を大改造・拡張しJRからの徒歩を強いられる現行広電己斐駅をぐっと広場の内側に持ってきてJRと平行のホームを2本設ける。図3 広電新ホームとJRホームの間にバスホームを平行に入れる。 延長して西広島駅に伸ばしたアストラムはJR、バス、LRT(広電)の上に直角に交わる。アストラムのホームからはJR、バス、LRTへ階段と上下両方向エスカレータとで結ぶ。また現在のバスベイは3台分であるが、これを約3倍の9台分にして周辺地区へのフィーダーバス出発点に当てる。JR駅は橋上駅が適切であろう。
これが実行されれば必ずや懸案の己斐地区の再開発も自ずから提起され、長年の課題解決が図られることになろう。
広島のデルタ地区の軌道交通は建設期間が短く建設費と維持費の負担が楽なLRTネットに負担させる。 広島都心で問題なのはアストラムのデルタ側にはどこにも既成軌道との結節点を持っていないことだ。 乗客は終端の本通や県庁前で降りると徒歩で道路に出て路面電車の電停で乗り換えている。 この部分の改良提案であるが、本通駅地下2階のアストラムの線路をもう少し傾斜しながら延長し袋町まで持ってきて、この高さを地下1階部分まで持ち上げて地下1階路下式構造の新袋町駅を作る。図4 一方広電宇品線は、本通電停を出てから下がりはじめ、新袋町駅にて共用ホームに至る。広電はさらに路下にて延伸し白神社前にて平和駅前通り線と地下1階にて交差し、ここを通り過ぎてから上りはじめ、中電前あたりにて地上にもどり地平の中電前電停に至る。新袋町駅は2本の島式ホームを作りアストラムの末端ホームと共用すれば、広電とアストラムの乗客は同一方向同一ホームでシームレスにての乗換が確保できる。この方式ならアストラムの乗客は容易に宇品線に乗り換えができるので市の南北線案の機能を代替できる。また西広島を出発したLRTは白神社交差点では路下式で
あるため鯉城通りの大交差点にて信号待ちすることなく渡りきることができ表定速度向上に役立つ。更にこの交差点では宮島から来たLRTを広島駅方向や宇品方向に地下で分岐進行させる運用も考えられる。
図1 広島市軌道系建設プランと結節点の改良案 |
図2 広島市LRTネット提案 第1期=平和駅前通り線案 |
●広島市案
新交通高架案(広域公園〜己斐トンネル。己斐〜広島駅は全線高架)…己斐より西800億、市内1400億円
新交通全地下案(広域公園〜己斐トンネル。己斐〜観音町は高架。観音〜広島駅は地下)
…己斐より西広域公園まで800億、市内部分2200億円
●広島電鉄平和大通り案
現行宮島線は己斐より平和大通りを直進し、NHK前にて前の3連接車は広島駅行きに、後ろの3連接車は
宇品行きに分割して走行。現行己斐線のうち西観音町〜土橋間は廃止する。
●「広島LRT研究会」によるアストラム・LRTネット第1期建設への市民提案
@広域公園前まで来ているアストラムラインを「都市の装置」の考え方を採用し、己斐駅まで延伸する。
A広島電鉄の現在の己斐駅をJR西広島駅の方へ曲げてホームが平行になるよう付け替える。LRTにて己斐より平和大通りを直進し、田中町にて駅前大通りを経て広島駅へ新線建設し、宮島線より直通乗入する。アストラム橋上駅とはペデストレリアンデッキにてJR、バス、広電と立体的に結ぶ。
同時に己斐駅前地区の再開発を実施する。
工事費は、広域公園〜己斐トンネル〜己斐駅800億円+市内LRT建設費100億円?=900億円にてすむ。
付:平和駅前通り線についてわれわれの主張平和大通りは広島市の顔であり、平和都市としての広島市のステータスと密接な関わりを持つ特別な存在である。市民の関心も高く、ここにLRTの路線を敷くには市民合意の形成が前提である。この通りは、フラワーフェステイバルに代表されるイベント広場としての役割をも兼ねており、行事期間中の通行が路面電車の場合相生橋経由線に迂回するという制約もあるから、基幹交通路として比重をかけることに問題もある。当LRT研究会は、これらの条件を勘案した上で、なお「平和大通り線」の新設を提案するものである。その論拠は次の通りである。
