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路面電車を考える会例会 講演録20
広島市の交通課題に立ち向かおう
−交通事情総括・バスと自転車の交通社会実験・
可部線存続問題のlこれから−
広島市道路交通局都市交通部交通対策担当課長 高井巌氏 |
02.5.30 |
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講演日時:2002年5月8日 6:30p.m.〜8:30p.m. |
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場所:広島市鷹野橋 広島市女性教育センター
(Web) |
館主前言:
広島市は110万人の人口を有する政令指定都市です。 広島市には市営の交通機関は無く、長年にわたり路面電車以外にバス会社が6社も経営をしている民営交通機関が強い都市というのが特長でしょう。 その都市に1994年に市も加わる3セクが経営する新交通アストラムラインができたのは歴史的な事実と言えます。
広島市は地形的にはぐるりを山と海に取り囲まれた都市です。ということは平野部が少なく、都心はわずかな面積のデルタ地域にあり、多くの市民が郊外地の山を切り開いた丘陵地に住み、都心に通ってくるという環境になります。 かかる環境の市民に対し合理的な交通体系を提供するため広島市は長年苦心をしていることがよく理解できます。 他の政令都市にくらべ地勢的に不利なこの都市で、将来交通体系とモーダルシフトや環境に応じた市としての交通実験と成果を担当課長から市民に報告をしていただきました。
高井巌氏略歴:
1953年 広島市生まれ
1976年 広島大学工学部土木学科卒業
1978年 広島市役所入所
1980年 広島市都市計画局計画部
1984年 広島市建設局土木部
2001年 広島市道路交通局都市交通部 |
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高井巌氏講演要旨
(1)広島市の交通事情
- 日本の政令都市のうちで広島市のようにバス会社が6社もあって競争が激しいところはない。 今年のバス規制緩和後の様子がどうなるか注目している
- 市内バスの利用者数がかなり急に減っている。バスが渋滞しやすい乗り物という点が原因であろう。悪循環を繰り返している現状。路面電車とJRは横ばいの状況である。
- デルタ内の既存交通の機能改善では下記のようにいろいろ推進します
- 交通拠点の結節改善とし広島駅、横川駅、西広島駅、広島港の4カ所の改善を実行中です
- 路面電車については
広電宮島線の西広島駅から平和大通りを直進し江波線へ接続する「江波線接続案」について、交通事業者等と協議をしながら、緑大橋の架け替え計画と併せて計画を具体化し、事業化を図ります。
広島駅から駅前大橋を直進して、稲荷町交差点で接続する「駅前大橋ルート案」について、関係機関、交通事業者等と協議しながら、駅前大橋の幅員構成の変更、路面電車の軌道位置の変更を踏まえた広島駅前広場の再整備、主要交差点における交通処理、周辺まちづくりとの整合性等の課題について、引き続き検討を深めます。
- バスサービスの改善
- 公共交通サービス確保の観点から、わかりやすく利便性の高いバスサービスネットワークを整備します。
- バス停の改善やバス専用レーン、バス優先レーンも引き続き実施
- 交通バリヤフリーの実施を広島駅周辺で立案中。近々発表します。
- ノンステップバスは未だ少ないがワンステップバスはけっこう走っている。ノンステップバスには市も補助を出している。
(2)バスと自転車の連携による交通円滑化実験
急行バスの導入・拡大
- 最近のヒットは急行(通勤通学)バス。朝夕の通勤時に、郊外から都心間を結ぶ急行バスの運行を始めた。
- 利用制限はなく、料金は通常と同様。
- 当初は実験としての試みだったのが本格運用に入り路線の新設を3ルート作った。
- この急行バスに関連して青の信号サイクルを長くした
- バス優先ゾーン(バス停部分)を作り普通バスを容易に追い越させる
郊外部レンタサイクル&ライド
- バスの利便性向上のため、アクセス支援策として郊外部の急行バス停付近にレンタサイクルポートを各地区一箇所ずつ設置して、サイクル&ライドを、駐車場を熊野、高陽地区に設置してパーク&ライドを実施した。
- 利用条件はいずれも無料、モニターは18歳以上のバス利用者。
- 各ポートごとに電動アシスト自転車を含めレンタサイクル約20台を用意
都心部レンタサイクルネットワーク
- バス利便性向上のため、都心部に複数の駐輪ポートを設置し、任意のポートでの貸出・返却可能なレンタサイクルを実施した
- 有料(モニター:1200円/月)で18歳以上(高校生は除く)
- 電動アシスト自転車を含め、157台レンタサイクルを用意
実験の結果
- 急行バスに関するアンケートでは68%が満足あるいはやや満足との反応。従来の自動車利用者では、38%が条件が整えば急行バスを利用したいとの意思表示。要望としては「バスの増便」「定時制の向上」「夜の最終便の延長」といったことであった
- 急行バスは成功したと思う
可部地区は急行バスを6便も増便した
- 交通円滑化策は現在も引き続き実行している
- 郊外のサイクル&ライドは利用者が少なく低調だった
理由は、郊外は坂が多く自転車は不便、バスが自宅近くに停まる、といったことである。
- 都心部は好評だった。但しマイカーからの移乗ではなく公共交通からの移乗が多かった。
- バス優先ゾーンは平常時の今は守られておらず、PRが必要。
(3)JR可部線の存続問題について
- 平成12年11月から104日間、平均輸送密度800人/日を存続条件とした第1回の試行運転が行われた。この間、しゃにむにイベントを実施しているうちに、だんだん地域興し運動へと変化をしてきた。
- その結果JRからもう1年つまり本年3月まで再度の試行運転実施の申し出があった。
- 第2回目の試行運転では、小中学校の自然体験活動での利用や、「棚田見学ツアー」「神楽見学ツアー」など多くのイベントやツアーが発案実施され、いずれも盛況であった。
- 結果は地域興しとしては成果があった
- しかし、平均輸送密度は約500人/日程度に留まる見込みである。
- 最終的にはJRが5月中に数字を発表し存廃の判断を表明することになている
- JRの試行運転をきっかけに始まった、都市と中山間地域の交流は、可部線の存廃には関わらず、引き続き取り組む必要がある。
(館主注:JR西日本は27日、可部線の可部(広島市安佐北区)〜三段峡(広島県戸河内町)間46.2kmを廃止する方針を、沿線自治体でつくる「可部線対策協議会(会長・秋葉忠利広島市長)に正式に伝えた。本年11月末までに中国運輸局へ廃止届を提出、1年後の来年11月限りで廃線とする。(中国新聞5/28記事による) |