広島LRT研究会: 21世紀における広島市軌道交通改良について提案 (要約版)


「広島LRT研究会」軌道交通改良提案書を広島市長に説明

99.8.1

 「広島LRT研究会」の手になる「広島市軌道交通改良提案書」の草稿が6月に出来上がったので、これはぜひ市の軌道交通の最終決定者である広島市長にご説明し意見を頂戴したいと思い立ちました。
 秋葉広島市長は自分でパソコンを操作しE-mailを使用されていると聞き及びましたので、早速「7葉の提案図を使用してご説明したい」旨6月のある日お昼12時に発信しました。 
 さて当日午後2時頃、果たして届いたかを確認するため電源を入れたら「即お会いし提案を聴きたい」旨の長い返事が入っていました。  広島市長って情報通信に強い方ですね。
 それならと、広島市道路交通局の幹部の方にも同席をお願いしたいと申し出て、会見日は広島市水害被災者対策のため若干延びましたが7月30日実現の運びになりました。 市長応接室にて1時間の説明会を済ませた後、市政記者クラブにて新聞社各社とTV4社に対し市長説明の内容をご披露しました。

 市長にいろいろご説明しましたが判りが速い。冒頭にLRTの定義を説明しようとしたら、「判っているよ」 。それもそのはず、最後にRACDA制作の「路面電車とまつづくり」を贈呈しようとしたとき「それは持ってるよ」という返事がありました。で、その本は陪席の交通局の方に差し上げました。

 そうそう「広島は日本一路面電車が利用使用されている都市です。もし広島市が優先信号とかアンダクロスを使用した真のLRTを建設すれば広島市が日本初のLRTモデル都市になるわけです。日本各地の都市で検討され始めた21世紀の軌道交通の規範になるわけです」とも申し上げました。

 以下に当日のスナップなどと当日使用したイラスト的資料を中心に本文の主要部も交え掲載します。


(私信)秋葉市長さ〜ん。 このHPをご覧頂くよう宣伝しましたがご覧になりましたか〜〜〜。 (=^_^;=)

市長室へ 平和駅前通り線案
模型も持参し緊張して入室  NHK 提案2番の説明図が放映された NHK
記者会見 模型説明
報告後市政記者クラブにて   NHK 提案4:新袋町駅新設計画は模型を使って NHK
TVクルー
市長にお願いし記念写真  某TV局のクルー 若い!! (逆取材とも言える)


報告書表紙
        平成11年(1999年)7月



広島LRT研究会 報告書       

21世紀における広島市内軌道交通の
改良について提案






広島LRT研究会
路面電車を考える会

報告書要点 (解説本文の一部を省略しています)

はしがき

 「路面電車を考える会」が広島市に呱々の声を上げたのは 1993年(平成5年)3月のことであった。広島市は日本で一番路面電車が生き生き活動し市民生活に貢献している都市といえないであろうか。しかし現況でははるかに理想には遠く、まずは路面電車をキーワードにして関連交通体系をも含めて毎月一回の例会を持つなどして勉強し、かつ将来のあるべき姿を探求する活動を行っている。 また、その活動成果は広島市民にのみ付与されるものではなく、路面電車の活用、復活、再生に関心をもつ日本中の都市市民の共通財産になるものと考えており、参画者については国内における路面電車に関心をもつ人に広く呼びかけて共同活動をしており、成果もホームページその他の手段を通じ公開している。

 かかる平常活動を続けていたが、1997年広島市議会に「都市交通問題調査特別委員会」が設けられ、ここにおいて広島市の将来の軌道交通体系のあり方が論ぜられた。 公開であったのでここの論議を会員の有志が傍聴して市民の立場からその是非について議論し、アストラムライン中心とした市の提案に対しては、税の使い方としてより効率の高い路面電車を中心とした提案を行ったし、また市の原案を市と市議会のみで決することなく「客観的指標評価方式」を参考に広く市民の意見を吸い上げる方式を採用するよう要望した。
 その後市と小委員会との論議が月を追って深まるのに応じて、路面電車を考える会の会員が散発的に研究するのではなく、これを組織的に検討し市に提案する方式を採用すべきとの提案が持ち上がった。 これを承けて1998年8月会員の有志による「広島LRT研究会」が発足活動することになり、1年弱の活動成果を得てここに発表に漕ぎ着けたものである。 当研究会はこれを広島市に提案するのみならず広く国内に公開し多くの有益な意見を得たいと考えている。 改めて読者に伝えたいことは「当会の行動指針とは、単に市の提案を批評することにあるのではなく、具体的提案を提出し、それが実行されることを希求するものである」ということにある。

