2009.11.10

館主前言:
ご存じ、広島市は日本でいちばん路面電車が活躍している街でしょう。今や地球環境改善という大きな課題からも全国の都市にLRTが新設・延伸が求められています。

秋葉忠利広島市長はLRT活用都市の実績を基に、全国のLRT・路面電車の存在する都市の首長に呼びかけ、10月30日・31日の2日間、わが国初のLRT都市サミットを広島市にて開催致し、無事終了致しました。

私事ですが、当館主 山根政則は、秋葉忠利広島市長よりパネルディスカッションに市民LRT活動者として出演を慫慂されました。それではと引受け、日頃考えている『わが国の交通権とLRT都市の位置づけ』や『なぜ日本の都市は欧米に比べ、LRT建設が実現しないのか』などについての提言を、率直に発言させて頂きました。


日 時・場 所 時   間 内    容
1日目
10月30日(金)

 広島国際会議場

13:00〜13:30
1.首長歓迎セレモニー(広島駅南口地下広場)
  [出席市長、副市長:札幌市、富山市、豊橋市、京都市、広島
   松山市、高知市、長崎市、熊本市、鹿児島市、(11都市)]
13:30〜14:30 2.グリーンムーバーマックス(貸切)で原爆ドーム前電停まで移動
3.原爆ドーム・原爆の子の像・折り鶴台の見学、慰霊碑参拝献花
14:30〜16:30 4.LRT11都市首長会議
 札幌市副市長 中田 博幸 氏
 富山市長    森   雅志 氏
 豊橋市長    佐原 光一 氏
 京都市副市長 由木 文彦 氏
 岡山市副市長 村手 聡 氏
 広島市長    秋葉 忠利 氏
 松山市副市長 稲葉 輝二 氏
 高知市副市長 安藤 保彦 氏
 長崎市長    田上 富久 氏
 熊本市長    幸山 政史 氏
 鹿児島市長   森   博幸 氏
16:30〜18:00 5.俳優 関口知宏氏の記念講演 「旅 〜ふれあい〜」
18:00〜18:30 6.共同記者会見(サミット宣言)
18:30〜21:00 7.歓迎レセプション 
2日目 10月31日(土)

 広島国際会議場
9:30〜10:20 1.国内外のLRT化に関する事例及び制度紹介
  ・「LRTプロジェクトと地域公共交通活性化・再生法」
    国土交通省 鉄道局 財務課 松本 年弘 氏
  ・「戦略的な都市交通施策の実施と整備推進」
    国土交通省 地域整備局街路交通施設課 神田 昌幸氏
10:20〜12:20 2.パネルディスカッション
 <パネリスト>
  ・富山市長 森 雅志 氏
  ・豊橋市長 佐原 光一 氏
  ・広島市長 秋葉 忠利 氏
  ・鹿児島市長 森 博幸 氏
  ・広島電鉄株式会社 代表取締役社長 大田 哲哉 氏
  ・映画美術監督 部谷 京子 氏
  ・路面電車を考える会 山根 政則 氏
 <コーディネーター>
  ・広島大学大学院教授 藤原 章正 氏

LRT都市サミット関連イベント

     ○11月1日
      路面電車まつり 例年広島市の路面電車まつりは6月10日前後を、今年はサミットに合わせた

     ○10月19日〜27日
       国内外のLRT化に関するパネル・写真展 
         広島市役所市民ロビー 広島駅南口地下広場 紙屋町地下街シャレオ中央広場世界のLRTパネル展 

     ○広電電車に乗って市内を巡るスタンプラリー 10月31日 主要電停周辺

     ○未来の路面電車子ども絵画展   10月30日〜11月1日  広島駅地下広場 

     ○電車特別乗車券の販売 「LRT都市サミット広島2009 電車記念乗車券」を販売。先着1,000枚

     ○路面電車が走る都市の物産大集合 10月31日(土) アリスガーデン

     ○レトロ電車の運行  10月31日 横川駅電停〜江波電停

     ○記念のオリジナルフレーム切手の販売 1シート(80円切手×10枚) 1200円   
主催者および共催者: 広島市  広島電鉄株式会社


広島駅前地下広場に参集し駅前電停から貸切電車
Green Mover Maxに乗車し原爆ドーム前にて降車
この電停は原爆ドーム前のすぐ前
平和公園では秋葉忠利広島市長自らマイクを持ち広島市の被爆の惨状とその後の復興について解説
 (写真は被爆者佐々木禎子さんの折り鶴の像)

広島国際会議場は平和記念公園内の南側部にある。
右の建物が広島平和記念資料館:かずかずの被爆資料を保存し展示されている。
わが国で始めて開催される
LRT都市サミット広島2009がいよいよ開催された
秋葉広島市長の開会宣言

