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bunken21
進化する路面電車
超低床電車はいかにして国産化されたのか |
2010.8.12 |
史絵(しえ) ・ 梅原 淳 共著 |
LRV開発の技術解説をJTRAMと広電Green Mover maxに注力した異色作 |
史絵さんは女性には珍しい、幼い頃からの路面電車強烈ファンで、鉄道愛好家として知られている。数年前までは鉄道女優?として活動していたのが、いつのまにか鉄道ジャーナリストに変身、今では鉄道作家へと活動を拡げた。その彼女が鉄道技術史のなかでも新型ライトレールの技術史について、師匠にあたる梅原淳氏と共著にて執筆刊行されたのは立派である。 共著であるので、執筆に当たってはJTRAMとその製品化である広島電鉄Green Mover maxの方は主として梅原氏、アルナ車両の開発した豊橋鉄道T1000形車の開発歴史は史絵さんと分担もあったらしいが、全面的な共作には間違いない。本書は、広島電鉄ファンの館主としては多いに興味をもち、知識を得ることができた。 文体は、晦渋になりがちな技術を判りやすく優しい口調で説明をされるのが心地よいし頭にスッとはいる。これは異色の鉄道技術書としてお勧めしたい。 |
目次 ●はじめまして 史絵です ●本文 プロローグ 国産の超低床電車が誕生するまで (コラム/ 路面電車愛好家への起点) 第1章 海外製の路面電車が日本に登場 (コラム/ 私の思う都電の魅力 ) 第2章 アルナ車両とリトルダンサーシリーズ (コラム/ 超低床電車はライセンス生産か純国産か ) 第3章 U3プロジェクト・JTRAM (コラム/ より国際的な車輌製造へ ) 第4章 白い電車、広島電鉄5100形デビュー (コラム/ 広島電鉄について ) 第5章 狭軌の純国産車、豊橋鉄道T1000形 (コラム/ 豊橋鉄道市内線について) 第6章 これからの超低床電車 (コラム/ もっと路面電車が輝く未来へ ) ●著者:史絵・梅原淳 共著 ●サイズとページ数:新書版 196p ●発行所:東京都千代田区麹町6−6 交通新聞社 ●定価:本体800円 |
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bunken24
呉市電の足跡
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2009.12.21 |
長船友則 著 |
(特別編) 館主友人が発掘した呉市電の歴史 |
館主よりお断り: 当館の路面電車LRT参考文献ページでは全国的な話題・知識となる近著のご紹介に努めています。 そういう意図なので採り上げる書物は、稼働している、または建設途次の路面電車・LRTに関するもののみ選択し、紹介するように心掛けています。 先般広島市を中心に鉄道史の発掘、編著で活躍する畏友長船友則さんから、「呉市電の足跡」なる著書の贈呈を受けました。呉市は広島市の隣接都市であり、実は母の実家の所在地でもありますので、戦前にも乗車した記憶があります。読み進めるほどに、私の知る呉市郊外の住居風景や路面電車の写真が多数掲載され、私的な愛惜ですが、この路線をぜひご紹介したいなと考えるに至りました。 著者長船さんによると、呉市は徹底的な戦災を受け市電に関する公式な記録が無く、資料を収集・判断・編纂されるに当たり苦労をされたようです。 |
呉市は旧海軍の軍港とそれを支える造船・兵器廠として拡大されてきた。工場は当初は呉港を取り巻くように建設されていた。その筆頭は戦艦大和を建造した大和船渠(今も大和ドックと呼ばれている)とエンジンを造った造機工場が広大な面積を占めていた。 第二次大戦が進むに連れ海軍航空機製造工場が市東部の広町を中心に建設された。呉市電もこれらの需要に応えるために休み山を迂回し、呉峠を越えて長浜町まで延伸され運転された歴史を持つ。 呉駅から跨線橋を渡ると大和ミュージアムがある。戦艦大和の1/10模型で有名。 (館主記す・地図制作とも) |
