2009.2.1

館主前言:
実を申しますと、館主は1日目が出席不能になり、その日の講演3件の内容は、後日送られてきたDVDにて拝見することになりました。DVDにはサミットの3日間分の動画もありましたが、更に講演発表者の全資料がPDFにて38p+51p+63p+51pが収容されており、PDFを拝見したところが総て広範精緻なコンテンツで制作されて、講演内容の大凡は理解し得てホームページ読者にとってありがたいことでした。特別にお礼を申したいと存じます。 付言すれば「遂に路面電車サミットも記録をDVD化する時代になったのだ」という時勢の移り変わりも感得しました。

尚、第1回から第8回までのサミット報告も当ページ最下段にあるINDEXからリンクしていますので、参考にしてください。


日 時・場 所 時   間 内    容
1日目 1998年

10月17日(金)
 AOSSA(アオッサ)
 8F 
 JR福井駅東口正面
13:00〜17:00 1.公共交通とまちづくりセミナー
  ・「地域公共交通の活性化に関する法制度や支援策」
    国交省鉄道局 瓦林康人氏、潮崎俊也氏
  ・「都心におけるLRTの推進およびトラムトレインの導入」
    国交省都市・地域整備局 阪井清志氏、
  ・「福井のまちづくりと交通」
    名古屋産業大学教授 加藤哲男氏
2日目
10月18日(土)

 会場は3箇所にて

10:00〜11:00
1.福井大学 バッテリートラム実験公開
  開催場所:福井鉄道福武線西武生駅
13:00〜17:00 2.講演会 路面電車・LRT最新事情 会場:繊協ビル8階ホール
  ・「地方鉄道の役割」 今枝孝司氏
  ・「福武線についての意識調査アンケート報告」
  ・「地域共生型サービス企業をめざして/えちぜん鉄道」
  ・「世界のLRT−映像による紹介」 服部重敬氏
  ・「日本の路面電車の最新事情」 広島電鉄 藤元秀樹氏ほか
  ・「LRT推進都市からの報告」 堺市 田村啓一郎氏
17:30〜18:30 3.路面電車ミニツアー (参加者制限あり)
19:00〜21:00 4.歓迎レセプション 福井商工会議所内9Fレストラン
               (参加者制限あり)
3日目 10月19日(日)

  AOSSA内
   会議室
   ホール
9:10〜10:00 全国路面電車愛好支援団体協議会代表者会議 AOSSA605
9:30〜12:30 公共交通を考えるシンポジウム AOSSA 706・707
  ・えちぜん鉄道(株)社長講演
    (えちぜん鉄道の5年間を振り返って)
  ・ディスカッション
10:00〜12:00 全国路面電車サミット会議 AOSSA 8F
  全国の愛好支援団体の意見交換、情報交換
13:00〜13:40 世界に響け! 福井産楽器の共演 AOSSA 8F
13:50〜16:00 1.LRTフォーラム AOSSA 8F
   ・福井市の交通政策  福井市都市戦略部 脇本幹雄氏
   ・富山市の交通政策  富山市都市戦略部 高森長仁氏
   ・福井市長東村新一氏と富山市長森雅志氏の会談 
     「まちづくりにおける都市政策を考える」
        聞き手 福井大学教授 川上洋司氏
2.サミット宣言

関連イベント

     ○17日〜19日
       全国路面電車愛好支援団体ブース 会場:AOSSA1階 アトリウム

     ○18日〜19日
       世界のLRTパネル展 会場:AOSSA1階 アトリウム
       えちぜん鉄道・福井鉄道乗車イベント (1日フリー記念切符を発売。フリーツアーがお薦め)
       カーフリーデー福井
       ハチドリ計画

     ○19日
        カーフリーデー環境ツアー
        『このまちと〜まれ2008』 (福井駅周辺)
主催者: 全国路面電車サミット2008福井大会実行委員会
大会コンテンツDVD: この度は3日間の大会で発表されたコンテンツ(講師使用データと動画)を収容した
                DVDが発売されました。
                購入はROBAの会へ問い合わせしてください。 ¥2000円


