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路面電車を考える会例会 講演録10
「広島はリバークルーズボートが元気」 .
広島リバークルーズ株式会社 代表取締役常務 白倉一成
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2000.5.27 |
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講演日時:2000.5.17 6:30〜8:30p.m |
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場所:広島市鷹野橋 広島市婦人教育会館 |
館主前言:
広島は水の都です。即ち上流から多くの支流を集めてきた太田川は、市の付け根の部分で6本の川に分かれデルタを形成しながら分流します。このうち中心の中州へ毛利輝元が1600年に広島城を築いたものがいまの広島市の始まりです。
そういうことで広島市の主要河川は、かっては商都広島から付近の瀬戸の島々への物流基地になった時代がありました。 いまは河川の交通としてクルーズボートが就航し、観光的な役割を来訪者と市民に与えています。 今回は意外と知られていないがこのクルーズボートの役割と実態を責任者の方から聴くことにしました。
尚、路面電車を考える会では路面電車をキーワードにしていますが、広島市の交通に関連するJR・飛行機・近海航路等も随時採り上げています。今回もその一環です。
講演者略歴:
1948年 広島市に生まれる
1970年 瀬戸内海汽船株式会社入社
1998年 広島リバークルーズ株式会社
代表取締役常務に就任 |
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講演要旨
広島リバークルーズの沿革
- 平成元年1月に会社設立 航路申請とクルーズボートの発注
バブルの後半という年なので、広島市に何か魅力のあるものをという主旨から、財界から支援があった。
- 資本金:1億1000万円
これでクルーズ船「ルンルン」と「スイスイ」の2隻を購入した。
- 平成元年7月8日 クルーズボートが走り出した
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「スイスイ」と原爆ドーム photo:同社HP |
クルーズ船のデザイン
- 船の重量は12トン。小型船舶操縦士なら操船はOK
110馬力×2 ディーゼル 4気筒
航海速力6ノット 最高10ノット
- 長さ12m 巾4m 深さ1.11m 喫水はわずか40cm
この喫水は丼を水に浮かべたようなもの=しっかり浮く=沈みにくい。 川には浅い部分があるので、これがリバークルーズの要件。
- スクリューでなくウオーターJet推進である。 水を吸いだして吐き出す →浅い川の運行に適す
水の反力を利用するので空中に吐き出す。水の中ではない。
- 熊本造船製 ヤンマーディーゼル製エンジン
定員38名 定員定義では、「同じ船でも1.5時間(立って耐える)、3時間(座って耐える)、6時間(寝て耐える)」、この時間差から規定される。 本船は6時間定員を採用しているが、短時間に変えるとより多くの定員になる。
- 運行メインはルンルンで運行している。 運行者は2名。船長+女性サービス員。
- 高さが低いのは橋下を潜るため
- デザインは公募した。
採用されたものは赤い夾竹桃をあしらったもので、船体は白をベースにしている→汚せない→いつも清潔。
夾竹桃とは、広島で原爆の後真っ先に咲いて市民を勇気着けた謂われのある花だから。
クルーズ船の運行
- 「ルンルン」を常用。 「スイスイ」の方は多客時に使用
- 1回50分運行はドームから上流の野鳥の中州まで往復
1回1時間運行はアステールプラーザから上流の野鳥の中州まで往復
- 広島は6本の川があるから自由に運航できると思われるだろうが、使用できる川巾は意外と狭い。
実は最低干潮時プラス30cm以上要る。 すると狭い場所が発生する。「潜堤」もある
- 最も低い橋は中心部の住吉橋。これが船の回航の時いつも問題になる。
- 昔から橋は水平に架かっていたが、近年は太鼓橋が増えた。これは橋の下を往来する船舶のことを考えてのことらしい。
広島市の川の特徴
- 広島市はデルタ部分では川が17%もある。特に中区に至っては23%が川。「水の都」の由縁。…ぜひ川を利用したい。
