|
例会講演録3
空から見た広島の交通ネットは
-(株)J-AIR取締役社長 機長 池田重隆
|
99.2.28 |
・ |
講演日時:99.2.10 6:30:PM〜8:30p.m. |
・ |
場所:広島市鷹野橋 広島市婦人教育会 |
館主前言
路面電車を考える会としては会の取り決めでは、講演会等の啓蒙活動については路面電車をキーワードとするけど、関連する交通機関、JRもバスも航空も船など全部採り上げると決めています。 とは言え、今まで航空と船関連は採り上げたことがありませんでしたので初めて広島市内にある身近な航空会社J-AIRに講演をお願いに上がりました。快く応じてくださり実現しました。 会の司会で「路面電車ファンとは乗り物ファンであり航空ファンかも知れないと推定して企画した」との述べましたが、会後「実は飛行機の話も関心があった。出席してみておもしろかった。考えさせられた」とお電話を頂戴しました。
好評に応えて今年中に船テーマでもやりたいな、例えば広島から別府航路とかフェリーの話とかなど考え始めています。
講演者経歴
・1939年生まれ
・1963年 日本航空入
・1971年 B727型機
・1972年 DC8型機
・1981年 B747型機長
・1990年 B747−400型機長
・1995年 運行本部副本部長
・1997年 (株)ジェイエア代表取締役社長 |
|
まず航空写真を見てください
|
|
|
広島市南端宇品港上空より北側アプロー
`機長席より 広島市は山に囲まれてい
|
|
ランウエイ04へのファイナルアプローチ
真ん中川沿い右に滑走路が見え
|
|
|
|
広島西飛行場 J-AIRハンガー前
機種はジェットストリーム |
|
広島市東北上空より現在の広島空港を見
広島空港と広島市街とは直線で45kmある |
講演要旨|
広島にはこれまでに宮島を訪れた程度で長期間滞在するのは初めてです。その観点からの意見です。
●コミュータとは
- 地域都市間または地域都市と中枢都市とを結ぶ航空事業で、Regional 航空とか地域航空と呼ばれてい
- 日本でのコミュータ航空は第4次全国総合開発計画の中で提唱された。
- 幹線の定期航空に対して、地方の生活路線を扱う生活密着型の航空事業であ
- 定期航空運送事業は運輸省航空局直轄の所管に対して、不定期航空運運送事業扱いのコミュータ航空事業は東京航空局か大阪航空局という地方局の所管である。広島は大阪所管。
- 制度的にはコミュータ航空の方が定期航空事業よりも簡略化されている部分もあるが、内容的には整備、航空事業者のライセンス、運行管理、訓練、資格管理等その基準は定期航空とほぼ同一である。
- 現在利用されているのはビジネスを主体としたレピータの方と個人旅行者が主体であるが、観光旅行の人たちにも利用されている。
●J−AIRとは
- 愛媛県が「西瀬戸経済圏」を提唱され愛媛、大分、広島を結ぶ「西瀬戸エアリンク」として朝日航空によって開始された
B
- その後収益性の問題から存続が困難となり、地方自治体・国が大手航空会社に支援を求められ、この事業を日本航空が引き継ぐことになった。
- 1991年、日本航空は小型機で訓練を担当し、小型機運航の経験のあるジャルフライトアカデミーの事業部門としてジェイエアーの名称で事業を開始した
- 機材もそれまでのバンデランチに替えて世界各国で広く使用されているジェットストリームを採用した。
@
- ジェットストリームは双発のターボプロップで与圧式のキャビンを有し、高度も25000フィートまで巡航できる。現在5機保有している。これにより、日本中どこへでも山を越えて路線を拡張できるようになった。
- 広島から出雲、小松、新潟への路線が開設された B
- 1996年 ジャルフライトアカデミーから独立し、(株)ジェイエアとして本社を広島に開設し、運航の基地を長崎から広島に移した。
- 広島西飛行場から松山、大分、出雲、鳥取、小松(金沢)、新潟、南紀白浜、関空、鹿児島の9都市を直接結んでいる。他に出雲→小松、新潟→花巻、新潟→名古屋、名古屋→高知、高知→宮崎の計14路線。便数では一日40便を運航している。
- 1年の旅客数は約120,000人。 朝夕の出雲、鳥取便はビジネスのお客様がいっぱいでほぼ満席になる。また個人での旅行者も多い。
- 社員は65人。内訳はパイロット35人、整備、メカニック部門15人。間接15人である。
●広島の空を飛んで感じたこと
- 自分は月に40〜50時間くらい飛んでい
- 広島市は中心市内部がコンパクトに纏まっていて、これに緑の山々と海に囲まれて白亜の街並みがきれいである。
- 海には島も多く、牡蛎(かき)の筏がたくさん見えるのも広島の特徴といえる
B
- 広島市街は太田川の三角州の上にあり、地上にいると平野のように思われるが、上空から見ると三方を山に囲まれた都市に見える。
- 住宅地は山裾を麓に上っていくように広がっている。従って道路も平地から山へ向かって広がっている
B
- 高々度から見た広島市は平野に見えていたが、中高度以下低高度から見た広島市は山国に見える
B
- 市街地のある平野は限られているので、住宅地はどんどん外側に広がっている。従って通勤圏も広域化している
B