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目次 ●沿革 ・発起から呉電氣鉄道(株)の発足まで ・呉に電車が走るまで ・広島水力電気(株)と合併、広島呉電力(株)へ ・広島電灯(株)と合併して広島電氣(株)を設立 ・右側通行から左側通行へ ・芸南電軌軌道(株)の設立と開業 ・芸南電軌軌道による路線一本化に伴う問題とその解決まで ・芸南電軌軌道の路線延長と呉市電への移行 ・呉市電による戦前、戦後の電車事業 ・幻となった旧工廠内電車乗り入れ計画 ・電車苦難時代から市営電車廃止まで ●路線と設備 ●電車車両と運転の推移 ●電車廃止で他の都市に移った電車たち ●著者:長船 友則 ●サイズとページ数:B5版 48p ●発行所:(株)ネコ・パブリッシング 東京都目黒区碑文谷4丁目21番13号 電話 03−5723−6013 ●定価:本体 1000円 |
(付) 長船氏鉄道関係著書: 「広電が走る街 今昔」 JTBパブリッシング 「山陽鉄道物語」 JTBパブリッシング |
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bunken23
神戸の市電と街並み
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2009.3.6 |
神戸鉄道大好き会 編著 |
(特別編) 路面電車大好き人が発行した路面電車懐旧記録例 |
館主よりお断り: 当館の路面電車LRT参考文献ページでは全国的な話題・知識となる近著のご紹介に努めています。 私的なことですが、館主は一昨年広島市より宝塚市に転居し、それからは神戸市内に出かけることが多いのは自然の生活でした。 主に神戸市三宮駅を中心に、あちらこちらの街路を歩き回るにつけ、「ああ、ここは昔神戸市電が走っていたに違いないな」などと、今も広電で現役で走っている旧神戸市電の姿をこの道路に置き換えて空想することがままありました。 偶然、三宮のジュンク大書店にて、その名も 神戸鉄道大好き会編著「神戸の市電と街並み」 なる本を発見し、めくって見ました。 そして、「そうか! 懐旧の路面電車の本も独特な価値があるなあ!」と感得した次第です。 掲載されている震災前の神戸市内の建物写真を眺めるにつけ、路面電車の写真も宜しいのですが、被災前の旧市街の建物と空気が伝わってきて、新参者にはとても新鮮でした。 そういうことでいつもの参考文献とは主旨が違いますが、特別な事例としてご紹介したくなりました。市電懐旧本とは都市の歴史の証人にもなりえて、別の価値があります。 |
目次 ●神戸市電をカラーで画いた(写生) 7p ●神戸市電系統図 ●開通に関する資料表 ●廃止に関する資料表 ●ビューゲル用トロリーワイヤに改造した路線図 ●神戸市電の沿革 ●第1部 @石屋川線 石屋川 ←→加納町3丁目 A脇浜線 脇 浜 ←→三宮 B税関線 三 宮 ←→税関前 D山手線 三宮 ←→大倉山 E楠公東門線 大倉山←→楠公前 F平野線 平 野 ←→有馬道 G兵庫線 新開地 ←→兵庫駅 H湊川多聞線 楠公前 ←→公園西口 I高松線 楠公前 ←→東尻池2丁目 J松原線 中之島 ←→東尻池2丁目 K上沢線 大倉山 ←→東尻池2丁目 L板宿線 大橋9丁目←→板宿 M須磨大橋線 東尻池2丁目 ←→須磨駅 ●編著者:神戸鉄道大好き会 協 力:神戸市交通局・神戸市広報課 ●サイズとページ数:B5版 263p ●発行所:トンボ出版 大阪市中央区森ノ宮中央2−3−11 電話 06−6768ー2461 ●定価:本体 1500円 |
