2007.8.31 

 1995年に札幌市にて始まった路面電車サミットについては2年ごとに開催され、内容は全編を当館に掲載しています。 別に、中部地区限定のサミットも先年より毎年開かれているようで、だんだん参加団体が増えるらしく、今年は広く参加募集がありました。館主も初めて参加しましたのでレポートします。

 今回の開催方式がたいへんユニークで、各地の活動報告はそこそこにすまし、発表された事例の課題について、出席した各地からのパネリストによる意見発表に重点が置かれていたことです。聴くよりは考える→思想の共有化が意図のようです。


日 時・場 所 時   間 内    容
1日目
8月25日(土)
 

 高岡商工ビル
9:00〜19:30 開会挨拶
鉄軌道再生の事例報告(9:00〜11:45)
  コーディネーター:川上 洋司教授 (福井大学大学院)
廃止危機脱出、三セク化、LRV導入など、鉄軌道再生が行われた過渡期においての、社会背景や市民の取り組み等の経過報告を受けながら、鉄軌道再生について共にに学ぶ
○各市事例報告
  ・北勢線、富山港線、豊橋鉄道、京福電鉄・福井鉄道、万葉線
○ポイント
  ・鉄軌道再生に於ける「課題」
  ・鉄軌道再生における「課題」を克服するポイント
  ・鉄軌道再生を果たすための「市民の役割」

ディスカッション(13:30〜17:15)
  コーディネーター:小林 一也 准教授 (RACDA高岡)
  コメンテーター  :中川 大 教授   (京都大学大学院)

その1、〜公共交通の役割〜

蝋山昌一氏講演録「万葉線再生を:試金石」をもとに、公共交通の役割について意見交換を行い、共に学ぶ。
○ポイント
  ・声なき声を出すためには
  ・公共交通の多面的機能を生かす経営とは
  ・地域の公共交通を支える仕組みは
  ・公共交通の存在を前提としたまちづくりとは
  ・市民参加のメカニズムとは

その2、〜公共交通とまちづくり「らしさを活かせ」〜
蝋山講演録「高岡らしさを活かす」をもとに、公共交通とまちづくりについて、意見交換を行い、共に学ぶ
○ポイント
  ・それぞれの地域の「らしさ」とは
  ・「らしさ」を活かすものは
  ・「らしさ」を活かす努力とは

その3、〜公共交通とまちづくり「LRTを活かせ」〜
   ゲスト:大場一成氏(富山ライトレール(株))
利用客が増加している万葉線と富山ライトレールの現況報告を受け、まちづくりの観点から、LRTの効果について、共に学ぶ
○ポイント
  ・公共交通を意識した沿線の変化
  ・LRTがもたらした住民意識とまちづくりの変化

次回開催地発表
  ・・・関市
  (注)路面電車の無い町で実施は初めて。
      RACDA高岡の出前応援にて実施するという企画
  (参考)今までの中部地区サミット開催地とテーマ
     2002/7 豊橋市 路面電車を活かしたまちづくり
     2003/11 高岡市 人がまん中まちづくり〜軽快都市宣言
     2004/7 岐阜市  路面電車のあるまちの未来を描こう
     2005/11 福井 路面電車が街をつくる 人が中心の街づくりをめざして
     2006/6 豊橋 市 親しまれ利用される路面電車を目指して
  
交流会 (17:25〜19:30)
2日目
8月26日(日)

9:30〜14:30 LRT体験ツアー
高岡駅集合−万葉線(アイトラム)乗車→越の潟着ー県営渡船で
富山新港横断→バスにて岩瀬浜へ→岩瀬町並み散策−
富山ライトレール(ポートラム)乗車→城川原駅下車、車庫見学→
富山駅北着−解散