 お断りしたいのは、われわれ研究会は交通専門家の集まりではなく、いわゆる一般市民が自分の目で見、聞いたこと、考えたことを纏めたもので、専門の目から見れば不正確とか思いこみがあるやも知れない。もしあればその意を汲み取ることにしていただき寛恕していただきたい。


1. 21世紀広島市軌道交通系交通体系で考えるべき前提条件
 1-1. 広島市の2050年の都市環境を前提に考える  

 (理由)

  1. 交通機関が企画され、実施が論議され、住民の同意を得て建設を初め、完成に至る期間は想像を超えた時間を要するのが通例である。当市の場合もすでに出来上がった都市の改造であるから既成地の移動に時間がかかるし、マスタープランが出来てからも財政負担の面から一斉実施は困難で部分着手の連続となろう。 計画者はとかく速い完成期日を提出するのが通例であるが、現実は着手後なにかの事由が発生して遅れに遅れるのも通例である。 このへんを睨み当市軌道系交通体系大規模変革は50年くらい先を考慮して着手すべきと考えた。
  2. まず21世紀初頭には環境問題悪化が顕著になり、都市内自動車交通は便利といえども無制限に使用できる状況は制限が生まれよう。必然的にモーダルシフト、車から公共交通機関へのシフトが要請されてくるし、具体的にどう応えるかが都市の大きな課題と責務となってくるだろう。
  3. 更に時間が進み2050年ともなると、化石燃料は資源的に有限であるのに、需要は例えば中国のような巨大人口国が生産と需要の増大で需給ギャップに加速をかけて来るであろう。 結果的には化石燃料の枯渇とガソリン価格に暴騰が起き、このことはマイカーから公共交通への遷移が起きる。 そのときに慌てて市が対応しても時間が消費され非効率、高負担となる。いまから予見したことを時間をかけてじっくり準備することが必要になる。
  4. 広島市としての市の負担力を予見するにはなはだ淋しいものがある。
    小委員会で配布された市自身の作成した資料によると、現在広島市人口110万人が10年後は118万人、20年後は119万人と横這い、これに国の予測統計を加えると50年後は人口は相当の%で減少していることであろう。この様子は広島都市圏人口でも全く同じ推移となっている。 市の資料で当会が注目したのはいぜんに予測した広島市人口都市圏人口とも下方修正されている点である。かっての右肩上がり成長はいまや過去の哲学であり、むしろ広島市は将来の環境予測を冷厳に受け入れる時節に来たことを市も市民も自覚し、その環境下を前提に思慮深く選択するべき時期にきたのではなかろうか。 世の中は変化が真実である。


 1-2. 2050年 広島市の3つの目標を考える

  われわれは下記の3つの街になることを選択した

  1. 絶対多数の市民に「魅力」を持たせられる街
    …市民の居住区が次第に郊外地に移って行くとき、ほとんどの生活が居住地近くで賄われて生活できる街になる。これに対し市が手をこまぬけば都心は次第に魅力を失ってきて、求心力のない街になってしまう。これは日本の多くの都市で犯した過ちである。これを防ぐには多くの計画的手だてが必要であるが交通機関も大きな役割を持つ。
  2. 職住接近した街
     …広島市は3方山に囲まれ、南は海である。かかる地政学的条件にあることを素直に受け入れ、郊外の山の斜面を開発する手法も徐々に限界に達したと判断し、むしろデルタ地域部分建築の多層化により職住接近を計るべきではないか
  3. 高齢者に優しい街
    …これは広島市に限った状況ではない日本共通の状況であるが、21世紀とは我が国が初めて経験する高齢者が人口の大きな比重を占めてくる時代である。
    ちなみに市の資料によると広島都市圏の65歳以上の人口比率は1985年は9.3%、1994年は13.0%だったものが2020年には25.4%となると予測している。この層を充分に考慮した都市計画でなくてはならぬ。


 

 1-3. 広島市は21世紀はなにで生きていくのか

  1. 広島市は中国地方の有力都市として生きる
    …21世紀は20世紀に比べより交通的位置と情報収集発信的位置が重要になる。広島市の場合を予測するに、地勢的には首都からの相対的位置、山が多く平野が少ない地形、東西南北の隣県との交通位置関係が岡山より不利などの点のを考慮すると中国地方で突出した中枢都市条件を満たしていない。然し有力都市としての条件は卓越したものがあるのでこれを十分に生かす都市づくりをすべきである
  2. 2次産業、3次産業の卓越したものを大事にしたい
    …他の政令指定都市に比べ広島市は2次産業の比率が高い。このことは行政の比重に頼る都心に比べ活性維持に有利と考えるので、21世紀も大事な資産としてこれの維持発展に注力をして行くべきである。
  3. 他の政令指定都市のマネをする必要はない
    …札仙広福の言葉が存在するように、政令都市間で横並びに比較し施設を揃える傾向が見られる。しかし都市には自ずから都市の性格、環境、事情が異なるのでいたずらに他の政令都市のマネをする必要はない。



