これは画期的な乗り物かもしれない。開業後まもない富山ライトレールに乗って、そう感じました。
JRのローカル線を第三セクターが運営するLRTとして復活させたという生い立ちも異例ですが、車両だけでなく停留所、サイン、広告など、すべてが美しく機能的にデザインされていることも、いままでの日本の都市公共交通にはあまり見られなかったことです。
日本の都市交通を観察すると、同じ内容の看板をいくつも並べたり、識別のために派手な色を塗ったりと、むだな看板やおせっかいな表示が多いことを痛感します。それが日本の街を汚く、醜くしている要因のひとつなのです。ところが富山ライトレールはヨーロッパのLRTかと錯覚するほど、シンプルでクリーンな景観が展開されています。
富山ライトレールのデザインは、東京に本拠を置く都市空間設計会社GK設計と、地元富山のインダストリアルデザイナーの協力で進められたといいます。ヨーロッパではLRT建設の際、計画の最初の段階からデザイナーを入れて設計を進める例が多いのですが、日本ではきわめて異例なことです。
車両の造形はクリーンで、車内を含めていっさいの広告がないことが、その好印象に拍車をかけます。停留所には「電車乗り場」などの大きな看板は掲げられず、出口表示も最小限の大きさでまとめてあります。おせっかいな日本型デザインからの脱却を図ろうという、強い意志を感じるのです。
公共交通に限らず、日本の都市空間を美しくするために必要なことのひとつは、悪いデザインにはNOを言うとともに、良いデザインには積極的にYESを言う、つまり褒めてあげることだと思います。
みなさんも富山ライトレールに乗った際には、いっしょに乗り合わせた地元の乗客に、素晴らしいデザインであることを伝えてほしいものです。そうすれば住民はこのLRTに誇りを持ち、素晴らしいデザインとはどういうものかを理解するのではないでしょうか。
そういった意識が他の都市にも広まって、日本各地に富山ライトレールのようなLRTが走るようになれば、この国の都市空間はいままでより少しだけ、美しく見えるようになるはずです。
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