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広島市を訪れる外来者が漏らす言葉に「広島の都市交通は(軌道系)乗換が信じられぬくらい不便だ」というのがある。 経緯は論議すまい。前記「広島市軌道系建設プランと結節点の改良案」図1に示すように、LRTネットを整備するにつれ結節の改良を計れば徐々に解消に向かうであろう。 下記の地点が改良の対象になろう
1西広島総合駅新設による、JR,アストラムライン,広電,バスの結節改良 図3
2地下袋町駅新設によるアストラムライン・広電の結節改良 図4
3広島駅の結節改良 平和駅前線と既設比治山線との分離、東雲線の新設時等を契機として、広島駅前地区の路面電車相互間およびJRとの結節改良を計る
4白島長束線を契機に長束駅の結節改良
5 〃牛田駅との結節改良
6 〃 JR駅の新設による交通対応(基町・白島公共施設結集地区への対応)
図3 西広島総合駅案
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・このマスタープランの方式は小倉駅と豊橋駅の先年の改良工事の成果を参考にした。
・アストラムは今のままでは誰が見ても中途半端で未完成。西広島まで延長する。800億円。
この部分のみ建設すれば赤字は必至であるが、上記主旨からこの線増部分は都市の装置と見なして
市より建設補助を考慮する。
・西広島からはLRTに乗り換える。これの平和駅前通り線なら建設費は100億円。地下鉄案なら2200億円 なのでLRTを採用する。建設費、毎年の維持費ともたいへんな節約になる。建設期間も極小ですむ。
・己斐乗り換え方式なら己斐駅前商店街の活性化は必至であり、己斐再開発が現実のものとなろう。
・広電のプラットホームは70mとし、5000系が2編成停車できる。またプラットホームは宮島線、宇品線 は同一ホームで対面し同方向乗り換えがシームレスにでき、乗車降車とも現行よりはるかに便利。
・独立の留置線は1線設ける。
・電車操作場、運転手控え室等はアストラム駅2階に設ける。
・バスベイを設ける。両面使用60m1面のホームを考えた。 これでも現行3台横付けが8台横付けで きて、3倍弱の収容増となる。 LRTとバスとは同一平面乗り換えとなる。
・アストラムは線路は3階。橋上駅は2階に設け、改札を出るとJRホーム、広電ホーム、バスホームへ は直接降りられるようにする。(上下エスカレータを設ける)
・アストラム2階のコンコースは両側に商店街を設ける。
・JR2階は駅関連施設以外にレストラン、物販などの店を設ける。JR駅から直接の西乗降口を設ける
図4 アストラムライン・広電 地下袋町新駅新設による接続案(イメージ図) |
LRT(Light Rail Transit)と既存の路面電車はどこが異なるのであろうか? LRTのTとはTransitつまりsystemを指している言葉である。 つまり、既存の交通ルールに従う都市に最新鋭の低床式とか高加速高減速の電車を導入しても、それだけではLRTをなしていない、それだけではLRV(Light
Rail Vehicle)だと言われる所以である。電車車体以外にいろいろなソフト面の改良を加えない限り所詮新鋭の能力を使いきれない。
新しい電車の能力を生かすには路線の改良、乗降システムの改良とかいろいろ考えられるが、広島市の場合最も有効と考えられる施策は公共交通優先信号制度の採用と幹線道路横断部へのアンダークロスの採用との二つであろう。
図5「広島市平和駅前通り線 優先信号・アンダクロス シミュレーション」に示すように、もし第1次建設案の平和駅前通り線を想定し現行の表定速度*向上の手段として、空港通り、舟入通り、鯉城通り、流川通り、稲荷町の大交差点には、電車が路下にてくぐり抜けることができるアンダクロスを設ける。更に東観音町、西平和大橋両端、平和大橋東、富士見町、平塚町河岸、駅前大橋南端の6カ所の中交差点には電車優先信号を付ける。つまりこれら交差点ではLRTが近づくと距離を関知して電車の横断に差し支えない距離を測り信号を青にする。 これは公の交通が私の交通に優先するという考え方である。もしこの両方式を広島市の平和駅前通り線で実施した場合をシミュレーションしてみたのが、図5の推算で、現在の路面電車表定速度11.5km/hは、24.8km/hと倍増し‘路面電車は遅いから’の悪口は一掃されよう。優先信号方式はヨーロッパの多くの都市で採用され成功している方式である。