2. 広島市の策定した新交通による東西線案の問題点

 広島市21世紀のありかたを考慮しながら、都市交通問題調査特別委員会における2年弱に渡る討議を聴き一緒に考えたつもりであったが、市の現在の財政状況と今後の財政見通しを聴くに、緊縮が続くという環境下で補助金を得るにしても3,000億にも及ぶ東西線建設を行うことは、畢竟市財政の今後更なる逼迫と市民の担税負担を長期に渡って招くものではないかと疑義をもった。 ではその論拠を幾つか摘出する。その多くは議員による質問がヒントになったものもある。
なお、市の新交通案では高架案と地下案との2案が提出されているが、高架案は平和公園前を高架で走る問題を含み現実味が少ないと考えるので、議論を簡略にするために地下案の問題点摘出のみに絞る。(理由は13項)

  1. 収入の基礎である乗車人員の算定であるが、東西線が建設されると線路を挟んで左右500mの人は地下鉄に乗り移ってくるという想定で計算されている。東西線地下案では広島駅・西広島駅間の中間駅数が5駅しかない。例えば東西線の駅予定地が土橋で次駅は白神社、その次駅は八丁堀となっている。平和公園前には駅はできない。こんなに都心を飛ばし飛ばし走行する地下鉄案なのである。地上からひょいと乗れる路面電車からわざわざこんな遠くの地下鉄にそんなに乗客転換するのか、しかも運賃が高くなるのも承知で。市民・庶民の心理からして無理な想定ではないか。
  2. その乗り移り論だが、地下鉄は路面電車よりずっと速いという比較論が出た。よーいどんで両者を走らせれば地下鉄が速いのが当たり前。実は地下鉄には駅間距離が長い、階段の上り下りのハンディがある。質疑でも「運輸当局の説明によると、実質移動時間を計るとどちらも19分かかり、階段の上り下りを考えたらLRTの方が優れている」との意見が出た。これは大事で上記の職住接近、都心内移動を想定すると多くの人は地下鉄よりも地上走行のLRTを選択するのではないか。ドアtoドアの「時間と楽さ」を秤にかけて選ぶのだ。この点からマイカーの吸引力が存在する。
  3. 東西線利用者想定を路面電車からの転換が4万人、バスからの転換が2万人の想定である。こうなるといま黒字の路面電車は赤字転落、真っ赤っかのバス会社は全部大赤字に転落するのではないか。本来の収支は新線建設部分からの乗客増からの収入増が望ましいが、西風新都の条件からムリなので、かなり強引に路面電車、バスから移転することにして辻褄を合わせているのではないか。これだけの乗客移転の前提にて地下鉄案の感度分析(収支の限界、余裕度の見極め)をやると±10%と言うことであった。このことは新線の収支が厳しく、限界的な乗客数予測に支えられている分、赤字になる公算は大であろう。予測されることは3者みな赤字に悩む姿が想定される。また赤字に陥った場合の電鉄会社とバス会社に対する営業補償の質問も出たが、この補償費は予算には組んでいない。 計算外の支出になるのでは。
  4. 前述のように当市の人口増は2020年最大値時点で6%増、後は暫減である。ということは通勤者数はその前に減り始める。これは人口の予測であるが、その前に働く人の人口、換言すればtaxpayer。市税納付者人数のピーク時予測であるが、これが人口ピークの数年前に訪れる。建設に20年もの長時間を要する東西線案は出来上がったときには、利用者の絶対数が減っていたという悲劇的要素を内包している。我々はデルタ地区の軌道系には建設が短期間で済むLRTネットの建設を提案するものであるが、これなら人口の動態に合わせて建設すれば資金も建設期間もジャストミートできると考える。