LRT11都市市長・副市長による、各都市の路面電車
・LRTの運用/建設/将来についての報告がされた
(発言は佐原豊橋市長による課題の説明)
俳優関口知宏さんはNHK「列島縦断 鉄道12000kmの旅」で、すっかり非マニア鉄道布教者になった。
ラフな姿で現れ、親しい語り口で話しかけた

パネルディスカッションは富山・豊橋・広島・鹿児島4市長、太田広電社長、映画美術監督部谷さん、山根によって意見の提示がされた。
 (大田社長がLRT導入時の都市規模適性を説明中)
市内では各所で協賛のLRTパネル写真展やスタンプラリー・こども絵画展、路面電車まつり等が行われた
(広島駅南口地下広場での写真展の様子)


LRT都市サミットに参加してみての発見や発言をメモの中から: 
(1日目、2日目と2日間に渡り参加してみて、館主の心を捉えたものを紹介します)

第1日(首長会議)
  • 札幌市では電車の活用も実験中。例えばバッテリー搭載車、HiTram等。電車の通る道には魅力的な場所が多いので延伸も考えている。
  • 富山市では全交通が富山駅に集中している。これに目を付けた。
    LRTを新設し1時間間隔を15分に1本に改めた。それと終電を22時頃から23時に変えた。
    移動手段がライフスタイルを変えた。即ち高齢者の移動が昼間の時間帯に移った。
  • 豊橋市ではどうして短い路線が残れたのか?奇跡的に残ったと言えよう。今は市民に愛されているけど。
    この地の人は歩かない。駅から5分以内くらい。それに集客施設が郊外の移った。
    これは企画電車などを工夫するしかない。他社より譲渡分を含めるとローレル賞電車が3両もいる。
  • 京都市ではLRTの検討をしており、今出川通りで社会実験をした。沿線の住民はOKが多い。が、商店街は反対が多い。LRTは歩く街の魅力源。今年中に戦略を考えている。
  • 岡山市の乗客12万人/日は少ない。JR吉備線は現在気動車だが、JRはこのたびこの吉備線をLRT化すると発表した
  • 松山市ではJR松山駅作り替え計画に連動して、今の路面電車を900m延伸する計画を建てている。
  • 高知市の電車とは@日本一長い105年の歴史。A日本一長い25.3kmの路線。B日本一短い駅間63m、という三つの日本記録を持っている。はりまや橋のダイヤモンドクロスポイントは自慢。緑化軌道は日本で初めてだった。今後グリーンベルト化を進めたい。LRT導入も積極的に取り組みたい
  • 長崎は山に囲まれ平地は殆ど無い。その平地には全部路面電車が走っている。100円均一料金を遂に120円に値上げしたが、それでも日本一安い料金だ。今は電停への歩道橋撤去をやっており13ヶ所中7ヶ所終了した。
  • 熊本市は新幹線熊本駅開所に合わせて路面電車関係も大々的に改良を計っている。@電車優先信号の採用。A線路を歩道側に寄せるサイドリザベーション工事。 B芝生化も一括でやる。C路面電車のJR熊本駅へ乗り入れも計画中。平成28年完成から5年後くらいになるだろう。
  • 鹿児島市は暑い土地柄である。この対応として芝生軌道化に取り組んでいる。この成果のサーモグラフィーで計って42°Cが31°Cにまで10度も下がることが実証された。このデータが基になって全軌道を芝生化する動機になった。芝生化には騒音の低減や街の潤いの創設効果もある。
    鹿児島流の芝生化の技術的特徴は基盤にシラスセメントを敷いて、その上に芝生を貼るのである。すると吸水性と強度が十分得られる。
  • 広島市民にとって路面電車はDNAの一部になっている。車両数と年間輸送人員が日本一はよく知られている。残れたのは1971年に一般車両の軌道敷き内乗り入れ禁止を定めたのが大きい。それと市営ではなく広島電鉄株式会社という民間にアウトソーシングを計ったのは効率が良かった。
    これからは信用乗車を本気で検討する。
第2日(パネルディスカッション)
  • (広電社長)世界では30年間で100を超える都市でLRTが新設されている。
    しかし、欧米では事業収入で経費を賄う考え方ではなく、半分近く補助金を投入している。
  • (部谷さん)映画の撮影現場を決める時に、街の魅力は活気、人の営み文化度の高さ、景観から読みとれる街を撮影現場に選んでいる。LRT化が進めば魅力的な街も増えると思う。今回紹介された街を訪ねてみたい。
  • (山根生)国民には本来交通権というものが有るべきではないですか? 医療については、現代のわが国では金持ちでも貧乏人でも、万一の時には的確な医療を受けられるのが当たり前になっているでしょう。ところが交通については道路、鉄道、歩く道・・・都会、田舎等について税金の投入は力ずくである。人の移動の権利については医療のような平等保証の思想がない。つまりヨーロッパに比べわが国には交通権思想が遅れている。今後の課題です。
  • (豊橋市長)路電の日(6/10)、市電の日(4/10)等のイベントの開催にあたっては、市電を愛する会が中心となっている。また、生涯学習などにも参加して、市電を残し発展させていく取り組み(活動)をしている。路面電車を支えるには市民の応援が効果的だ。
  • (富山市長) 3年前に3日間路面電車を無料にした時に利用者が11.5倍となった。ポートランドはバスも電車も無料。街が非常に賑わっている。街の商店街がお金を出すから、例えば第3土曜日を無料にしてくださいといったことをやってもらいたい。そのリーディングとして市が800万円程度負担して行った。街づくりの仕掛け・装置としての機能を路面電車は持っている。
  • (広島市長)新規路線を拡充する。先程話のあった広島駅前にまっすぐに乗り入れることや広島駅から西広島駅の短絡線等どれもお金のかかることですぐにはならないが、きちんとした計画を立て、一つ一つ実現することが重要。
  • (鹿児島市長)LRTを含め市民の評価が高くなってきている。LRTの役割としても街づくりの核になると思っており、市民からもLRTを活用した街づくり、延新等の整備への要望もある。
  • (山根生/最後に発言ました) この2日間の討議で出なかった話は、「何故日本のLRT計画はプラン作成までで新線建設や延伸の実現が無いのだろう?」である。 この10年間わが国での実績はわずか富山市1都市のみ。欧米では10年前には新設が20都市もあったのでわが国は周回遅れだと思ったが、多数の市民活動の成果も空しく今は2周遅れではないか?」ということです。
    フランス方式をご紹介したい。12年前東京で行われた世界のLRT国際会議で聴いた、フランスのある市交通局長の説明を紹介したい。「当市ではLRT路線建設案が持ち上がると、
    @官民総てから路線案をドンどん提案させる 
    A案は片端から情報公開し、長所欠点をどんどん発言集めし、市民の討議材料とする。
    B出尽くした頃には長所欠点はあるものの自ずから案の順位が決まってくる。
    (実例表示ではバリエーションを含め15素案もあった) 
    C出尽くした頃を見計らって市長がドンと決めて実行する。
     ・・市民も何となく納得する慣例になっている。
    私はこのやり方をフランス方式と名付けたが、今後日本でも採り入れてほしい。
    次回2年後のLRT都市サミットを富山市が引き受けられたのは幸いです。どうか富山サミットでは何故日本ではLRT新線・延伸が実現しないのかも討議して頂くよう、どうぞ富山市長さんお願いします。