数多くの演目がありお勉強になりましたが、中でも東村福井市長森富山市長お二人のLRT対談は生々しくて、たいへん興味深いものでした。 出席者は日によって差はありますが、2日目は300名くらいとのことです。 9回に及ぶサミットが開催されたなかでは最大級ではないでしょうか。

福井鉄道といえば福井大学荻原先生によるリチウムイオン電池とインバーター技術を組み合わせたハイブリッドメカによるLRTの走行実験公開でした。西武生駅構内で大勢の参加者に混じって実物を見れたし、100mほどですが荻原先生自身の説明を受けながら乗車走行の体験ができ、念願を達しました。

演目には「LRV導入に向けて」の標題で豊橋鉄道田中鉄道部長による待望のLRV選定の経緯が紹介された。ネーミングはほっとラムだそうです。 福井市は楽器製造の町だそうです。中でもハープの製造は当市しかなく、休憩時に本大会に寄せて作詞作曲されたふるさと電車に乗ってが演奏紹介されました。

JR福井駅前から路線は市役所前へ、更に南下し武生新駅に至る福武線(ふくぶせん)が主要路線である。繁華街は福井駅周辺から市役所前への通りあたりで、使用電車も2005年2006年に名鉄より受け入れた部分低床車20両が主体となって運行されている。明るい塗装の軽快な車体である。

福井駅を中心に会場は3箇所に移動しながら行われた
JR福井駅東側は目下新幹線受入を前提とした再開発最中である

サミットに参加してみての発見や発言をメモの中から: 
(2日目、3日目を2日間に渡り参加してみて、館主の心を捉えたものを紹介します)
  • この路面電車専用のリチウムイオン電池は出力15KWh、重量150kgである。運用時は30kwh程度になり、システム全体で500kg以下を予想している。電池のコストは2両でも500万円が目標だそうで案外安い。
  • バッテリーの大きさはこれで最小でしょう。
  • 最高速度は50kmは大丈夫。テストでは70kmまで出している。
  • 館主の疑問:今やクルマもリチウム電池式が世界的に開発されている情勢だ。この勢いでリチウムの需要が伸びたとき、資源の確保と入手コストの見通しはどうなのだろう? どなたかご意見を願います。
    荻原隆先生からのご意見:リチウムの資源は特に問題ないと思います。リチウムイオン電池はリサイクル率が80%以上ですし、海水からも採取できますので。しかし、今よりは高価にはなると思いますが。問題はマンガン、コバルト、ニッケルの遷移金属の資源の方が問題でしょう。こちらは元々資源が少ないですし、採取地域も限定されていますから。今世紀ぐらいは供給に問題ないでしょう。(以下略)
  • 福部線は一時廃線の声も上がったが、工夫して平成16年に乗車数が下げ止まった。
  • JR北陸線に比べ運行本数が2倍は優れているが、実は所要時間が2倍で運賃が1.3倍の点は負けている。
  • 将来の福部線には電車優先信号と車の軌道乗入れ防止を期待している
  • 館主は福部線終点田原町に行ってみた。福部線とえちぜん鉄道の線路が並行して敷かれているのを見て「何故接続をしないのだろう?」と深く疑問をもった。
  • フランスはいつも世界最先端技術を勇敢に実行している。
    2000年には ゴムタイヤトラム (ナンシー)
    2003年には 地上集電システム (ボルドー)
    2007年には バッテリー駆動 (ニース)
  • 日本の路面電車の乗客数は全体的には下げ止まりになっている
  • 日本では車両のLRV化、低床化が進んでいる
  • 日本の今までの低床車は全部標準軌である。豊橋ではこのたび初の狭軌LRVを導入することになった。アルナ製。今年中に入庫を予定。床の通路巾は82cmを確保。
  • 新車は市長がほっとラムと命名したばかり。穂の風。ほっとできる。
  • 今までは公共交通は会社が作るのが当たり前だったが、今は自治体が作る時代だ。補助金政策が大事だし効果的な補助制度も生まれてきた。
  • 福井市では駅から4方向に都心部だけのコミュニティーバスを作った。「だめだったら止める」と最初に決めておいた。乗客は5年間で徐々に増えてきた。利用者の49%は他のクルマと自転車からの移転である。
  • 企画は「欲しいと思う人が集まって作る」こと。 路線網作りは市・公がやる。
  • 福井市は「都市政策部」を「都市戦略部」とネーミングを変更した。意欲の現れです。
  • 公共交通企画はビジネスモデルとして考えるが、利用されるものでなければ存在意義は無い
  • 福井市は新LRTプランを5年くらいで実現したい
  • 富山ライトレールはLRT化して運行頻度を3.5倍にした。これは効果があった
  • 〃 関連デザインを統一思想にして実行したら、7つも受賞をした
  • 〃 結果は市民の8割がLRT化を評価している
  • 富山市では高齢者の免許証返納運動をしたら50人/年から800人/年に増えた。やったことは、返納者にはJRにも電車、バスにも乗れる2万円1年間有効のキップを与えたこと。
  • 今富山駅はJR富山駅の高架化をしている最中で、これに合わせて都心路面電車の環状化を進める
  • 富山市では市民に市長自身が3年間に100回以上タウンミーティングをしてきた。その故か、LRT工事中に大雪があったがクレーム電話は1本もかかってこなかった。
  • 都心に環状線案を提案したときは「やるやらない提案」ではなく、「新規線路A案」と「新規路線B案」という2案提示という方式にしたら、論議はABを巡って論議になって路線建設是非の議論は起きなかった。提案方式も工夫すべし。
  • Q:「富山駅の立体交差案があっという間にできたのは?」
    A:「先に長期を見つめて成案を作り、説得に努力し、後は自信があったら必ず反対があってもどんと実行していくことです」
館主が感服したのは富山市長森雅志氏です。話が明解で説得力があり、これなら市民もなるほどだったのでしょう。LRT導入成功後には各市からの富山市参りがはやったのも頷けます。日本各都市のLRT化計画の隠れた功労者になるのではないでしょうか。