  5. 市の収支説明の大半は建設費の捻出法と償還に割かれている。建設収支も大事であるが、その後の営業採算も同様に大切ではないか。なにしろ乗客数が上記想定のように限界数的前提で組まれており、西風新都の定住数や市民の所得増など予定通りに行かないことが考えられる。この営業収支の赤字が発生した場合には建設時の国の補助は出ない。結局市民の税金からの負担に転嫁する。 最近呉ポートピアの赤字処理問題が論議を呼んだが、言わせてもらえば呉ポーのケースは被害が軽い。つまり赤字が明白になった時点では、閉鎖し、要員は解雇し、スイッチを切ればそれ以上の出費は防げる。これに反し地下鉄が一旦市民の足として動き出した以上は、仮に赤字営業、市民の税金で補填が明白になっても、打ちきることが出きるだろうか?取り壊すにも莫大な費用、漏水組み上げや保安用電力で単純維持費も大。それより不便を強いられる市民が廃止を納得するはずも無かろう。この運用は3セクによってなされることも事の顕在化を遅らせよう。 悪いことに実行の正否が明白になるのはたぶん数十年後で立案実行の責任者は不在の時点ではなかろうか。
  6. 直感的な話だが20年の工事期間だが、完成は数年遅れるのではなかろうか、その跳ね返りで当初予算が結果的にオーバーするのではなかろうか。例えば東京の地下鉄の例とか、いや身近かには紙屋町の地下街建設の例を見れば普通の連想だろう。
  7. 市民の目からは新交通も路面電車もバスもどれが便利で安いかを選択する公平で厳しい立場である。地下鉄ができたお陰で広電やバスが減便し始めたの、いや潰れたのが起こっては迷惑である。
  8. 市は東西線への定額率を超えた援助を行う根拠として「公共交通機関だから都市の装置なる概念で目いっぱいの援助を与えたい」と提案があった。公共交通は市民生活の基礎的ユーティリティーであるから「都市の装置」としての援助を与えることは市民として頷けることである。但し都市の装置として援助を出すなら市の東西線だけに出すというのは論拠が乏しい。市民にとっては誰が経営者かは関係ない。 必要なものには平等に出すべきで、むしろ可部線や芸備線の複線化や電化に支出しても良いのでは。また後記する市民提案のLRTネットの方にこそ出してもらいたい。これらの支出総額は、少々補助を出しても東西線ほどの負担にはならず且つ即効的効果が出るのではなかろうか。市民提案のLRT東西線のキャッチフレーズは「新交通に注ぎ込む総資金の10分の1でLRT網建設」できるである。また都市の装置という提案をする場合には市民一人あたりの負担額も提示すべきである。
  9. 素朴な疑問であるが、「他の大都市の公共交通機関は軒並み累損だ」との赤裸々な数字が挙げてあるが、なぜ当市に限り「開発の進まぬ西風新都を新顧客とし山をトンネルで潜り水の都の地下を通す割高な地下鉄が成立=黒字」なのか直感的な疑問。
  10. 新交通を地下鉄で作ればトンネル断面は若干小さくなる。広島市は市中を6本の川が流れるデルタの街である。それを全部貫いて工事をするのであるから、その分頑丈に作らざるを得ない。断面積の差額を超えてその分工事単価もけっこう高くなるのではないか。いま田中町の下水道工事や紙屋町の地下街工事にもこんな現象はないのだろうか。 果たして「難工事→今更止められない→予算不足→追加予算」の可能性はないのか。
  11. 市民の素朴な見解としてはこれだけの超大型投資をなぜ西部地区の広島市民のために組むのか。では東部や東南部の市民の軌道系交通の恩典は永遠にないのかの疑問が湧くのも当然である。
  12. 市はこの地下鉄案が採用されると年間100億円程度の市投資予算ですむと説明があったが、これは道路予算との互換である。パイの奪い合いである。
  13. 市は昨年は新交通高架案のみを採算成立として提案した。本年に至り工事を2期に分けることにより地下案も成立するとして2案併記になった。推測であるが、高架案では景観上の反対が大きすぎ市民が納得するはずがないので、地下案を何とか成立させる逆算法にて2期分割や都市の装置案を案出したのではないかと疑問を持った。故に高架案は実施可能性は少なく地下案が本音ではないかと推察して論議した。


