路面電車を考える会例会 講演録19

鉄道模型のデジタルコマンドコントロール(DCC)ってご存じですか?

               −DCC路面電車グループ 
02.4.7
. 公開日時:2002年3月9日  12:00〜16:00  .
場所:広島市アステルプラーザ  大会議室
館主前言:
 「路面電車を考える会」の活動は路面電車社会派とでもいうべきか、都市交通手段近代化への情報を市民に伝えることを日頃の主目的としている。然し会員は決して社会派の集合ではなく路面電車の歴史好き、写真が好き、模型が好き、各都市で動く電車の乗り回しが好きとたいへん多彩なのである。今回は当会世話人岩橋徹也氏の肝いりで関西と広島市電車模型運転好きメンバーが大集合し広島電鉄の市内線・宮島線を模したレイアウトを大会議室に設定した。 催しでは10数名の来客操作者がそれぞれコントローラを持ち、自分の車両を全員同時に操作するという楽しい会であった。 ど素人の館主もおそるおそるコントローラを操作し、指定された電車を広島駅〜広島港〜宮島間の全線を走破し、西広島駅に留置することができた。自分がマスコン、いやリモコンを操作し電車をダイレクトに運転してみるとこれはかなりの興奮状態。デジタル化の波は模型電車を同時に10数台を意の間に運行させるところまで来ているのである。はまるものがあることを自覚した。



えらい準備をしてやっとセッティングができた 紙屋町交差点風景。ポイントマンガ待機。
DCC運転法を説明する大阪の佐藤さん 参加者はコントローラと個別の行路票を渡された
私を夢中にさせたヂュッセルドルフ市電 広島の会を主催した岩橋徹也氏


●鉄道模型の普通のコントロールとDCC(デジタル・コマンドコントロール)の違い 
                        by 岩橋徹也

鉄道模型は世界的な趣味の一分野であるが、社会的に認知され文化として特に発達しているのは欧米諸国である。
日本でも戦前から鉄道模型趣味はあったが、一般的な趣味と育ったのは戦後の社会が安定し生活水準が上がってからであるが、欧米諸国との分化の違いにより鉄道模型趣味のみではなく、鉄道趣味一般が日本国内では社会的な認知度は未だに低い。
一口に鉄道模型と言っても縮尺やゲージ(軌間)の違いがあり多種多様であるが、基本的にはゲージを基本としているので、各国の実車の車両の大きさにより縮尺はまちまちである。
例えば、一般的にNゲージと呼ばれている9mmゲージは、実物車両の小さい日本では1/150の縮尺を採用されているが、欧米(世界標準と考えて良い)では1/160を採用している。
│ゲージ名 │ゲージ広さ │欧米 │日本 │
│HOゲージ │16.5mm │縮尺1/87 │縮尺1/80 │
│Nゲージ │9mm │縮尺1/160 │縮尺1/150 │

上表に記したものはその代表例であり、この他にも他社多様なゲージと縮尺が存在する。
日本の趣味界では「ゲージ論」が活発に論議されており、縮尺でゲージ名を呼称すべきであるとの意見もあり、世界的に1/87縮尺・ゲージ16.5mmでありHOゲージと呼ばれているものは日本では縮尺が1/80であるのでHOゲージではなく“16番ゲージ”と呼称するのが正確であるとの意見もある。また、日本型に1/87の縮尺を採用しゲージを12mmとして世界標準サイズを採用しているものはHOJ等と呼称されており、1/80の縮尺を採用しゲージを13mmとしている13mmゲージと呼称されているものなど日本国内においても多種多様である。
しかし、この議論の結論は未だに得られておらず、今後も活発な議論が続けられる。
なお今回デモンストレーションする路面電車は、日本型については縮尺1/80、欧州型については1/87のゲージ16.5mmであり、日本国内ではHOゲージ、あるいは16番ゲージと呼称されているものである。

●鉄道模型(車輌)の種類と素材

1.完成品  金属製、樹脂成型品(インジェクションや樹脂流し込み成型)がある。
2.キット  紙、プラスチック、金属、木材
3.完全自作 紙、プラスチック、金属、木材

●路面電車の鉄道模型

車種 日本型→非常に少ない 外国型→入手難(販売店が少ない)

