路面電車を考える会例会 講演録15     

  車両低床化の価値はいくら?

広島大学大学院国際協力研究科 助教授 藤原章正氏
01.5.26
講演日時:2001年5月16日 6:30pm〜8:30pm
場所:広島市鷹野橋 広島市女性教育センター (Web) 

館主前言:
 今回の講師藤原章正先生は広大国際協力学科という大学院の先生だが、ご自身は交通計画学がご専門。先生は工学部土木工学科ご出身というのも関係があるのか実践の先生です。昨年暮れにも、「広島市郊外からの自動車の混雑情報と公共交通の運行情報を同時にリアルタイムでケーブルテレビに通信・放映し、視聴者がこれを即、乗車 情報として利用する」という画期的な実験ワークショップを実行されたが、そのプランナーとして有名な方です。
 講演要旨は次のとおりです.広島市で導入されたGreen Mover が,交通バリアフリー法の時代に相応しく、誰もが楽に乗降できる路面電車として高 く評価されています。 だが、この車両低床化の価値はいったいいくらぐらいと考えたらよいのか? 確かにこういった新しい技術についてはその価値を定量的に計るの が難しいが、当事者や関心者は知りたいもの。
 今回のご講演ではこの回答を、Green Mover の事例を使用し、独自の計量法を駆使して計算し、世に問われたものを、今回市民に 判りやすくお話しいただきました。 

 当日は「車両低床化の価値」の付録として「共通乗車カードデータの魔力」というテーマについてもお話し頂いたがこれまた興味深くて、簡単に紹介しました。

なお先生は当会講演用に40枚ものパワーポイント画像を作成頂き、ありがとうございました。ほんの一端を掲載できました。 ちょっと重いけど皆さん読んで、見てくださ〜い。  (^^;)

藤原章正先生略歴:
1960年 岡山県生まれ
1983年 広島大学工学部卒業
1985年 広島大学大学院博士課程前期修了
1985年 呉工業専門学校勤務
1992年 東京大学工学部研究員
1993年 広島大学工学部助手
1994年 広島大学国際協力研究科助教授
       現在に至る 交通計画学専攻
(1996年 ロンドン大学客員研究員)


藤原章正先生講演要旨

私の経歴

低床化の価値とは?

この赤い部分が従来より価値(効用)が増した部分。低床化しても自動車
と比べて路 面電車の価値はまだ低いので,なかなか利用者数増として
価値を図りづらい。何とか赤い部分の価値を定量化したい。


主観的価値の定量的評価 →仮想評価法(CVM)を適用する  

(注)オプション価値…今は計れないし、なかなか計れない
   代位価値…自分は使わないけど促進して欲しい


広島市の低床車Green Mover の特徴

アンケート調査を実施した

平成11年の導入年は予想通り評価が高い。1年後の結果は30才から50才は下がったが
全体に高い水準を保っている


これは7〜8割の支持でOKである。 低床車への評価が路面電車全体への評価を高めている


1年間経ってみて変化したと言える。 
車の揺れは1年後の方が高くなったのか?? 座席ボックスは良くなっている。


6割は賛成とみなされる。 実施できれば乗降速度が改善できるのだが。
ヨーロッパのフリーチケット検札制度のように10〜20倍の罰金が取れない。


緑部分のGreen Mover への評価がよく出ている。 座席数の減少への批判もある。


結論的推計

 利用者のパターン別に集計比較すると


付録

電車・バス共通磁気カード(パセオカード)による情報・知識の発掘

広島市で実行しているパセオカードに込められた情報内容。情報は結構豊富


乗り継ぎデータは本来取りにくい。


質疑

Q:誘導質問にはならぬか?
A:他かからも同じ疑問が出た。 アメリカで公式質問形式が出来ていて、それによった。この方式なら相互比較もできる。マイナスの価値をいう人もいる。この方式はマイナス価値も統計計算し推計できる。

Q:精度はどうか?
A:広島電鉄の場合カード利用者は全体の4割程度。 パーソントリップの採取は6〜7 %なのでこちらが母集団代表性は高い。利用時間や乗り継ぎ場所は非常に精度が高い.

Q:路線別に分析できるか?
A:もちろんできる。それは事業者の仕事である。

Q:上記図32であるが、月計の234円はどうやって出したか?
A:日頃の利用実態を調べて平均を掛けた。 尚この図で上限値41円を以て「40円なら値上げOK」と取られては困る。

Q:このデータはLRT(システム)ではなくLRV(車両)の値だろう。もっとLRT化というかシステム化されたらもっと評価・価値が上がるのでは?
A:そう言える。 この分析法は仮想評価法(CVM)を用いているが、これは付加価値が判るのみである。CVMだけで全部の評価と考えるのは問題がある。注意を要す。