3. 広島市交通小委員会より新交通による東西線案市議会報告書への疑問点 (記載略)


4. LRTネットによる広島市軌道系建設プランと結節点の改良
 4-1. アストラム延長案とLRTネット案との交通負荷分担提案 

前項まで詳述したように、広島市内のデルタ部分をなにがなんでも新交通の高架や地下で通すという提案は環境の問題や資金と運用費の点から問題が大きい。そこで広島市の軌道系交通を考えるには両者の長所を取り短所を補う住み分け案が合理的と考え提案したい。 図1
既に広域公園まで延びているアストラムライン*は既成事実である。但しこれを中途で止めておくことは誰が見ても不自然な話であろう。そこでこの線を市案の通り西広島まで延長する。市内のデルタ地区は建設費・運用費負担の少ないLRTネットを広く敷設する。市内デルタのLRTネットは広い地域が対象になるが、建設には緩急を設け、第1次としては平和駅前通り線の建設に着手する。 これが市の東西線案の機能を代替する。 図2
案の詳細を説明すると、現行己斐駅前を大改造・拡張しJRからの徒歩を強いられる現行広電己斐駅をぐっと広場の内側に持ってきてJRと平行のホームを2本設ける。図3 広電新ホームとJRホームの間にバスホームを平行に入れる。 延長して西広島駅に伸ばしたアストラムはJR、バス、LRT(広電)の上に直角に交わる。アストラムのホームからはJR、バス、LRTへ階段と上下両方向エスカレータとで結ぶ。また現在のバスベイは3台分であるが、これを約3倍の9台分にして周辺地区へのフィーダーバス出発点に当てる。JR駅は橋上駅が適切であろう。
これが実行されれば必ずや懸案の己斐地区の再開発も自ずから提起され、長年の課題解決が図られることになろう。
広島のデルタ地区の軌道交通は建設期間が短く建設費と維持費の負担が楽なLRTネットに負担させる。 広島都心で問題なのはアストラムのデルタ側にはどこにも既成軌道との結節点を持っていないことだ。 乗客は終端の本通や県庁前で降りると徒歩で道路に出て路面電車の電停で乗り換えている。 この部分の改良提案であるが、本通駅地下2階のアストラムの線路をもう少し傾斜しながら延長し袋町まで持ってきて、この高さを地下1階部分まで持ち上げて地下1階路下式構造の新袋町駅を作る。図4 一方広電宇品線は、本通電停を出てから下がりはじめ、新袋町駅にて共用ホームに至る。広電はさらに路下にて延伸し白神社前にて平和駅前通り線と地下1階にて交差し、ここを通り過ぎてから上りはじめ、中電前あたりにて地上にもどり地平の中電前電停に至る。新袋町駅は2本の島式ホームを作りアストラムの末端ホームと共用すれば、広電とアストラムの乗客は同一方向同一ホームでシームレスにての乗換が確保できる。この方式ならアストラムの乗客は容易に宇品線に乗り換えができるので市の南北線案の機能を代替できる。また西広島を出発したLRTは白神社交差点では路下式で あるため鯉城通りの大交差点にて信号待ちすることなく渡りきることができ表定速度向上に役立つ。更にこの交差点では宮島から来たLRTを広島駅方向や宇品方向に地下で分岐進行させる運用も考えられる。 

図1 広島市軌道系建設プランと結節点の改良案

LRTネット



 4-2. 4新線の建設によるLRT広域ネット案 (路線別詳細説明略)
  1) 平和駅前通り線 

図2 広島市LRTネット提案 第1期=平和駅前通り線案

広島市案
 新交通高架案(広域公園〜己斐トンネル。己斐〜広島駅は全線高架)…己斐より西800億、市内1400億円
 新交通全地下案(広域公園〜己斐トンネル。己斐〜観音町は高架。観音〜広島駅は地下)
                         …己斐より西広域公園まで800億、市内部分2200億円
広島電鉄平和大通り案
 現行宮島線は己斐より平和大通りを直進し、NHK前にて前の3連接車は広島駅行きに、後ろの3連接車は
 宇品行きに分割して走行。現行己斐線のうち西観音町〜土橋間は廃止する。
「広島LRT研究会」によるアストラム・LRTネット第1期建設への市民提案
@広域公園前まで来ているアストラムラインを「都市の装置」の考え方を採用し、己斐駅まで延伸する。 
A広島電鉄の現在の己斐駅をJR西広島駅の方へ曲げてホームが平行になるよう付け替える。LRTにて己斐より平和大通りを直進し、田中町にて駅前大通りを経て広島駅へ新線建設し、宮島線より直通乗入する。アストラム橋上駅とはペデストレリアンデッキにてJR、バス、広電と立体的に結ぶ。
同時に己斐駅前地区の再開発を実施する。 
工事費は、広域公園〜己斐トンネル〜己斐駅800億円+市内LRT建設費100億円?=900億円にてすむ。