LRT都市サミット広島2009 サミット宣言

地球環境問題が深刻化し、高齢化が急速に進む中、地球環境にやさしい都市づくりや、あらゆる人にバリアのない社会の形成が必要となっており、交通分野においても、このような課題への対応が求められています。
この度、全国で路面電車が運行されている都市のうち、11都市の市長、副市長が集い、LRT化に向けた課題などを持ち寄り、LRT化を通じて、人と地球環境にやさしい都市づくりに向けた、公共交通振興のための都市間の連携強化を図ることの重要性について再認識したところです。
これからも、人や環境にやさしい路面電車のLRT化を中心とし、鉄道やバス、自転車との連携を図りながら、公共交通を軸とした都市構造への転換を目指し、次のことを宣言します。

1 活力と魅力のある都市づくりに向けて、路面電車のLRT化によるまちづくりを推進します。
  具体的には、
(1) 人にやさしい交通手段として路面電車を推奨し、LRT化によりバリアフリーを促進します。
(2) 路面電車が、都市景観と調和できるような配慮と、観光振興に活用できるような取組を進めます。
(3) 路面電車が街のシンボルとして認知され、次世代に引き継げるよう、市民と協働して、路面電車に愛着を持ってもらえる様々な取組を行います。

2 都市内交通分野での地球温暖化対策のために、環境にやさしい交通手段である路面電車のLRT化を進め、公共交通を中心とした社会の実現を目指します。

3 全国の路面軌道事業者の運営改善、技術力の向上に必要な支援を行います。

4 LRT化に向けた新しい取組情報は全国の都市で共有し、連携して情報発信します。

5 次回のLRT都市サミットの開催については、2年後に富山市で開催します。
平成21年10月30日
 LRT都市サミット広島2009 参加都市一同


次回のLRT都市サミット引受都市: 富山市 2011年



 路面電車サミットは第1回の1995年に始めて札幌市で開かれて以来、2008年に福井市で第9回が開かれました。このINDEXはこれまで各地で開催されたサミットの記録集です
 これに、高岡市で開かれたオープンサミットと広島市で開かれたLRT都市サミットの記録を加えました。