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世 界 の LRT
環境都市に復権した次世代交通 |
2008.7.23 |
三浦幹男 服部重敬 宇都宮浄人 著 |
欧・米・アジア・日:世界のLRT現況を視覚的に確認できる |
欧米では1980年以来路面電車の復権、LRT路線の新設とまざましい実現を続けている。翻って日本では研究、提案が続けられているが実行となると遅々としてしまう。本書はLRT実現の成果を写真は殆どフルカラーで、加えて適切な解説文を通じて、読者に直裁的に都市交通としてLRTの美しさ・楽しさ・有効さを訴えてくる。また見る・読んだ後にはわが国とのLRT格差を認識させる迫力がある。 LRTとは 十数年前路面電車サミットを実施したときLRTの日本語適訳を募集することにしたが、結局発見できなかった。次世代型路面電車という言葉もできたが、これではシステムというイメージが生じない。以来わが国ではLRTという単語そのままに、2008年版広辞苑にはLRTが新語として登録されているそうである。本書の標題もそれに従ったようである日本語になった証左となった。 |
目次 ●前ページ口絵:都市景観にとけこんだLRTが似合う街 カラー14p ●本文 第1章 ヨーロッパ編
第3章 オセアニア・アジア
あとがき 世界のLRT・路面電車一覧 ●著者:三浦幹男・服部重敬・宇都宮浄人 ●サイズとページ数:新書版 A5版 160p ●発行所:JTBパブリッシング 東京都新宿区払方町25-5 ●定価:本体2100円 ←ちょっと高いようですが材質・カラー数から納得でした |
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bunken21
線路にバスを走らせろ
「北の車両屋」奮闘記 |
2007.11.7 |
畑川 剛毅 著 |
鉄道乗客減に悩む北海道でDMV開発のアイデアと奮闘記 |
最近は従来型車両を飛躍して、電車+電池式ハイブリッドとか線路も道路も走れるDMVとか思い切った発想の車両が紹介され続け時代の転換を予測させ、注目を浴びている。が、開発当事者の苦心というものはなかなか伝わってこない。たまたま10/16に紹介したJR北海道DMV記事に関連する読み物が発売されたので関連してご紹介したい。 帯封より 「崖っぷちの赤字ローカル線。JR北海道の「車両屋」に、「線路も道路も走る車両に、お客さんを乗せろ」 こんなミッション・インポッシブルが下った。そして3年、知床をDMVが走った! |
目次 ●前扉ページ:試作DMV車と北海道で活躍中の特急写真 カラー8p ●本文 第1章 JR北海道の宿命 (コラム1 1999年の挫折 ) 第2章 DMV前史・75年前からの挑戦 (コラム2 戦地で活躍した軌陸用車 ) 第3章 アイデア満載の試験車完成 (コラム3 一時、覆面カーに ) 第4章 DMVが車検を取った (コラム4 乗り心地向上の秘密はゴムの穴 ) 第5章 「北のハンディ」を活かした開発の系譜 (コラム5 ”車両屋”のスタートはウソ発見器? 第6章 マイクロバス転用ゆえの弱点が (コラム6 社外に気づかされた利用法 ) 第7章 営業運転への道「小さく生んで大きく育てる」 (コラム7 「臨時列車、貸切バス」でバリヤフリー基準をくぐり抜けた) 第8章 新たな公共交通になれるのか ●著者:畑川 剛毅 朝日新聞編集局記者 04〜05年、北海道報道部 ●サイズとページ数:新書版 246p ●発行所:東京都中央区築地5−3−2 ●定価:本体724円 |
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路面電車新時代LRTへの軌跡 |
2006.5.26 |
服部 重敬 著 |
路面電車・LRTについての日本・欧米に渡る集大成的参考書 |