サミットでの発言をメモの中から: 
(多数の発表・発言の中からこれはと思ったものを紹介します)
  • 存廃の決め手を赤字だけではダメ。波及効果を地域住民に返すべき
  • 鹿児島市電谷山線は収益が上向いている。過去に路線廃止をしたのは正しい判断だったか?と言われている
  • 北勢線は5億円×10年=55億の公補助が出るが、その結果赤字なら廃止の約束。現在は収支トントンまで来たのでクリアできそう。
  • 関市の美濃町線が廃止されて2年が経った。市民には「名鉄が決めたものは逆らえぬ」というムードがある。その中でどう考えるのかを考えている最中である。そのため関市民に必要性を喚起し、商工会議所へ運動中。
  • 岐阜のエンジェル基金は2000万円集まったものの、路線の撤去・組織弱体化のため解散。現在返金作業中。 しかし岐阜のまちづくりにとってはやはり路線が必要ではないかという議論あり。検討会を立ち上げ。
  • LRTの将来計画には2025年の人口構成と都市経済見込みとか、石油価格高騰と公共交通への移行等、ロングレンジ面でも検討を加えておくべし。
  • 4年前(2003年6月)に亡くなられた経済学者(金融論)であるが交通専門家でない蝋山先生の存続提言は、「お金は出せる人から出して貰う」という主張で、市民活動の考え方の大きな支えとなっている。
  • 「公共交通が街を造ってきた」というなら今後はこれを軸にして町の再生を図ったらどうか
  • 福井えちぜん鉄道のケースではROBAの会30名、200万円で株主になった。辛口のことも言う。福井鉄道存廃問題の際は高校生にアンケートをし、駅の清掃運動をして、市役所・鉄道と共労して声を纏めて届けた
  • 長崎県では島原鉄道の南部分の廃止の動きがある
  • 島原鉄道のようなところはDMV(デュアルモードバス)が良いのではないか
  • 今が一番豊かな時代の我々が、後世にとって大事な公共交通・鉄道を捨ててはいけない。子孫が次の公共交通を造るのはたいへんなことなのだ。
  • 駅の側に大きなホール、設備等を作るべきだ。福井市では駅側に図書館を作ったが効果覿面。
  • 沖縄県那覇市では4年前にモノレールができたが、3万人以上という予想以上の乗客がある。・・・「時間通りに動く」「酒が飲める」が好評の一部。
  • 各都市の新車・LRTのデザインを見比べると、それぞれの都市の特色が表現されている
  • TV番組での都市紹介では、福井市の場合は昔は東尋坊か永平寺だったのが今は路面電車に代わっている。動くから絵になり、地位らしさも表現できるので、今やLRTは都市の顔である。
  • 宇都宮市のLRT計画の実情は、順調に進んでいるわけではない。理由は市内最大のバス会社から反対意見が出ている。市中心と工業団地を結ぶ路線問題で市民の意見も分かれている。
  • 広島のLRT研究会は「平和大通りにLRTを」の提案を出している。これが実現すれば、LRT電停-慰霊碑-原爆ドームが一直線に見通せ、核廃絶の祈りにつながる
  • LRTデザイン論の多くが車体(LRV)のきらいがある。街全体の総合デザインとしてどうするかを議論すべき
  • 今後の運賃制度についてはヨーロッパの運輸連合を参考にせよ
  • 学生の特別割引は鉄道事業者の負担によって成り立っている。これでよいのか?教育制度に問題があるのではないか?
  • 富山市ではLRTがあまりに静かなため9件の交通事故が生じた。「電車が来るよ」の信号表示を検討している

●主催者:中部地区路面電車愛好支援団体協議会
  • とよはし市電を愛する会、ふくい路面電車とまちづくりの会(ROBA)、公共交通とやま市民応援団、万葉線を愛する会、RACDA高岡   
●共催:富山県交通政策研究グループ、全国路面電車愛好支援団体、
     全国路面電車ネットワーク
●後援:富山県、高岡市、射水市、万葉線(株)、富山ライトレール(株)


JR高岡駅に下車する。真ん前の万葉線に
乗車し、広小路に下車すると電停前が会場だ
会場は中心部はぐるりと各地からパネリスト
指定席。後ろが一般席。進行役がどんどん
パネリストに質問するので油断ができない。

各都市の発表はPowerPointを使用。
万葉線の乗客減歯止め成果には感動
夜は最上階にて夜景を見ながらの交流会
みなさん顔見知りが多いようで、話が弾む


2日目の LRT体験ツアー 参考地図
LRT体験ツアーは朝9:30に高岡駅前集合し万葉線と富山ライトレールの2社線に乗車するツアー。どちらも一般電車に乗車。
高岡駅前−万葉線(アイトラム)乗車→越の潟着−県営渡船で富山新港横断→射水市コミュニティバスにて岩瀬浜へ移動−岩瀬町並み散策−富山ライトレール(ポートラム)乗車→城川原駅下車、富山ライトレール車庫見学→富山駅北着−14:30解散

高岡市内線は道路幅に応じ軌道は単線と複線
とを使い分けて敷設されている
越の潟の渡船の乗り込み富山新港を横断。
目前には大規模な横断橋が建設中であった

富山ライトレール開業に連動し富山市は往年の
北前船の港町・岩瀬町を復元し観光化させた
城川原電停に隣接する富山ライトレール車庫
皆さんの関心はピットに潜り直結動力を実物見学



路面電車サミットは第1回の1995年に始めて札幌市で開かれて以来、2008年に福井市で第9回が開かれました。このINDEXはこれまで各地で開催されたサミットの記録集です
これに、高岡市で開かれたオープンサミットと広島市で開かれたLRT都市サミットの記録を加えました。