- 建設省の歴史であるが 思想は「治水」つまり川は悪者的であった。 いまは「親水」…川を友達に
その例として:川に桟橋は付けられなかった。 いまは本川にわあざわざ凹みを造って桟橋を設置するくらい感覚が変化した。
- それでもフランスパリ、ドイツ、オランダの各都市に比べると日本は進んだとは言えない
- 川資源を持った広島市として利用を考えるべき。 「永遠の資産」と言えよう。
リバークルーズ会社の経営
- 乗客数の推移は
平成元/7〜平成2年/3(開業年) 25,000人
平成2年度 40,000人
平成3年度 35,000人
平成4年度 30,000人
… …
平成9年度 25,000人
平成10年度 18,000人
平成11/4〜12/1(10ヶ月) 19,000人
ということで10年度で下げ止まった。本年からは上向いたと考える。
- 黒字の年が少なく赤字の年の方が多い。 今期はやっと黒字になった。
- 「内水面漁業権」というものがある。 例えばしじみ取り。 船の運航では年100万円を支払っている
今後はどんな企画をしたいか
- 瀬戸内海汽船には屋形船があるが、これを3/中〜4/中期間「桜観光」をしている。これにも船がスクリュー船であることと船の高さが高いことから苦心の運行だが。
- 松江市の「堀川遊覧」が人気です。 これは小型船に船外機を使用。
人気の秘密は
- 屋根が倒れる
- 運河の周辺の人家が遊覧船客のためにいろいろ飾り物を作り見せる
- 今は市民より外のお客に来ていただきたい。
旅雑誌「じゃらん」に記事を掲載 …対外アピールが大事
- 中距離バスの福山市、今治市とのセットチケットを発売したが、それなりの受注があった。
- 昨年10月に広島市にて「消化器学会」の大会があった。参集13,000人。
市北部の「県立総合体育館(グリーンアリーナ)」と南部の「アステルプラーザ」の2会場を結ぶ足として、リバークルーズボートを利用したい提案があった。↑上記図参照
このため臨時桟橋を造るための費用がかかったりしたが社長の決断でやった。これが船からドーム写真が撮れ、これは「始めてのアングルだ」などと好評で、3日間で3500人を運んだ。(^_^)
- アリーナやアステルプラザの川岸には厚生年金会館のような公共建築物や公園も多い。 これらは観光的にも宜しいのではないか。
- 工兵橋や縮景園まで行くと県立美術館まで行けるので延長して欲しい声がある。ただ現況途中に浅い場所があるので。
- ドーム発宮島行きは出来ぬかの要望もある。 これは船形の問題がありリバークルーズボートでは凌波性がないので、川海兼用は難しい。
- 宇品プリンスホテルからドームまでのコースも考えられる。約1時間のクルーズ。 これは魅力的。
- 当社はレストラン部門も運営し、相互依存の形で経営している。 今年はサンセットクルーズを土曜日の夕方催すよう企画中。
- アステルプラザとドームの間を、付近住民に足として使って貰うよう提案したが未実現。
- 平和公園には桜ゾーンがあり、これを船からも鑑賞して貰った。 また昨年はドーム付近でパラソルギャラリーという自作工芸品販売の店ができたが、今年はオープンカフェができたので連携を行っている。
運行の現況
- 乗船賃は大人1,100円です。
- 食事付のランチクルーズは予約が要りますが2,500円でこれは船内で食事ができます。
- 他にレストランで食事した後乗船するレストランクルーズというのもあります。これは3,100円。
- 今年は「グループ乗船」で1時間航行,4万円というチャーター制度を設けた。
質疑と提案
Q:提案だが最北の「野鳥の中州」では鳥の名前の当てっこをしたら如何か。
Q:提案だが広島名物の「お好み焼き」「キリンラガービール」「カルビー」等が飲食できないか。
Q:大きな建築物が川の方を向いていない。今は中途半端。なんとか川からもキレイに見える建造物の工夫を。
Q:「定期バス&クルーズ」 はできませんか。
A:前にやったことがある。もう一度やるか考えているところ。
Q:インターネットに川から撮った写真を載せたらよいと思う。
Q:先日ルンルンに乗船しました。 客室は快適でしたが、展望が左右と後ろになっていて進行方向の前方が見えない。前方の操舵室の下部壁を10cmくらい切り落として低くし進行方向が見える改造はできませんか。
A:判ります。実は第2世代では船長を後部の位置に移す予定なのです。