- 広域化すると長距離通勤に対応した交通手段が必要となる。高速、大量輸送手段が必要となる
B
- 市街地ではバスや路面電車が活用されているが、他の都市と比較すると地下鉄がないのも特徴といえる。新交通システムのアストラムラインは類似の手段ではあるが市街地の一部をカバーしているのみである。
- 広島市は川の街であり、情緒があるが、交通の面から見ると南北に流れる川は東西方向の道路についてはすべて橋を必要とする。橋は交通の流れを制限していると言える。上空から見るとこのことがよく分かる。高速道路のフィーダーは良く整備されているが市街地へのアクセスが不十分である。
- 欧米の都市を見るとその街の規模に合った交通手段を採用していると思う。人の動きの少ない経済活動の少ない街は、バスや路面電車でゆったりとした手段を採用しているところが目に着くし、人口の多い経済活動の盛んな都市では高速の電車や地下鉄を主要な手段としている。街の成長と共に交通手段も高度化されていったと思われる。
- 街の顔としての交通手段としてサンフランシスコにはケーブルカーを挙げることができる。これは生活のためというより観光のための交通手段として特徴的である。老朽化のため廃止の声も上がったが、存続のための修理費用を外国へも募金を呼びかけて再出発し活気を取り戻している。
- 広島は海に面した海岸都市でもあり、港と隣接した公園やショッピングスポット、レストラン街などの整備をして港町としてのイメージを付加してみてはいかがであろうか。横浜や神戸、長崎はすぐ港町が連想されるが広島はそれがない。
- 広島市は広島県全体の中では西の端にあり、県としては県央のインフラ整備にかなり力を注がれていることが上空から読みとれる。広島県の発展は広島市の発展なしには考えられない。人口、経済活動、文化活動どれをとっても県内の他の市町村は広島市には追従できない。
- 広島県の発展は広島市の発展にすべてがかかっていると言っても言い過ぎではないと思う。その広島市の発展を阻害するような施策は極力避けるべきだと思う。
●広島西空港の価値
- 広島西はかっては広島空港だったが東部の本郷に新空港ができて、広島西は県営の空港(コミュータ専用飛行場)として存続している。
- 日本では新しく作られる空港の多くは山の上に作られる。しかし、山の上の空港は平地にある空港に比べて気象の影響を受けやすい。標高300mくらいのところが多く、雲による視程障害は平地より起こりやすい。
- 騒音問題で関空開港と同時に閉鎖されることになっていた伊丹飛行場はいざ閉鎖されるとなると、地元から存続運動が起こり、規模を縮小して存続することとなった。以前の騒音騒動も何のその、いまや以前の便数にまで増便しようという地元からの働きかけが活発に行われ、市街地空港の存在価値を実証している。
- それに比べて広島西飛行場は無用論まで出ている始末である。市の中心から車で10分、路線バスは頻繁に運行されて20分で到着できる。既存のアクセスのままで十分に使用可能な能力を持っていて、更なる投資が限りなく零に近い素晴らしいインフラストラクチャー、それが広島西飛行場なのである。
- 市街地の空港は一度手放したら二度と得ることが出来ない貴重な公共の財産である。
- 広島県は中枢性を県政の柱とされているし、広島市は平和、文化、国際都市を市政の柱としている。にもかかわらず広島大学の移転をし、更に市街地空港の致命的とも言えるほどの機能低下を招くような施策は広島市の活力の大幅な低下につながり、それは同時に広島県の活力低下に繋がると思われる。
- 広島西飛行場の活用状況
オ運用時間14時間(鹿児島14時間。長崎、熊本、大分、宮崎、松山、岡山13時間。
●道路の住み分け
- 広島市は自転車が多いのが特徴。 なんといっても自転車が経済的な乗り物である。どうも歩道をスピードを上げて走ったり、道路の至る所での無秩序な駐輪は歩行者保護と交通事故防止の観点から望ましくなく、マナーの改善が必要である。駐輪場の増設も必要であろう。
- 広島の路面電車は情緒があってよいと思うが、同一の路面を、自動車や自転車、歩行者と共有するわけで、すべて信号機の規制を受けることになり、移動のスピードと機動性の面で弱点がある。
- 現代は車社会であり、生活の中から市街地といえども自動車を排除する事は困難である。
質疑
QFコミュータ会社同士の連携は考えられぬか
A:地方路線は一般に市場規模が小さいので競合といっても限度がある。お互いの協力も必要である。運航ダイヤの調整で利便性を向上させ相乗効果を上げている路線もある。
Q:JRとの競合はあるのか?
A:日本は南北に2000kmの距離をもつ島国である。地上では3時間以上かかるが、飛行機では1時間位という距離がJRと競合する。それ以上の差がある場合には飛行機に利がある。
Q:鹿児島へは、いま広島空港からANK、広島西からJ−AIRとJACが運航しているので便数が多いが競合しないか?
A:利用者は県央と東部の人たちはANK、県西から山口県東部の人たちは広島西を利用されているように思われる。 現実に広島西の利用度は上がっている。
航空写真
参考として、機長席から撮影された広島市近辺の写真が投影され解説された。(トップに表示のもの)
以 上