通勤者も環境問題からマイカーの使用の問題点は理解はしているはずである。現実には、多くのマイカー通勤者にとっては‘定時に会社に着く’ということが非常にだいじである。 そこで、もし朝のラッシュ時に都心部ではマイカーよりもLRTの方がのろのろ運転が無い分高速になり且つ定時に出社できることを体験したとき、初めてマイカーからLRTへのシフトが明白な形で起きてくるであろう。
図5 広島市平和駅前通り線 優先信号・アンダクロス シミュレーション |
表定速度は駅から駅への実質到達実時間を考慮した平均速度 現行は11.5km/hである 本計算は、広電より広島市に提出した「結節改善概要書」記載データを参照して推定算出した |
●ヨーロッパにおいて効果が実証されている優先信号、アンダクロスで試算すると 表定速度は現行の約2倍まで早くなる計算。通勤マイカーからの乗換が期待できる。 ●優先信号実施には県警察の理解を、アンダクロスは建設省の協力が望まれる。 |
21世紀の交通機関にとって地球温暖化対策、環境問題対応より私交通から公共交通への転換、モーダルシフトは避けて通れぬ課題である。 環境問題からの効率の良いシフト先としては軌道系電車、わけてもLRTは最も注目されるものであろうが、これとて全地域をカバーする条件にはない。 それを補完する公共交通としてはバスであろうが、マイカーを代替するには細い、屈曲の多い、勾配のきつい郊外山麓地区における21世紀の注目すべき交通機関は低床ミニバスではなかろうか。
当会はこれに着目して広島市の数地点を選びこれからの対応を検討した。
規制緩和の要点は
1.HD西広島のケース 図6
2. 他の経路案
図6 己斐団地方面 低床ミニバス路線拡張案(府中地区例は掲載省略) |
3. ワンコインで乗れる、バス停まで200m 低床ミニバスの提案
「広島都市圏交通体系将来構想検討委員会」による市民アンケートの結果、路線を整理統合して分かりやすく、乗り換えの利便性向上、区域内循環線の要望などが採り上げられている。
即ち
ひとくちにバスといってもいろいろ性格が異なるので判りやすく分類すると
ハード=車両 | 幹線系 フィーダー系 |
大型バス 小型バス(ミニバス) |
低床化.→人に優しい |
低公害車 | 排ガス規制クリア車 電気バス CNGバス ハイブリッドバス |
環境に優しい |
注)ミニバス 広幅ワンステップ低床交通渋滞緩和効果あり(広島市己斐団地、豊橋市大崎方面)
ソフト面の改善
メンバーによる1年足らずの議論を重ねてきて纏めたものであるが、各章の執筆は分担して作成したためフォームの統一性が欠けている点はお許し頂きたい。
広島市においては過去に市内軌道交通のあり方について多くの議論や提案が重ねられてきたが、これらは市勢の右肩上りが継続するであろうという前提の議論ではなかったか。 21世紀を迎えるに当たって万事が変局点を迎えている。今や大局を見定め、旧い思考に囚われないで決断をするときではなかろうか。
本報告書は単に印刷して市民や公に提供するだけに止まらず、計画決定の最高責任者である市長に直接説明できるチャンスが与えられたことは望外のことと考えている。
特記したいことがある。それは広島市の情報公開度の立派さである。 市議会の交通小委員会も終始傍聴し報告することができた。また市の担当部署からは求めに応じ資料の提供を受け質問にも答えてもらった。
活動を通じ自覚したことであるが、公共交通システムの便益をを享受するのは一人一人の市民に他ならない。 十分な自覚と責任ならびに行動が必要であろう。われわれは今後とも広島市の交通について市民や利用者の立場から一貫して考えてゆきたい。
以 上
●フランスの公共事業で実行されている「客観的評価指標方式」を適用し試算してみると下図になりました。 これは私どものサイドから主観的に評価したものになっています。 項目毎のウエイト付も大事です。 市長さん、どうぞ貴方ご自身のお考えでウエイト付けと評価を試みてみて最終決断をしてください |
第2次提案:「広島市横川駅結節点改善提案」へ |