路面電車サミット宣言

私たち全国の路面電車愛好支援団体と軌道事業者ならびに人と環境にやさしいまちづくりについて深い関心を持つ市民は、全国トップクラスの自家用車保有率でありながら、地域一体となって地方鉄道を再生させた福井市につどい、路面電車を活用したまちづくりの新しい制度や手法、それぞれの地域における取組みについての情報交換をとおして、それぞれの地域において路面電車が担う新たな役割を明確にし、LRT(ライトレールトランジット)へ進化させることが重要であるとの認識を深めた。
 私たちは、LRTへの進化によってまちづくりと連携した機能性の向上、および路面電車と鉄道・バス・自転車との連携強化による利便性の向上をはかることにより、自動車に頼らなくても暮らしやすいまちの実現を目指し、ここに次のことを宣言する。
一、 路面電車が地域公共交通ネットワークの基幹としての役割をはたせるよう、事業者は路面電車の機能と利便性の向上になお一層の自助努力をおこない、愛好支援団体は事業者や地域と連携してこの取組みを支援します。
一、 路面電車が持つ良質な都市の社会基盤としての資質が活用されるよう、
それぞれの地域においてまちづくりと一体となった交通体系づくりを自治体に働きかけ、市民にもアピールをおこない、計画づくりに積極的に参画します。
一、 路面電車が人にも環境にもやさしい地域のシンボルとして認知されるよう、路面電車により親しんでもらえるさまざまな取組みを行います。
一、 路面電車を活用したまちづくりの取組み成果が全国各地で共有されるよう、活発な地域間交流をおこなうとともに、次の第10回全国路面電車サミットを富山市で開催します。
平成20年10月19日
全国路面電車愛好支援団体協議会
全国路面軌道連絡協議会
全国路面電車サミット2008福井大会実行委員会


次回の路面電車サミット引受都市: 富山市  開催時期は未定

参考サイト:ROBA(ふくい路面電車とまちづくりの会) ホームページ


路面電車サミットは第1回の1995年に始めて札幌市で開かれて以来、2008年に福井市で第9回が開かれました。このINDEXはこれまで各地で開催されたサミットの記録集です