日本国内の路面電車情報もちろん海外の路面電車情報に詳しい服部氏が、2006年4月の富山ライトレールが開業した時期に合わせ発刊した、日本の路面電車ファンに贈る路面電車とLRTに関する集大成的参考書・提言書。内容は日本の路面電車の歴史はもちろん、海外先進国事例を基に、今後のわが国のLRT時代を迎えるための諸施策示唆までを切々と提言する。これら意図の結果はB5という大判で約400ページの大冊になったが、それだけに濃いコンテンツは、充分読者の期待に応えられよう。 データ中には世界約360都市の路面電車データが掲載されたが、これも本邦始めての貴重品。あと、電鉄会社記事最初にある路線網位置図が各社同縮尺でつくられており、各都市における路線の位置付け・特性が自然に見えてくるし、都市間比較ができる工夫もある。 |
内容 ●口絵:国外国内のLRV写真集 (カラー6p) ●第1章 路面電車廃止から再評価へ 路面電車の誕生から発展 戦争を経て戦後の最盛期へ 路線廃止が相次ぐ LRT整備への課題 ●第2章 路面電車からLRTへ LRTと路面電車 LRTの趨勢 低床式車両の動向 LRT整備のための仕掛けと仕組み 使いやすくするための工夫 ●第3章 日本の路面電車の現況 路線 車両 運行 設備
運賃 輸送人員 ●第3章 日本の路面電車の現況 国内事例1 札幌市交通局 軌道線 〃 2 函館市交通局 〃 3 東京都交通局 荒川線と 東京急行電鉄 世田谷線 〃 4 江ノ島電鉄 〃 5 富山地方鉄道 富山軌道線 〃 6 万葉線 〃 7 福井鉄道 福武線 〃 8 豊橋鉄道 東田本線(市内線) 〃 9 京阪電気鉄道 嵐山線 〃 10 京福電気鉄道 大津線 〃 11 阪堺電気軌道 〃 12 岡山電気軌道 〃 13 広島電鉄 市内線・宮島線 〃 14 伊予鉄道 市内線 〃 15 土佐電気鉄道 〃 16 筑豊電気鉄道 〃 17 長崎電気軌道 〃 18 熊本交通局 〃 19 鹿児島市交通局 ●第4章 LRTを実現するために LRT総合整備事業とLRT導入計画ガイダンス わが国初の新設LRT 富山ライトレールが開業 富山に続く都市は 公共交通の運営委託 LRT実現への鍵 LRTに求められる交通システムとしての要素 公共交通整備が都市の差別化につながる ●コラム 海外事例1 運営委託 〃 2 地下鉄から路面電車への方針転換 〃 3 LRTによる空港輸送 〃 4 電車優先信号 〃 5 大都市への導入 〃 6 バスとの共用走行路 〃 7 既存鉄道への乗り入れ (トラック・シェアリング) 〃 8 鉄道線のLRT路線への転用 〃 9 非電化路線への直通運転 〃 10 トランジットモール 〃 11 イベント・観光誘致策等との連携 〃 12 停留場の工夫 〃 13 路面電車の地下化 〃 14 路面電車による貨物輸送 〃 15 地表集電・架線レスシステム 〃 16 再開発地への導入 〃 17 LRTとデザイン 〃 18 LRTの車体長、編成長 〃 19 運賃収受方式 〃 20 公共交通の運賃制度 〃 21 芝生軌道 〃 22 路面走行のないLRT 〃 23 観光と路面電車 〃 24 LRT導入モデル都市・ストラスブールとの比較 〃 25 他の交通機関との連携 わが国でも出来ているLRTの事例 ●著者:服部重敬 ●サイズとページ数:B5版 397p ●発行所: 株式会社 山海堂 東京都文京区本郷5−5−18 ●定価:本体4200円 |
館主感想: いままで数々の路面電車関連本が出版されましたが、今までに例がないほど中身の充実した労作でしょう。特に筆者の独壇場である海外の情報を[海外事例]として、25編が日本の電鉄会社事例ページに対比するテーマを選んで、各章に併せて掲載されているのは工夫でしょう。このため既知の日本の会社の課題を読んだとき、そのケースの参考になる海外の先進的事例がすぐ傍に記載されており、即時に考えさせられる訳です。 この工夫が本書の新鮮さ、参考性を特徴づけています。 |