東西線比較


 付:平和駅前通り線についてわれわれの主張

平和大通りは広島市の顔であり、平和都市としての広島市のステータスと密接な関わりを持つ特別な存在である。市民の関心も高く、ここにLRTの路線を敷くには市民合意の形成が前提である。この通りは、フラワーフェステイバルに代表されるイベント広場としての役割をも兼ねており、行事期間中の通行が路面電車の場合相生橋経由線に迂回するという制約もあるから、基幹交通路として比重をかけることに問題もある。当LRT研究会は、これらの条件を勘案した上で、なお「平和大通り線」の新設を提案するものである。その論拠は次の通りである。
  1. 〈被爆者の犠牲の上に造られた平和大通に路面電車はふさわしくない〉とする意見に対し、すべての交通を許さないのであればともかく、排気ガスを撒き散らす自動車が許せて、路面電車が不可というのは、筋が通らない。寧ろ、被爆3日目には部分運転 して負傷者を運んだ路面電車こそがふさわしいのではないか。
  2. 〈平和大通は祈りの場である〉との意見には同感である。であるとすれば、跪いて祈る人の目線に最も近いのは、自動車よりも、高架または地下の鉄道よりも、路上を電気動力で走るLRTではあるまいか。 広島の被爆体験を訴えるものは原爆ドームであるが、実はあれはモノの破壊を暗示するものであると考える。あの原爆の日にヒトが如何なる惨禍を受けるかを教えるには平和記念資料館前に立つ「嵐の中の母子像」こそそれを物語るものではなかろうか。LRTが通ればちょうど良い高さ、目線、速度からこの像とその奥にある記念館、慰霊碑とを一直線に見通せるわけで自ずと通過者は悲劇を阻む気持ちを新たにすることになろう。またこれは一人市民のみならず、遠く広島を訪れる他都府県の旅行者や外国からの来日者にも新たに訴えることになろう。 平和大通りにLRTを通すことは広島市にとって原爆の惨禍を訴えるに「ドームと母子像」という2体・南北両サイドからの訴求ポイントが生まれるという新しい成果が生まれよう。
  3. 〈平和大通から一切の交通を締め出そう〉とする意見には賛成し兼ねる。
    平和大通を挟む相生通と国道2号線は約1,300m離れており、何らかの形で平和大通りを交通基幹路として利用しないと、都心に1,300m巾の真空ゾーンが生じてしまう。
  4. 〈市民の集合する記念館地区に軌道系交通乗降場は不要なのか〉この地区は広島市随一の市民の集会場所である。即ち平和公園、平和記念資料館、国際会議場、厚生年金会館、アステルプラーザと多くの市民が集中するポイントを抱えている。現在はここに軌道系施設が無いし、バスはたまに来る人には判りにくいので、多くの来場者は参集時と解散時には袋町電停や原爆ドーム前まで徒歩で歩き電停を利用している現況である。ここはぜひともLRTを敷設し市民に便利を提供したい。  広島市の東西線地下鉄案では土橋駅の次は白神社前駅となっており、平和公園前は地下で素通りする案になっている。それでは折角交通便益が提供されうる道具を作りながらみすみす市民の便益を塞ぐことにならぬか。
  5. 〈聖地である平和大通りを、営利企業に明け渡すことに反対する〉意見が強いことも承知しているがいかがであろうか。90年の間、広島市内交通の枢要な部分を担ってきた企業を「営利企業」と決めつけることに抵抗を感じるし、官公営事業の効率改善に、競争原理、民間経営手法導入の必要が叫ばれて久しい。

    
   2)白島長束線     (詳細説明略)
   3)東雲線        (詳細説明略)
   4)相生天満通り線   (詳細説明略)


 4−3. シームレス乗換えによる結節点の改良(図1)

 広島市を訪れる外来者が漏らす言葉に「広島の都市交通は(軌道系)乗換が信じられぬくらい不便だ」というのがある。 経緯は論議すまい。前記「広島市軌道系建設プランと結節点の改良案」図1に示すように、LRTネットを整備するにつれ結節の改良を計れば徐々に解消に向かうであろう。 下記の地点が改良の対象になろう
 西広島総合駅新設による、JR,アストラムライン,広電,バスの結節改良 図3
 地下袋町駅新設によるアストラムライン・広電の結節改良 図4
 3
広島駅の結節改良 平和駅前線と既設比治山線との分離、東雲線の新設時等を契機として、広島駅前地区の路面電車相互間およびJRとの結節改良を計る
 白島長束線を契機に長束駅の結節改良
  〃牛田駅との結節改良
  〃 JR駅の新設による交通対応(基町・白島公共施設結集地区への対応)
 

   1) 西広島駅(己斐駅)、アストラム、LRT共存による改良計画(図3)