鉄道模型の制御について

1.一般的な鉄道模型の制御  
一般的な制御方式は線路に直流12V前後を流し、その電圧によって車輌のモーター回
転数を変化させスピードをコントロールする。
複数列車を動かそうとすると、線路を電気的に区切り(実物で言う閉塞区間)、制御器
も別個に必要で分割併合などは非常に複雑なシステムを構築する必要がある(組み立て
式線路では困難)。
今回の運転会ではこの制御方式は不可能である。

■DCC(デジタルコマンドコントロール)について

・DCCはこんなことが出来ます。
1.同一線路上の複数の列車を個別に走行させる事が可能。(多人数での運転可、閉塞
区間無し)
2.列車の走行状態(停車中も可)に関わらず、ライトや室内灯の点灯、警笛制御が可
能。
3.超スロー走行、起動電圧の変更(車輌毎にカスタマイズ)が可能なので、走行性が
向上。
4.ポイントのコードレス化など電気配線の簡略化。
5.国際基準に基づいており、各社製品との互換性もある。
6.パソコンでプログラムを作成し自動運転可能。
  (パソコン制御自体は従来の方式でも可能である)
7.赤外線を使ったワイヤレス運転が可能。
8.ウォークアラウンド(自分の運転する模型を見ながら歩き回る)が可能。

この方式は、各車両にデコーダを搭載し、手元にあるコントローラーによりデコーダー毎に個別に制御する方式である。具体的には、線路には常時12ボルト程度の交流を加圧しておき、車両に搭載したデコーダのアドレス番号(デジタル)を手元のコントローラーで呼び出し、レールを使って信号(コマンド)を送信し、その車両のみを制御する方式で、無閉そくで各車の制御(コントロール)を個別に出来るもの。この方法では、常時レールに加圧していることからレール側にはほとんどギャップを設けてやる必要が無く複雑な線路配置や列車の運転計画にも必要最低限の単純な電気配線のみで十分であり、また列車の前照灯や車内灯、警笛の制御や、ポイント(分岐器)も運転士の手元にあるコントローラーで制御することができる。今回の運転会ではこの機能を活かして、路面電車の特徴である無閉そくに多数の列車を多くの運転士が同時に運転する事を体験していただく。

・DCCのデメリット
1.各車両にデコーダを搭載する必要があり、搭載に対応していない製品もある。
2.デコーダの価格、制御器の価格が高価。
3.システム自体のマニュアル類がわかりにくい。
4.日本では歴史が浅いのでノウハウの蓄積がない。情報量が少ない。
5.部品、システムの販売店が少ない

●軌道線運転板について

今回使用している線路は「グループ軌道線」のメンバーが数多くの運転会の経験を元に“可搬性”“レール及び電気的な接続の確実”“併用軌道の表現”“各種線路配置への柔軟な対応”を満足させるために作った規格により製作されている。
この規格は情景よりも運転を重視しており、一般的に言われているレイアウトではなく、どちらかと言えば線路そのものとの考え方である。
路面電車の再現には、交差点などでの急曲線による分岐が必要不可欠なものであるが、この分岐器は鉄道模型メーカーからの製品がなく、全て1本のレールからの手作りであり一番苦労をさせられるところである。特に今回用意した紙屋町の部分はたいへん複雑に線路が交差・分岐しており、製作にはたいへんな苦労を要した。
今回の運転会では広電を模した線路配置にしたが、それぞれの線路板は特に広電用として作ったものではなく、その特徴である“各種線路配置への柔軟な対応”を活かし、またDCCの電気配線のメリットを活かして、それぞれの線路板の配置を広電を模して配置しての運転が可能となった。

●運転の方法(本日限定の“運転取扱心得”)

・ 運転士の携帯品  DCCのコントローラー、スタフ
・ コントローラーの扱い方
・ スタフの読み方
・ 車両の扱い方
・ 駅への進入、進出の注意事項
・ 紙屋町交差点での注意事項
・ 単線区間の運転方法
・ 列車脱線時の対処方法
・ 列車衝突の禁止
・ 乗務終了時の乗務交代の方法
・ 各駅における信号扱いの方法
・ 運転指令からの指示の遵守
・ その他

●資材提供者:「グループ軌道線」有志、「(株)カトー」、横田勝氏、杉井英彦氏ほか

●問い合わせ先:
           株式会社 岩橋商会/岩橋徹也(路面電車を考える会世話人)
            iws-t@iwahashi-s.co.jp
            BZG22325@nifty.ne.jp
            http://www.iwahashi-s.co.jp/index.html
            http://www.iwahashi-s.co.jp/index2.htm iモード専用