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路面電車を考える会例会 講演録11
ITS (Intelligent Transport System) と地域交通
建設省中国地方建設局 道路部道路計画第一課 牧野浩志 . |
2000.7.14 |
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講演日時:2000.7.12 6:30〜8:30p.m |
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場所:広島市鷹野橋 広島市婦人教育会館 |
館主前言:
都市路面軌道にとっては道路建設者と路面電車とは密接な関係があります。 歴史的に見ると、どうも建設関係のお役所は道路の方に身びいきのような気がしてならないのですが、例外もありそう。あの岡山RACDAが路面電車による都心活性化計画を作っている当時、岡山国道工事事務所勤務の牧野氏は有力な理解者として館主も承知していました。 その後、氏は広島市にある中国地建計画課長に転任されたので、私ども広島市の路面電車関心者にとってこれは朗報でした。
もちろんご講演の機会を待っていたのですが、このたびお願いがかない拝聴しました。 講演の最初の部分は地建発行パンフ「中国地建:より安全に便利に〜ITSで変わる…中国地方のITSへの取り組み」でなされました。 しかし核心部分の講演は、引き続いて述べられた、パソコンソフトpower
point にて制作された76ページ渡る膨大な自作レジメをパソコンプロジェクター投射しながらなされ、その立て板に水の講演でした。内容が多くて全貌は十分に当館ではお伝えできません。 が、内容は広島市の地勢に制約された道路事情と路面電車の可能性についての浩瀚な論証には圧倒されるものがありました。また、「都心駐車場建設は消費機会を減らしている」という実証解説には刮目しました。 脱帽。
申し添えますが、氏はRACDA編著「路面電車とまちづくり」の共同執筆者でもあります。
講演者略歴:
1967年 大分県生まれ
1991年 九州大学大学院工学研究科卒業
1991年 建設省入省
福井県、警察庁交通局、建設省経済局
岡山地建等を経て
1999年 中国地建道路部道路計画第一課課長 |
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講演要旨
ITS (Intelligent Transport System) とは?
- ITSとは一口で言うと「高度な道路交通システム」である。
- 「人」、「道」、「車」が「情報」によってネットワークされたもの
- 広島でも昨年からVICSのカーナビ使用で実用化された
- 岡山で作られた情報ハイウエイにも携わった
ITSによって多くの生活シーンが改善された
- 岡山ではバスロケーションシステムが実用試験をされている。これはiモードを使いバスの到着時間を分単位で予測するもの。 次いでGreen
Mover でも実用試験したい。
- 道路情報のVICSは広島・岡山では昨年から、山口は今年から、鳥取・島根は来年から実施。
- 安全運転支援
5分毎の静止画をインターネット経由で提供している。これは特に山間峠部での積雪情報のときにヒットが多い。
- 高齢者や障害者への支援
山口県の下関での実例だが、目の不自由な人が道路に埋め込まれた磁石点字板で誘導。杖が反応すればそちらに行くしかけ。
- 災害自動検知装置
例えばCCTVというテレビカメラにより道路状況の監視とか。 …昨年夏の広島市で山崩れ災害があって死傷者が出たが、もしこういった設備があれば迅速な対応が可能だったのではないだろうか。
- 公共交通利用情報を提供…バスの時刻表や到着時間予測の提供。フェリー情報などを提供可能。
ITSで交通環境を変える
- ETC(自動料金収受システム)は全国的に工事中で、13年度運用開始である
広島市郊外の五日市、廿日市では本年中に出来あがる。
- 対向車接近警告システム
54号線はカーブが多くて貰い事故が多い。対策としてガイドライトシステムを三次市に設置して効果を調査中
ITSでくらしの改善
- 今の都市は環境負荷が大きい。 車は都心で16km/hで走っている。これを30km/hに上げると20%はNOX発生が低くなる。 広島は都市高速道路が未発達で運送業者には使いにくいと言われている。例えば宇品港からインターチェンジまでが遠いなど。 この改善が広島の地域発展や環境の向上にもなる。
- 「道の駅」のネットワーク化により地域情報の発信強化が可能になる。既に岡山中心に鳥取・島根・香川・徳島・高知県をインターネットで繋ぎ、「道の駅」26カ所に情報キオスクを設置し、ドライバーに道路情報や観光・駐車場情報を提供している。これは「西日本中央連携軸」と称して平成9年から工事が始まった。 基本的には国道の下に引かれた光ファイバー網を活用してできたサービスである。
- 広島市では中心地紙屋町地下街が工事中であるが、来春開業に合わせて「i-モビリティセンター」というものの開業を準備している。これは情報提供施設をつくり、歩行者にGreen
Mover 等の到着予測やバスの路線情報といった移動支援サービスを計るものである。
- 現在広島市・呉市・東広島市のネットワークセンターを道路下に通した光ファイバーで結び高度利用を図る「ひろしま情報ハイウエイ構想」に協力している。これを利用して大学、大工場等でのアプリケーション開発の支援が可能となる。
- 最近の「iモード」といった携帯型の情報端末の動向に注目している。バスの時刻表や到着予測システムでも活用しているが、時刻表を簡単に持ち歩け、移動中に到着時間を調べられるのは効果的だ。
- 岡山市でのバスロケーションシステムの利用状況であるが、1日200件のアクセスがある。朝は到着予測時間へのアクセスが多く、夜は時刻表へのアクセスが多い。
中心市街地の活性化と道路交通問題
- 岡山市も中心部の集客落ち込みが大きい。福山、松江市はもっと大きい。広島は100万都市だからまだ良い方だ。都市のスケールメリットによるものであるが、広島の都市基盤の脆弱性から考えると予断を許さない。
- 岡山市の例であるが、休日中心市街地に来る人の数はピーク時である昭和43年の半分の7万5千人。中心市街地が昔のにぎわいを取り戻すには集客の仕組みとにぎわいの仕組みの再構築が必要である。
- にぎわいの仕組みは商業者にお任せするとして、集客の仕組みの再構築のキーは、歩行者優先の都心空間の創造、公共交通機関を活用したアクセス、通過交通排除のための都市環状道路整備である。
- 平成8年に岡山市で調査をした結果によると、自動車での来街者の滞在時間は短いことがわかった。
公共交通利用者の都心滞留時間は…平均2時間30分
マイカー利用者の 〃 …平均1時間30分
公共交通機関でのアクセスを優先すべき。そして街にとどまることが楽しくなるような歩行空間やオープンスペースを整備することが必要。
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会場パソコンプロジェクター投射図をデジカメ撮影→こんなイメージです
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- 街中に駐車場づくりをすれば繁栄するという考えは錯覚ではないか。特に1時間駐車場利用券の発行は「早く帰ってください」ということになる。 中心部にはなるべく駐車場を作らないことだ。郊外の大型駐車場に車を置いてパークアンドライドで街に来ていただく方がよいのではないか。
- 広島市の交通を調査すると都心通過交通が30%ある。早く環状道路が完成すると通過交通が排除され道路の容量に空きが生まれる。そうすればLRTやバスといった自動車交通の影響を受けやすい公共交通機関の延伸、専用レーン化や運行の効率化が可能となる。
- ITSによる自動車交通の分散や公共交通機関の支援も有効な対策になる。
- また日本では自転車が遅れている。ヨーロパに比べて法律が不十分な故もある。自転車対策も本格的に取り組む時期である。