図3 西広島総合駅案
   −JR、アストラム、LRT、バス 間の結節改良と駅前再開発−

西広島総合駅

・このマスタープランの方式は小倉駅と豊橋駅の先年の改良工事の成果を参考にした。
・アストラムは今のままでは誰が見ても中途半端で未完成。西広島まで延長する。800億円。
 この部分のみ建設すれば赤字は必至であるが、上記主旨からこの線増部分は都市の装置と見なして
 市より建設補助を考慮する。
・西広島からはLRTに乗り換える。これの平和駅前通り線なら建設費は100億円。地下鉄案なら2200億円  なのでLRTを採用する。建設費、毎年の維持費ともたいへんな節約になる。建設期間も極小ですむ。
・己斐乗り換え方式なら己斐駅前商店街の活性化は必至であり、己斐再開発が現実のものとなろう。
・広電のプラットホームは70mとし、5000系が2編成停車できる。またプラットホームは宮島線、宇品線 は同一ホームで対面し同方向乗り換えがシームレスにでき、乗車降車とも現行よりはるかに便利。
・独立の留置線は1線設ける。
・電車操作場、運転手控え室等はアストラム駅2階に設ける。
・バスベイを設ける。両面使用60m1面のホームを考えた。 これでも現行3台横付けが8台横付けで  きて、3倍弱の収容増となる。 LRTとバスとは同一平面乗り換えとなる。
・アストラムは線路は3階。橋上駅は2階に設け、改札を出るとJRホーム、広電ホーム、バスホームへ は直接降りられるようにする。(上下エスカレータを設ける)
・アストラム2階のコンコースは両側に商店街を設ける。
・JR2階は駅関連施設以外にレストラン、物販などの店を設ける。JR駅から直接の西乗降口を設ける



   2)地下鉄袋町駅新設によるアストラムライン・広電接続案 (図4)

図4 アストラムライン・広電 地下袋町新駅新設による接続案(イメージ図)

新袋町駅


  
 4−4. LRTの採用と優先信号、路下式交差点(アンダクロス)採用による表定速度向上案

 LRT(Light Rail Transit)と既存の路面電車はどこが異なるのであろうか? LRTのTとはTransitつまりsystemを指している言葉である。 つまり、既存の交通ルールに従う都市に最新鋭の低床式とか高加速高減速の電車を導入しても、それだけではLRTをなしていない、それだけではLRV(Light Rail Vehicle)だと言われる所以である。電車車体以外にいろいろなソフト面の改良を加えない限り所詮新鋭の能力を使いきれない。
 新しい電車の能力を生かすには路線の改良、乗降システムの改良とかいろいろ考えられるが、広島市の場合最も有効と考えられる施策は公共交通優先信号制度の採用と幹線道路横断部へのアンダークロスの採用との二つであろう。
 図5「広島市平和駅前通り線 優先信号・アンダクロス シミュレーション」に示すように、もし第1次建設案の平和駅前通り線を想定し現行の表定速度*向上の手段として、空港通り、舟入通り、鯉城通り、流川通り、稲荷町の大交差点には、電車が路下にてくぐり抜けることができるアンダクロスを設ける。更に東観音町、西平和大橋両端、平和大橋東、富士見町、平塚町河岸、駅前大橋南端の6カ所の中交差点には電車優先信号を付ける。つまりこれら交差点ではLRTが近づくと距離を関知して電車の横断に差し支えない距離を測り信号を青にする。 これは公の交通が私の交通に優先するという考え方である。もしこの両方式を広島市の平和駅前通り線で実施した場合をシミュレーションしてみたのが、図5の推算で、現在の路面電車表定速度11.5km/hは、24.8km/hと倍増し‘路面電車は遅いから’の悪口は一掃されよう。優先信号方式はヨーロッパの多くの都市で採用され成功している方式である。
 通勤者も環境問題からマイカーの使用の問題点は理解はしているはずである。現実には、多くのマイカー通勤者にとっては‘定時に会社に着く’ということが非常にだいじである。 そこで、もし朝のラッシュ時に都心部ではマイカーよりもLRTの方がのろのろ運転が無い分高速になり且つ定時に出社できることを体験したとき、初めてマイカーからLRTへのシフトが明白な形で起きてくるであろう。


図5 広島市平和駅前通り線 優先信号・アンダクロス シミュレーション

表定速度は駅から駅への実質到達実時間を考慮した平均速度 現行は11.5km/hである
本計算は、広電より広島市に提出した「結節改善概要書」記載データを参照して推定算出した
シミュレーション数値
●ヨーロッパにおいて効果が実証されている優先信号、アンダクロスで試算すると 
 表定速度は現行の約2倍まで早くなる計算。通勤マイカーからの乗換が期待できる。
●優先信号実施には県警察の理解を、アンダクロスは建設省の協力が望まれる。




5.運賃収受の改良案と将来の運賃収受への示唆   (掲載略)
 5−1. 乗降時間短縮のための運賃収受手段対策     
 5−2. 車両の改造 (乗降時間短縮を狙いとした改造案) 
 5−3. 2050年のカードシステムの進歩と対応        
 5−4. 共通運賃とゾーン制への切替             



6.車との共存について −ワンコインで乗れてバス停まで200m 低床ミニバスの提案 

 21世紀の交通機関にとって地球温暖化対策、環境問題対応より私交通から公共交通への転換、モーダルシフトは避けて通れぬ課題である。  環境問題からの効率の良いシフト先としては軌道系電車、わけてもLRTは最も注目されるものであろうが、これとて全地域をカバーする条件にはない。 それを補完する公共交通としてはバスであろうが、マイカーを代替するには細い、屈曲の多い、勾配のきつい郊外山麓地区における21世紀の注目すべき交通機関は低床ミニバスではなかろうか。
当会はこれに着目して広島市の数地点を選びこれからの対応を検討した。

