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例会講演録4
空からやってきた超低床LRT電車
広島電鉄株式会社 電車カンパニー 車両課長 藤元秀樹
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99.4.17 |
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講演日時:99.4.14 6:30〜8:30p.m. |
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場所:広島市鷹野橋 広島市婦人教育会館 |
館主前言
3/13アントノフが広電5000形グリーンムーバーを運んできて以来一種の5000形ブームが起こっていますが、外見的な知識から内容的な知識伝達へ進むため、専門家というより当事者に講演をお願いしました。
講演会はほとんどの時間をOHPの画像による電車の構造と機能の紹介ならびにVIDEOを使用して氏自身によるヨーロッパ各都市でのLRTの走行状況。気になる車内の風景。圧巻は製作会社デュワグでの5000形をトレーラに積み込み空港に運び広島空港積み卸し、陸送、広電江波車庫での積み卸しと手押し車庫入れ結合、車内風景でした。
そういうことで画像部分は掲載できませんが、(動画で掲載もできる?) 解説の部分でいろいろ興味深い事実が解説されたのでこの方を抄訳掲載します。 当日はいつもの参加者の50%増になり、市民のグリーンムーバに対する関心の高さが窺われました
講演者略歴:
1954年生まれ
1979年広島電鉄株式会社に入社
1991年同社電車部工作係長
1995年同社電車部車両課長
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講演要旨要|
ヨーロッパでのコンビーノ
- ヨーロッパでは100%低床車が1000編成稼働している
- 70%低床車(運転台等端部分は高床)は1200編成稼働。 都市部は徐々に100%低床式に変わりつつある
。
広電がコンビーノを選んだ理由
- 誰もが乗降しやすい
- 大型車で輸送力がアップ
- LRTは環境に易しい
- 市街地の活性化に役立つ
シーメンスのコンビーノ
- プロトタイプ、試作車は1996/7から走り出した。これは各都市にて展示の目的で走った。
- 車体幅が2形式あり、一つは幅1mの狭軌、他は1.435mの標準軌で両方の台車を用意し履き替えて走った。
- 故障の報告はない「
- 受注状況は
- ポツダム 48編成
- フライブルグ 9編成
- アウグスブルグ 16編成
- 広島電鉄 数編成 (発注順番は4番目だが納期は2番目)
- バーゼル 28編成
- デュッセルドルフ 86編成
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DUEWAG社内に貼り出されたHIROSHIMA向け車体の工程特別管理板 |
- ポツダムのコンビーノ車体には発注番号を付けて走っている。 401=ポツダム、402=フライブルグ、403=アウブスブルグ、404=HIROSHIMA
- 中間台車にはモータは無い。
- 10%の勾配を降りる…車と同じ性能が求められている。
OHPによる解説
車体の特徴
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超低床車両
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在来車両(3950形)
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床の高さ |
0.33m |
0.78m |
長さ |
30.52m |
27.36m |
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2.45m |
2.45m |
車体構成 |
5車体3台車 |
3両連接車 |
定 |
153名 |
152名 |
- 呼び方は運輸省と相談して「5車体3台車」と表現することになった。
- 停留所高さに比して宮島線床高は3cm高になっているが、乗車時は自重で車両が下がるから同平面になるだろう。
- B市内線では8cm高であるが乗車時はもっと低くなる。
- 日本向けに数々の改造を行った。例えばドイツでは片運転台を両運転台へ、車体幅の2.45mは広電の標準幅で、あちらの標準(2.3m、2.4m、2.65m)の2.4mより5cm広くした。これで車椅子を使っても、座席の間の通り抜けが可能になる。
- 運転台計器盤はヨーロッパの左側に対し右側に設置。
- マスコンは右手のみのワンハンドル式。きざみ目無し
- メータではATSの関係で速度計に2km刻みの丸形を付けた
- 扉下には車椅子用の繰り出し可能のスロープ板を取り付けた
- 車掌台の運賃収受設備は日本独特。ヨーロッパはチケットキャンセラー
- パンタグラフはドイツは1本。広島ではポイントコントロールの関係で2本になった
タイヤハウス
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A車、B車はモータ付台車 |
E車はモーター無し(客室床下の底板が見える。低床!) |
- モータは外側に付け、前後の車輪を直接駆動する
- コンプレッサーはないので独特のブレーキがつく
- 初動は電力回生ブレーキまたは発電ブレーキ
- 2km/hの低速になると電動台車ではモータ軸ディスクブレーキを使用
- 緊急時にはトラックブレーキが磁力でレールに直接吸い付く。ヨーロッパでは普通の装備である。
屋根上機器
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屋根上機器様子。さすが立錐の余地もなくぎっしり。
手前トラクションコンテナー。パンタはシングルアーム。 |
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コンテナーを開いた様子。
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屋根上のには空調以外に前後にトラクションコンテナーを置き、制御装置を床下から移している
導入に当たり苦心したこと
- 日本に鉄道六法があるようにドイツにもVDV規格がある。その規格の差を埋めること。
例えば使用材料については日本では燃えないこと、発火しにくいことが重点。ドイツは有毒なガスを出さないことが重点。
ビデオ:ヨーロッパのLRTと5001号のデュワグ工場から広島電鉄江波車庫まで輸送作戦
掲載省略 ブレーメンの芝生張り軌道、どの形式も殆どプラグドアであることなど。 すべてをご想像ください
導入を担当しての感想
- 輸送力がとれる。 MAX280人〜300人乗れて、これなら最新の3950に比べ同等か以上と期待している
- 高速対応が可で現行宮島線60km/hは軽くクリアー
- 保守はやりやすいと思
、今までの技術を集めて設計製作されている
B故障時の対応も、故障場所と応急対処法の運転台表示(英語)や台車のブロック化等よく考えられており、今までとそれほど違わぬと考えている。
- 日本独特の要求仕様(両運転台、両側扉、車掌機器追加など)のため、ヨーロッパの車両に比較してコストアップはやむを得ぬ点がある。