 6-1 2001年度「需給調整規制」廃止がキッカケになる

  規制緩和の要点は

  1. 路線バスの自由化:
         参入・退出…免許制から→許可制へ
         運賃   …認可制→届出制へ
  2. イギリスの場合(1985〜)ミニバスが増えている
  3. 市内バス路線についてはいまの大型バス一辺倒より幹線系大型バスと路面電車・LRTのフィーダーとしての地域内(団地内)循環式のミニバスとに2極分化してくるであろう。
  4. 既存のバス会社以外に一般の交通運輸業者が自由に参加できることから、運賃とサービスの向上をめぐって既存と新規参入者との企業間競争が激化するであろう

  

 6-2 広島市のケース 

  1.HD西広島のケース 図6

  2. 他の経路案

図6 己斐団地方面 低床ミニバス路線拡張案(府中地区例は掲載省略)

己斐地バス路線


   3. ワンコインで乗れる、バス停まで200m 低床ミニバスの提案

 

 6−3. 広島市内幹線系バスについての提案

「広島都市圏交通体系将来構想検討委員会」による市民アンケートの結果、路線を整理統合して分かりやすく、乗り換えの利便性向上、区域内循環線の要望などが採り上げられている。
即ち

 

 6−4. 将来形のバスの分類

    ひとくちにバスといってもいろいろ性格が異なるので判りやすく分類すると

ハード=車両 幹線系
フィーダー系
大型バス
小型バス(ミニバス)
低床化.→人に優しい
低公害車 排ガス規制クリア車
電気バス
CNGバス
ハイブリッドバス
環境に優しい

      注)ミニバス 広幅ワンステップ低床交通渋滞緩和効果あり(広島市己斐団地、豊橋市大崎方面)

 ソフト面の改善

  1. 運行経路・乗り場の分かりやすさ
  2. 乗り換え利便性(シームレス、バリヤフリー化)
      東バスターミナル…広島駅前Bブロック活用
      西バスターミナル…西広島駅前再開発
       (注)運輸省「駅前整備事業補助金制度」活用
  3. 運賃 運輸連合へ
        JR、アストラム、路面電車、LRT、バス共通切符(乗換を含む通し切符採用)  (ゾーン制を導入)
  4. 運行ヘッド改善 定時等間隔運転
  5. 停留所の改良(屋根付き、バスロケーションシステム
  6. 公共交通優先信号採用 (注)警察庁「環境に優しい交通管理」参照
  7. 商店街の駐車サービス券→公共交通乗り物券
  8. 行政との一体化…行政と交通事業者の役割分担を明確にする(浜松市の例)



あとがき

 メンバーによる1年足らずの議論を重ねてきて纏めたものであるが、各章の執筆は分担して作成したためフォームの統一性が欠けている点はお許し頂きたい。
 広島市においては過去に市内軌道交通のあり方について多くの議論や提案が重ねられてきたが、これらは市勢の右肩上りが継続するであろうという前提の議論ではなかったか。 21世紀を迎えるに当たって万事が変局点を迎えている。今や大局を見定め、旧い思考に囚われないで決断をするときではなかろうか。

 本報告書は単に印刷して市民や公に提供するだけに止まらず、計画決定の最高責任者である市長に直接説明できるチャンスが与えられたことは望外のことと考えている。

 特記したいことがある。それは広島市の情報公開度の立派さである。 市議会の交通小委員会も終始傍聴し報告することができた。また市の担当部署からは求めに応じ資料の提供を受け質問にも答えてもらった。

 活動を通じ自覚したことであるが、公共交通システムの便益をを享受するのは一人一人の市民に他ならない。 十分な自覚と責任ならびに行動が必要であろう。われわれは今後とも広島市の交通について市民や利用者の立場から一貫して考えてゆきたい。

                                        以  上


以上が提案書の内容ですが、秋葉市長へ報告の最後に下記の別図を提出しました

秋葉市長にお願い:
東西線がらみ各種案を「客観的評価法」にて比較評価していただけませんか?

●フランスの公共事業で実行されている「客観的評価指標方式」を適用し試算してみると下図になりました。
これは私どものサイドから主観的に評価したものになっています。
項目毎のウエイト付も大事です。 市長さん、どうぞ貴方ご自身のお考えでウエイト付けと評価を試みてみて最終決断をしてください 

  読者のみなさまに提案: あなたも評価してみませんか?↑




報告書本文の入手について:

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